【これから『薬』の話をしよう】スウェーデンの薬剤師業務モデル

2025年1月20日 (月)

薬学生新聞

医療法人徳仁会中野病院薬局
青島 周一

青島周一氏

 薬学教育や薬剤師業務に関する学術専門誌の「Pharmacy」に、スウェーデンにおける薬剤師の業務モデル「Lund Integrated Medicines Management(LIMM)」を紹介した総説論文が、2024年12月5日付で掲載されました(DOI:10.3390/pharmacy12060184)。この論文は、スウェーデンのルンド大学に留学されていた佐藤利栄先生が執筆されたもので、私も共著者としてお手伝いをさせていただきました。

 スウェーデンのルンド大学病院では、入院前、入院中、退院後の追跡調査データに基づき、薬に関連した問題や、薬物療法の障壁などに関する体系的な分析を行ってきました。各医療プロセスにおける薬物療法の問題点を特定し、その解決や予防を目的とした業務モデルを構築するためです。LIMMと名付けられたこの業務モデルの特徴は、ケアの継続性(continuity of care)の実現を、薬剤師が主導で行うことにあります。

 ケアの継続性とは、多様な医療環境において、様々な医療者が断片的に治療を行っていたとしても、全体として途切れのないケアを提供できる状態を指す概念です。ケアの継続性が実現されていることは、入院リスクや死亡リスクの低下と関連することが知られています(PMID:34607797)。ヘルスケアの中心を担う薬物療法もまた、その継続性を実現することで、患者の臨床予後を改善する可能性があります。

 LIMMでは、入院中の薬剤管理に加え、退院時においては服薬が困難な薬剤処方を避け、プライマリ・ケアでも処方が現実的な薬剤に調整するなどの業務を薬剤師が主導で実施します。入院時と退院後における薬物療法のギャップを排除し、どのような治療環境においても、質の高いケアの策定と遂行を円滑に行うことこそが、LIMMにおける薬剤師の重要な責務なのです。

 LIMMの実践で、薬剤処方における過誤の削減や、不適切な薬剤処方の削減が実現することが報告されています。日本においても、LIMMのような業務モデルを導入することで、薬剤師を中心とした多職種連携が促され、薬物療法の継続性が実現すると共に、質の高い薬学管理が可能になることでしょう。冒頭に紹介した私たちの論文は、フリーアクセスとなっておりますので、ぜひ全文を閲覧してみてください。



HOME > 薬学生新聞 > 【これから『薬』の話をしよう】スウェーデンの薬剤師業務モデル

‐AD‐
薬学生新聞 新着記事
検索
カテゴリー別 全記事一覧
年月別 全記事一覧
新着記事
お知らせ
アカウント・RSS
RSSRSS