〈7月25日〉【滋賀医大】病院敷地内に薬局を誘致‐日本調剤、フロンティアが入居
滋賀医科大学は、附属病院の敷地内に2軒の薬局を誘致することになった。公道に面した患者用駐車場の土地の一角を事業者に有償で貸し出し、そこに事業者が自己資金で3階建ての施設を建設。1階に2軒の薬局とコンビニが入居する計画で、日本調剤、フロンティアの2薬局の入居を計画に盛り込んだ事業者を優先交渉権者に決めた。敷地内薬局は、来年秋ごろから営業を開始する見通しである。
同院の近隣には、滋賀県薬剤師会の会営薬局しかなく、院外処方箋は面に分散していたが、規制改革会議の議論から保険薬局の構造規制が見直されたことから、敷地内薬局を誘致することになった。これにより、患者が敷地内薬局に集中するのは必至の状況と見られ、せっかく面分業が定着していた地域にもたらされた規制改革の波は、一気に医薬分業を危機に押しやろうとしている。
規制改革会議での議論を経て保険薬局の構造規制が見直され、病院と薬局が同一敷地内にある形態も原則認められるようになった一方で、2016年度の調剤報酬改定では、「立地から人へ」がコンセプトに打ち出された。しかし、この滋賀医大の動きは、患者の立地への回帰をもたらす危険性をはらんでいる。あくまで大学側は、「敷地内に薬局ができ、選択肢が増えることは患者のメリットになる。ワンストップで薬をもらえ、利便性は高まる」と利便性を前面に主張する。
同院の門前には、県の保安林が広がり、薬局の建設が可能な土地はない。正面出入口から数百m離れた近隣に滋賀県薬の会営薬局が1軒存在するだけだ。会営薬局への院外処方箋の集中率は20%台にとどまり、面分業が定着している。そのため、再診患者への影響は小さいと見られるが、新規外来患者が敷地内薬局に集中するのは必至で、県薬剤師会にとっても医薬分業の危機をどう乗り切るか、その対応に全国の注目が集まる。
〈7月29日〉高額薬の使用指針案を議論‐「オプジーボ」薬価下げも検討
中医協で議論始まる
厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会は7月の総会で、高額薬剤への対応として注目されていた新規作用機序医薬品の最適使用を進めるガイドラインをめぐり議論した。今後、指針を医療保険制度上どう取り扱っていくか専門部会で検討していく方向になった。さらに、昨年12月に非小細胞肺癌の効能が追加され、2016年度薬価改定で再算定の検討が間に合わなかった抗癌剤「オプジーボ」について、次回18年度改定を待たず、期中改定を含めた特例的な対応も検討するなど、薬価制度の抜本的な見直しに着手することになった。
医療費高騰の象徴として議論の的になっていた「オプジーボ」などの高額薬剤をめぐり、いよいよ最適使用をはじめ薬価のあり方を含めた抜本的な議論がスタートした。厚労省は、年内をメドに一定の結論を得たい考えだが、医療費の配分に関わる議論だけに、様々なステークホルダー間での曲折も予想される。
そもそも高額薬剤の議論は、C型肝炎治療薬、抗癌剤など新規作用機序を持つ鋭い新薬が相次ぎ登場し、劇的な効果を発揮する反面、高薬価が国民皆保険の堅持に大きな影響を与えるとの懸念から始まっている。そこで厚労省は、当面の対応として、「オプジーボ」の薬価引き下げを含めた特例的な対応と、新規作用機序を持つ医薬品の最適使用を進めるガイドラインをまとめ、それを医療保険制度でどう取り扱うか検討していく方針を打ち出した。
最適使用推進指針は、新規作用機序を持つ医薬品ごとに、承認に合わせ策定していくもので、今年度は既に承認済みの「オプジーボ」と高脂血症治療用の抗PCSK9抗体「レパーサ」を対象に指針をまとめるとしており、今後の議論の行方が注目される。
〈8月10日〉公務員薬剤師の初任給20万6800円‐3年連続で引き上げ勧告
民間企業は22万5000円
2016年度の国家公務員給与である月例給(基本給)を0.17%、ボーナス(期末・勤勉手当)も0.1カ月分引き上げるよう人事院が8月、国会と政府に勧告した。病院等に勤務する薬剤師は医療職俸給表(二)が適用され、6年制薬剤師の初任給(2級15号俸)は20万6800円となり、昨年に比べて1500円アップしたが、引き上げ額は一昨年の2600円に比べて減少した。引き上げ勧告は3年連続。
ただ、今年の民間給与調査では、昨年度中に薬剤師免許を取得し、今年4月までに採用された準新卒薬剤師の初任給が企業規模100人以上500人未満では22万7026円、500人以上では22万5364円で、依然として民間の初任給と2万円程度の差が見られた。引き上げ幅については、500人以上の2772円に比べて半分程度下回ったものの、100人以上500人未満の784円よりは上回った。
従業員50人以上の事業所を対象に今年4月現在の民間給与実態を調査した結果を見ると、準新卒の薬剤師初任給は、時間外手当や家族手当、通勤手当等を除き平均22万5244円で、昨年より1660円アップしたが、引き上げ幅は一昨年の4984円より縮小した。企業規模が500人以上では22万5364円、100人以上500人未満では22万7026円と1662円の差があり、500人以上の企業より100人以上500人未満の企業で初任給が高い状況は変わっていない。
時間外手当を差し引いた4月支給分の平均給与額を見ると、薬剤師が平均年齢36.3歳で32万8177円、薬剤師2人以上の部下がいる薬局長は平均年齢49.8歳で47万4353円となった。昨年に比べて、一般の薬剤師の平均給与は前年並みの約1200円アップとなったが、薬局長は、昨年の約9900円の大幅アップから約2400円のダウンに転じた。薬局長の給与ダウンは2年ぶりのこと。