日本薬剤師会常務理事
村松 章伊
薬物乱用防止教育
未成年者による喫煙や飲酒、青少年による薬物乱用について、学校での喫煙、飲酒、薬物乱用に関する指導・教育の充実強化が求められている中、新たに「危険ドラッグ」への対応が求められている。
これまで「合法ドラッグ」「脱法ドラッグ」「脱法ハーブ」「違法ドラッグ」等、様々な呼び名で用いられてきた。最近、使用者が重大な交通死亡事故を引き起こしたり犯罪に及んだりする事例が頻発し社会問題ともなったことで、危険な薬物であるという認識が得られやすい呼称へと変更された。
「危険ドラッグ」とは「規制の有無を問わず、使用することが危ない物質」のことをいう。2014年4月1日からは指定薬物の所持、使用、購入、譲り受けが禁止となった。これに違反した場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金またはこれらが併科されることとなった。
旧薬事法に基づき厚生労働大臣が「指定薬物」として、これまで1371物質(14.4.6現在)を指定し、規制を行なってきた。しかしネット等を利用して安易に入手、使用し、その急性毒性や「依存症候群」等の精神症状により、交通事故等、他者への危害事例・事故・事件が頻発している。今後とも新たに指定される薬物は増加することは確実で、こうした新たな薬物についての指導には薬の専門家である学校薬剤師の活用が適切であるともいえる。
こうした中で、今後の薬物乱用防止教育においては「危険ドラッグ」といわれる、新たな乱用薬物の根絶を図る必要から、従来の喫煙、飲酒、薬物乱用に「指定薬物を含めた危険ドラッグ」を含め、薬物乱用防止教室等において、「なぜいけないのか」を十分に周知し、危険行動に結びつかない指導の徹底が求められている。
くすり教育
薬事法の改正によりコンビニエンスストアやインターネットなどでの医薬品販売が可能となり便利になり、医薬品が手軽に入手できるようになった。その反面、医薬品の適切な使用についての自己判断が求められている。
子どもに、生涯にわたり自己の健康管理を適切に行う能力を身に付けさせることは大切なことである。全ての国民が医薬品を適正に使用することができるように、義務教育の段階から医薬品に対する教育を行おうというのが「くすり教育」の目的である。
医薬品に関する教育はただ知識を習得するだけでなく、状況に合わせ自分自身で判断・行動できる能力を養って初めて意味を持つ。したがって、自分の身体や健康に興味を覚える小学生から健康への関心を高め、中学校、高校と発達段階に応じて医薬品に対する教育を繰り返し行うことが望ましいともいえる。
中央教育審議会答申にも「子供に生涯にわたり自己の健康管理を適切に行う能力を身に付けさせることが求められている中、医薬品は医師や薬剤師の指導の下、自ら服用するものであることから、医薬品に関する適切な知識を持つ事は重要な課題であり、学校教育においても医薬品の適正使用に関する知識の普及や啓発に努めること」とある。
学習指導要領が改正され、小学校は11年4月、中学校は12年4月、高等学校は13年4月より施行とされた。この改正で保健体育において、“心身の発育・発達と健康、生活習慣病などの疾病の予防、保健医療制度の活用、健康と環境、傷害の防止としての安全、医薬品に関する指導の充実を図る”とされた。
特に中学3年において“医薬品は正しく使用すること”が改正のポイントに挙げられ、中学校の「保健体育科(保健分野)」の単元に「医薬品の有効活用」が盛り込まれた。
学校薬剤師が学校でサポーターまたはTT等として関わりを持つことにより、医薬品の教育においてもさらなる貢献をすることが期待されている。
学校給食の衛生管理
09年4月1日の学校保健安全法の施行により、新たに大臣告示となった「学校環境衛生基準」からは、旧来の「学校環境衛生の基準」にあった「学校給食の食品衛生」は廃止された。併せて、同日施行された学校給食法において、大臣告示された「学校給食衛生管理基準」により衛生管理等を行うこととされた。
しかし、学校給食衛生管理基準の管理運用については、その実施・報告・改善のみではなく実際に原因究明・再発防止等に対する指導助言等が不可欠であることから、運用面において設置者、管理者任せともとれる状況は大いに問題があるともいえる。
そのため、「学校給食衛生管理基準」の総則において、衛生管理上の問題がある場合には、学校医または学校薬剤師の協力を得て速やかに改善措置を図ること、とされている。
さらに、第2章「学校給食施設及び設備の整備及び管理に係る衛生管理基準」の2において、学校薬剤師の協力を得て(1)学校給食施設の各号に掲げる事項について、毎学年1回定期に(2)学校給食設備及び(3)学校給食施設及び設備の衛生管理の各号に掲げる事項については、毎学年3回定期に、検査を行い、その実施記録を保管すること、とされていることからも、学校薬剤師は「学校給食衛生管理基準」の理解を深めると同時に、確かな根拠に基づいた衛生管理の徹底を図るよう検査の実施ならびに指導助言に協力する必要があるといえる。(おわり)