ニュースダイジェスト 「薬事日報」の紙面から

2025年4月15日 (火)

薬学生新聞

災害時の薬供給体制強化‐調整役担う薬剤師養成へ

 各都道府県は2025年度から、薬剤師を対象とした災害薬事コーディネーターの養成など災害時における医薬品供給体制の強化に乗り出す。埼玉県や岐阜県などは25年度予算で「災害薬事コーディネーター養成事業」を新設し、被災地に医薬品の供給や薬剤師の手配などを行える薬剤師の育成を図る。災害時における医療救護活動や医薬品提供が円滑に行えるよう石川県、東京都、大阪府、福島県は、災害対策医薬品供給車両であるモバイルファーマシーの導入を支援する計画だ。

 災害薬事コーディネーターは、災害時に都道府県が設置する保健医療福祉調整本部などで被災地の医薬品等や薬剤師、薬事・衛生面に関する情報の把握やマッチング等を行うことを目的に都道府県で任命された薬剤師が担うとされている。

 厚生労働省の調べによると、昨年3月時点で19府県で776人が任命されている。3月10日には、厚労省から災害薬事コーディネーターの運用、活動内容等の基本的な事項について定めた「災害薬事コーディネーター活動要領」が示された。

 各府県は25年度から、災害時に活動できる薬剤師の養成を図る。埼玉県は約261万円を充て、県災害時医療救護基本計画に規定された災害時の医療救護活動に必要な医薬品等の供給体制を強化するため、埼玉県災害対策本部や医薬品等の集積場所などで活動できる「薬剤師災害リーダー」「地域薬剤師災害リーダー」を養成する。

 薬剤師災害リーダーは、県災害対策本部(保健医療調整本部)に配置し、被災地からの医薬品供給要請に基づき、医薬品等の供給調整や薬剤師チームの派遣調整等にかかる助言・支援を行う。

 地域薬剤師災害リーダーは、薬剤師災害リーダーからの指示を受け、保健所と情報共有しながら防災基地などで医薬品の仕分けや保管管理を行い、医療救護所などの被災地に医薬品を供給する。

 そのほか、災害薬事コーディネーター養成研修としては大阪府が約533万円、岐阜県が約123万円、岡山県も約100万円を計上している。富山県も薬局や病院等の薬剤師を対象に災害時の薬事対応研修会を開催する。

 一方、災害対応を強化するため、モバイルファーマシーを導入する都府県もある。現在、モバイルファーマシーは県薬剤師会や薬系大学など、全国でおよそ20台が導入されている。昨年1月の能登半島地震で全国のモバイルファーマシーが出動し、被災地支援に貢献した。

 東京都は、災害時医療物資供給体制の強化として2000万円を計上。災害時の医療物資供給や薬局機能維持に関する体制強化に加え、医療機関や薬局が少ないへき地等で迅速な医薬品供給を行うためモバイルファーマシーを導入する。

 石川県は、歯科診療車やモバイルファーマシー導入支援として6400万円の予算を計上。福島県も災害対策医薬品供給車両整備事業に1200万円を計上。災害時の医療救護活動に関する協定を締結している福島県薬剤師会に対し、災害対策医薬品供給車両を整備するための費用の一部を支援する。

 一方、大阪府は「無菌調剤設備付きコンテナファーマシー整備補助」に1320万円を計画。災害時に使用可能な無菌調剤設備を備えたコンテナを導入し、平時は無菌調製技術研修に活用して高度な調剤技術を習得した薬剤師を養成するとしている。

(2025年3月24日掲載)

薬局への治験薬交付検討‐GCP省令改正で方向性

 厚生労働省は、2025年度中に予定しているGCP省令改正において、医療機関の来院に依存しない分散型治験(DCT)の導入を踏まえ、治験依頼者から適切な契約を結んだ「パートナー薬局(仮称)」への治験薬交付を認める方向で検討を進めている。現行のGCP省令では実施医療機関への治験薬交付しか認められていないが、省令改正により薬局で被験者への治験薬交付や健康状態管理を行えるようにする。また、安定供給が困難で国内での治験実施が困難な場合など、やむを得ない場合には実施医療機関との協議の上、パートナー薬局の在庫として保管する医薬品の使用を認め、治験に薬局薬剤師が関与できる仕組みに改める。

 GCP省令改正では、▽シングルIRB(治験審査委員会)の原則化▽実施医療機関の長の見直し▽DCTの導入・運用の整理▽治験副作用報告制度の運用改善▽治験実施施設支援機関(SMO)への監督権限強化▽ICH-E6(R3)に伴う必要な改正――などが盛り込まれる見通し。

 患者が治験に参加しやすくなるよう医療機関の来院に依存しないDCTが国内にも導入されるようになっており、実施医療機関と提携した被験者宅の近隣にあるパートナー医療機関の活用が進んでいる。ただ、治験薬交付についてはGCP省令で「治験薬を治験依頼者の責任のもと実施医療機関に交付しなければならない」と規定されていた。

 今回の改正では、製薬業界から要望が強かった治験依頼者から被験者への治験薬直接交付は、国際的にも行われていないことから不可とする一方、実施医療機関以外の施設は適切な契約を結んだパートナー医療機関・薬局への治験薬交付を認める方向で検討する。契約を結ぶ主体は治験依頼者、実施医療機関のどちらかになるかなど、適切な契約のあり方については今後検討を進める。

 具体的に、パートナー薬局は治験薬管理者として実施医療機関からの指示・伝達を受け、来局した被験者に対し治験薬の交付と健康状態管理を行う。その実施については実施医療機関に報告を行うとしている。

 また、実施医療機関の在庫として保管する医薬品の使用は拡大治験以外では認められていないが、安定供給が困難で国内における治験実施が困難な場合など、やむを得ない場合には実施医療機関との協議の上で実施医療機関、パートナー医療機関・薬局の在庫として保管する医薬品の使用を認める案も検討する。

 改正内容は、3月24日の医薬品医療機器総合機構(PMDA)治験エコシステム導入推進事業成果報告会で公表された。

(2025年3月26日掲載)

【加計学園】千葉科学大の公立化見送り‐薬学部存続、事業譲渡へ

 千葉科学大学(銚子市)を運営する加計学園は3月14日、2026年4月から同大の設置者を沖縄県内で高校と幼稚園を運営する大城学園に変更すると発表し、6年制薬学部薬学科の存続を決めた。学部・学科構成や入学定員等に変更はないとした一方、協議の経緯などについて公表は避けた。公立化に向けた有識者検討委員会の答申で、私立大としての継続を求めていた市は17日、「答申と市の要望に適うもので、設置者の円滑な移行と今後の大学運営に協力していく」と歓迎する越川信一市長のコメントを公表した。

 今回の発表は両学園の協議がまとまった結果としている。同大の設置者変更について、加計学園は大城学園に変更するための認可申請書を所轄庁に提出する方針としている。申請に当たって、▽大学名称▽大学の目的・教育方針・教育目標▽学部・学科構成▽入学定員・収容定員▽教職員の雇用・雇用条件▽学納金や奨学生への対応等――は変更しない計画とし、認可された場合、在学生や教職員は従来通りの教育・研究を継続できる見通しと説明している。

 譲渡先の大城学園は、沖縄県内で高校と幼稚園の計2施設を運営している学校法人だが、変更申請が認可された場合、大学の運営は初となる。

 今回の事業譲渡に当たり、両学園は「千葉科学大を応援して下さっている皆さんと共に、地域貢献に尽くしていけるものと確信している」としつつ「所轄庁から認可が得られるまでは手続きに専念しなければならず、質問への対応は控える」と述べるにとどめた。

 同大の経営状況の悪化を受け、公立化に向けた協議を行ってきた銚子市は17日、市長のコメントを公表し、「私立大のまま大学が継続されることは検討委員会答申と市の要望に適うもので、両学園の努力に感謝し、設置者の円滑な移行と今後の大学運営に協力していく。少子化による厳しい経営環境は続くが、官学連携によるまちづくりを進めていく」と設置者変更を歓迎した。

 同大をめぐっては、有識者で構成される公立大学法人化検討委員会が昨年8月に答申を公表。その中では市の財政負担増を懸念し、加計学園の経営努力により私立大として運営を継続することが第一とし、困難な場合は他の学校法人に事業譲渡することが第二の選択肢、私立大としての存続が難しい場合は薬学部の廃止など、一定条件を満たせば公立化が可能としていた。

(2025年3月19日掲載)

【JACDS】Dgs売上高が10兆円突破‐24年度、目標1年前倒しで達成

 日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は3月26日の定例会見で、2024年度のドラッグストア実態調査結果速報を公表した。ドラッグストアの全体売上高(推定値)は10兆0307億円と10兆円の大台を突破した。全体店舗数は2万3723店舗と前年より682店舗増加した。

 JACDSが掲げてきた「25年10兆円産業化」の目標が約1年前倒しで達成できた格好となった。塚本厚志会長は「10兆円は通過点であるし、ここに至るまで業界が順調に発展をしてきたのは、ひとえに生活者の支持があってのこと」と述べた。

 各カテゴリー別の売上高としては、「調剤・ヘルスケア」(医療用医薬品およびOTC医薬品、ヘルスケア用品など)は3兆3318億円となった。そのほかのカテゴリーでは、「ビューティケア」(化粧品、トイレタリーなど)が1兆8272億円、「ホームケア」(家庭用品、ペット用品など)が2兆0388億円、「フーズ・その他」(一般食品および衣料品、文具、各種有料サービスなど)が2兆8329億円という状況。「フーズ・その他」の伸び率が最も高かった。

 24年度のドラッグストアにおける調剤額は、前年度から8.4%伸び、1兆5205億円になったと推計された。これはドラッグストア売上高の15.2%に相当する。

 調剤額は、ドラッグストア併設薬局のみの数値で、会員企業でも単独薬局は計上しておらず、非協会分を含む業界全体の併設薬局の推計値となっている。

 また、調剤医療費総額に占めるドラッグストアの調剤額シェアは、暫定値で18.4%となった。24年度の調剤医療費総額は未公表のため、23年度と同額と仮置きして計算した。

(2025年3月31日掲載記事を改編)



HOME > 薬学生新聞 > ニュースダイジェスト 「薬事日報」の紙面から

‐AD‐
薬学生新聞 新着記事
検索
カテゴリー別 全記事一覧
年月別 全記事一覧
新着記事
お知らせ
アカウント・RSS
RSSRSS