日本製薬工業協会常務理事 川原 章
昨年末に誕生した安倍政権は、今年7月の参議院議員選挙で安定多数の議席数を確保し、また9月には2020年オリンピック・パラリンピックの東京招致にも成功した。また、いわゆるアベノミクスといわれる力強い経済・財政政策が進められており、ここ数年見られなかった安定した政権基盤が築かれつつある。
一方、わが国社会では、少子高齢化や人口減少が引き続き世界的に前例のないスピードで進展しており、それらへの対応も求められている。また、経済はデフレから脱し上向いてきているものの、国の財政は厳しい状況が続いており、財政健全化は依然重要課題であり、その再建への道筋をつけると共に、社会保障制度を持続可能なものとするため「社会保障と税の一体改革」も進められ、消費税についても来年4月から8%に引き上げられることも決定した。
このように、今年は多くの重要な政策課題への取り組みが際立った年であった。
なお、研究開発型製薬企業については、安倍政権は第1次内閣時代にも製薬産業を重視していたこともあり、今年6月にまとめられた「日本再興戦略」や「健康・医療戦略」においても、イノベーションの促進による医療の質の向上、健康寿命の延伸への貢献と共に、成長産業として経済発展への寄与が改めて期待されている。
このような状況の中、健康医療分野におけるイノベーション推進のため、政府主導にて、[1]創薬支援ネットワークの構築[2]いわゆる日本版「NIH」の創設[3]ARO機能を有する医療機関の整備――といった施策も着実に進められている。
来年1月には「医療分野の研究開発に関する総合戦略」が策定され、しかる後はこの総合戦略に基づく一元的な研究管理・環境整備を行う独立行政法人「日本医療研究開発推進機構(仮称)」が新設され、より強力な推進施策が進められていく情勢にある。これら施策の推進に当たっては、「健康・医療戦略参与」として、業界代表からも積極的な提言を行ってきた。
もちろん、これらの期待に応えるためには、今まで以上に科学技術の発展への貢献、健康で安心な社会への貢献という目標に向かって邁進し、例えばiPS細胞技術など先端的技術の活用によって、革新的なわが国発の医薬品の創出に確実につなげていく必要がある。まさに、研究開発型製薬企業のわが国社会における真価が問われる時代が到来したものと受け止めている。
このような情勢もあり、期待と共に製薬企業の活動に対する社会の関心も高まってきており、製薬産業の健全かつ継続的な発展が国民医療のみならず、世界の国における健康水準の向上につながることについて社会的理解を得ることが重要となってきている。