社会保障全体での議論必要に
6月に就任した日本製薬団体連合会の多田正世会長(大日本住友製薬社長)は、高額薬剤の薬価をめぐって10月にも厚生労働省が緊急対応案を出す方針に対し、「イノベーションを評価せずに、ただ価格が高いからといって薬価を下げるのは、産業活性化の面から見ても明らかな問題」と強く批判した。薬価の抜本的改革は、「10年後を睨んだ議論が必要であり、早急に結論を出すべきではない」と牽制。今後の議論に向けては、薬価だけではなく、介護や年金を含めバランスが取れた社会保障制度を検討する必要性を挙げ、「製薬業界からも意見が出せるような国民的議論をする場をいただきたい」と、産業政策と薬価を一体化して検討すべきとした。
多田氏は、「医薬品の世界は、治療満足度が低い疾患領域で新薬が生み出された後に、それがジェネリック医薬品(GE薬)、OTC薬として用いられ、最後は基礎的医薬品となる。日本では、その起点となる新薬を生み出す環境が揺らいできているのではないかと感じている」と指摘した。