調製補助にテクニシャン活用
南房総エリアをカバーする基幹病院として地域医療を支える亀田総合病院は、薬剤テクニシャンの活用や調製ロボットの導入によって薬剤師が病棟薬剤業務、処方鑑査、薬学的管理指導などに集中できる体制を整えている。特に病棟には薬剤師86人のうち15人が常駐し、ローテーションを含めると21病棟の全てに薬剤師が進出。病棟ではリアルタイム薬剤管理システムを採用して薬剤在庫の大幅削減にも成功した。また、教育面ではレジデントを継続的に受け入れ、臨床業務に強い薬剤師を育成しているのも特徴だ。
亀田総合病院は太平洋を望む千葉・鴨川に位置する総数1000床を誇る一大医療施設群「亀田メディカルセンター」の中核施設。
佐々木忠徳薬剤管理部長は「医師は診療科横断的に薬剤を把握することが難しい。薬物治療のアウトカムを高めるには薬剤師の臨床への介入は絶対に欠かせない要素。他のスタッフや機械にできることは任せて薬剤師は医療の質と安全をしっかり担保しなければならない」と指摘する。
薬剤師の病棟業務は、過剰な投薬を適正化して患者の身体的負担を軽減すると共に、薬剤費を可能な限り低減することを目的に早くから推進している。現在では事例を集積してアウトカムとしてコスト削減効果を数字で示すことができるようになってきた。
病棟に配置する薬剤師の人選は必ずしも過去の経験を問わない。患者や他の医療職とのコミュニケーションスキルを重視し、積極性を優先して配置している。
病棟に薬剤師専用室
病棟には医師、看護師、管理栄養士などの多職種が集まる「ケアチームステーション」の一角に薬剤師室があり、いつでもチームの一員として薬物治療について他のスタッフと協働したり、患者の状態を把握するためにベッドサイドへ出向くことができるようになっている。
リアルタイム薬品管理装置を全病棟に装備し、薬剤部から遠隔で薬剤在庫をモニタリングしているのも特徴といえる。
従来だと薬剤部から毎日、場合によっては1日に数回、各病棟に出向いて在庫を点検し、必要な薬剤を取りに戻ってから改めて病棟へ補充に向かわなければならなかったが、院内LANを通じて薬剤部にいながら確認できるようになり、棚卸の必要もなくなった。
このシステムは、保管庫の扉を開ける際に指紋認証が必要で、誰がいつ、どの薬剤を、いくつ取り出したり、戻したりしたのかを自動でカウントしてくれる。ラベルプリンターとも連動している。操作はタッチパネルで行い、製品名を画面上の文字、配置場所のLEDランプ、音声の3つで確認できるため、取り違いを防止できる。在庫にない薬剤を医師がオーダーすると、薬剤部で調製していることもメッセージが出る。
薬剤の種類や数をあらかじめ決めておくことによって不要な在庫に歯止めをかけ、それまで約30万~40万あった病棟在庫を2万弱まで減らし、金額も3分の1程度に圧縮した。
薬剤師の活発な臨床業務を実践できる要素の1つにテクニシャンの存在がある。
調製業務を補助する薬剤テクニシャンを内部認定する独自制度を設け、2年ごとに更改している。現在は64人が従事している。事務スタッフが異動で従事することもあったが、テクニシャンとして最初から採用するようになった。
処方通り計量や分包ができるように手順をマニュアル化することで、薬剤師の鑑査にも堪えられる。処方指示をバーコードでコンピュータが読み取り、画面に表示される通りの作業を行い、タッチパネルを操作して次の工程に進む。計量値は数字のほかにゲージで表示することによって感覚的に判別できるように工夫した。
抗癌剤調製ロボが活躍
放射性薬剤の調製は免許を持つ薬剤師が担当するが、抗癌剤のミキシングもテクニシャンの活動領域だ。
これを可能にするのが抗癌剤専用全自動調製ロボットだ。全体的な管理は薬剤師がコントロールするが、装置のオペレーションはテクニシャンが代替できる。アームの動きとボトルやシリンジの重量を調製前後で計測する。理論値の処方量、ボトルに残っている量などを記録し、PC端末から出力できる。閉鎖的環境で調製することで曝露リスクを最小化できるメリットも大きい。さらに最大規格の製品を使えるため薬剤コスト削減にもつながる。
薬剤師レジデント制度は、マネジメントスキルの修得を目的に薬学6年制開始と同時に導入した。1学年1人の計2人が職員として有給で働いている。採用は通常とは別の「レジデント枠」で公募している。