【ドラッグストア編】ネット販売解禁で揺れる業界‐早期に“販売自主基準”も作成

2014年1月1日 (水)

薬学生新聞

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 一般用医薬品のインターネット販売に関する一連の検討については、社会や国民の関心も高く、注目を集めた。その検討が進む中、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)でも協会内で議論を重ね、対応を決定してきた。

 昨年6月14日に政府は、規制改革などを求める新たな成長戦略「日本再興戦略」を閣議決定した。一般薬のネット販売については、「消費者の安全性を確保しつつ、適切なルールのもとで行うこと」とした上で、正式に認めることを決めた。

 この閣議決定を受けてJACDSでは臨時常任理事会を開催し、その後の業界対応について検討。会員企業に対する医薬品のインターネット販売の自粛を解除する等の対応を決定した。

 当時、JACDSが決定した対応は、[1]会員企業に対するネット販売の自粛を解除する[2]JACDS内に「医薬品ネット販売対策本部」を設置し、ガイドライン、会員企業支援およびネット販売の情報収集を行う[3]「医薬品ネット販売を考える民間フォーラム」サイトと組織の設置[4]セルフメディケーション推進の障害にならないネット販売ルールの制度化に向けたロビー活動に力を入れる――という4点だった。

 会員企業に対するネット販売の自粛を解除することについては、これまでの業界自粛に協力してきた会員企業への感謝を示すと共に、閣議決定に基づいた各社の判断に委ねた。ただ、「スイッチ直後品目」および「劇薬指定品目」に関しては、自粛を継続した。

 ガイドラインについては、医薬品ネット販売の業界自主基準「医薬品ネット販売ガイドライン」としてまとめた。

宗像事務総長

宗像事務総長

 具体的に「医薬品ネット販売ガイドライン」は、二重のシステム対応の投資を避けるため、システム改善および変更を伴う基準は極力避けたものとするとの考えで策定しており、細かな画面の作り方や表現方法は各社の判断に委ねている(新法令施行時まで)

 また、同自主基準を“全て満たす”企業(店舗)のサイトには、JACDS「適合マーク」を画面に貼付できるものとした。マークを通販サイト画面に貼付する企業(店舗)は、各社がチェックしてJACDSに自己申告してもらう一方、なりすましを避けるためJACDSホームページに「適合店舗名」を掲載している。

 このほか、「ネット販売における価格設定は、店舗(企業)が決定するもので、店舗と価格が異なっても差し支えない」「医薬品販売業者の店舗販売の1つの方法として行われるものであり、販売責任は全て店舗(企業)に帰する」「新法令が決定次第、会員にその対応の内容および方法を通知し、同業界自主基準は廃止する」ことを条件として挙げた。

 その後、昨年10月には厚生労働省の「一般用医薬品の販売ルール策定作業グループ」および「スイッチ直後品目等の検討・検証に関する専門家会合」のまとめ内容に対して、JACDSの宗像守事務総長がコメントを発表した。それぞれの主なコメント内容は次の通り。


<一般用医薬品の販売ルール策定作業グループ>

 「リアル店舗において、ネットとのイコールフィッティングを一部求められた部分もあるが、チェーンドラッグの場合、混乱なく容易に対応できると思う」

 「今後業界としては、実効可能な対応方法を考え、販売マニュアルを会員企業に提供する」

 「JACDSは会員に薬事法の100%遵守およびネット販売の適正な運用を求め、会員企業への支援を強化する」

 「JACDSは新法令が施行となった時より、行政にネット販売の監視の強化を求めていく」

<スイッチ直後品目等の検討・検証に関する専門家会合>

 「スイッチ直後品目を“医療用に準じたカテゴリー”としたことも理解が得られやすい内容だと思う」

 「これまでの1類よりも代理購入を禁止するなど、一般用として使用した時のリスクが不明であることに対応した内容で、ハードルを上げていることが感じられる」

 「ネット販売を意識した内容にするあまり、スイッチOTC医薬品のアクセスが困難になり、販売の低下および開発メーカーの消極化が懸念される」


利便性の反面、安全性など社会的問題に懸念

 これらの内容を総括し、宗像氏は「一部の購入者の利便性が高まる反面、今後はいくつかの社会的な問題も懸念する」との考えを指摘。

 具体的な例として、[1]OTC医薬品において、安全性の低下と責任所在の不明確化により、健康被害者の泣き寝入りが多発化する可能性がある[2]価格の低下、価格競争の激化によりOTCマーケットが減少し、ドラッグストアのみならず、医薬品メーカー、卸の経営が困難化する可能性がある[3]スイッチOTCの低迷およびメーカーの開発意欲の低下によるセルフメディケーション推進が困難になる可能性が大きい――ことを挙げ、「セルフメディケーション推進が困難になることにより、わが国の医療費の高騰は、消費税や保険料のアップか、給付の大激減策がとられる可能性が大きい」との考えを示した。

 さらに、政府や官邸に対しては、「国民の健康のみならず生活の安心・安全を第一に考えるのであれば、一部の利権者の言い分を聞くのではなく、国民の現在そして将来を見据えて政策的に判断すべきである」との考えを提示。JACDSでは「こうした可能性にも対応する新しい成長軸を研究し、会員支援を行っていく考え」とした。



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