総合的に対応できる薬剤師へ
近隣クリニックからの処方箋調剤と服薬指導、さらには在宅医療の現場にも赴き、在宅患者の血圧のほか、パルスオキシメータを使用した動脈血酸素飽和度(SpO2)の測定を実施し、それらバイタル情報を担当医に報告する――。大阪府藤井寺市にあるファーマシィ「はーと薬局」で薬剤師として勤務する長江香織さんの日常業務の一コマである。
長江さんは、2012年3月に近畿大学薬学部を卒業。中国エリアを中心に調剤薬局を展開するファーマシィ(広島県福山市)に入社した。入社後、大阪市内の大病院門前の薬局勤務を経験。現在の薬局に勤めて2年半が経過する。「はーと薬局」では100カ所以上の医療機関から月間約3000枚の処方箋を応需。さらに、近隣の基幹病院からクリニックまでの幅広い在宅医療も手掛けている。
長江さん自身も先輩の薬剤師が取り組んで来た在宅医療の現場を引き継ぐ形で、現在、3軒の担当を任されている。業務は、医療機関から送られて来たFAX処方箋を調剤し患者の自宅まで届けるというもの。在宅現場では、患者の服薬管理や残薬確認、服薬状況や体調などの聞き取りなど個別の患者に合わせた対応が必要になる。
「在宅医療の現場では、薬の話だけではなく、栄養や生活指導など生活全般など多岐にわたります。また、患者さんを中心とした多職種の連携も重要なポイントになります」と長江さん。
地域包括支援センターの専門職会議の場で、痛みがないにもかかわらず、処方されたロキソニンを毎日服用している患者さんがいるとの情報を受け、そこで薬剤師の立場から患者に対応し、問題解決が図れたケースもあるという。「月1回の訪問では、患者さんの生活全般が把握できるわけではありませんが、薬剤師としてできるフィジカルアセスメントを通して、きちんとした服薬管理につなげていきたいです」と展望する。
自身が目標とする薬剤師像は「薬だけではなく、糖尿病など、疾患に合わせた食事療法、運動療法、栄養療法、サプリメントの提案など、総合的に患者さんに対応できる薬剤師になりたいです」と将来を見据える。
一方、薬学生への就職活動では「長期の実務実習の間に、病院、薬局のそれぞれの良い面が見えてきます。その中で自分自身が、薬剤師として、何がしたいかを絞っていけば、それに合う就職先が必ず見つかると思います」とアドバイスする。長江さんの場合、実務実習先が、エリアに数軒しかない、まさに地域に必要とされる薬局だった。そこで患者さんとの距離が近いと感じたことが薬局を志望した理由の一つだという。「私自身、OTC医薬品の豊富なドラッグストアにも興味があったのですが、実習を通して調剤薬局の必要性を感じ、より患者さんのためにできることはなにか、ということに真面目に取り組んでいる印象があった今の会社を選択しました」という。
続けて、「大学で習った基礎となる薬の知識が現場ではとても役立ちますが、患者さん目線でその知識を伝えるためにはコミュニケーション能力も求められます」と長江さん。さらに、薬剤師を取り巻く環境の変化が、大学で学ぶ内容の一歩先にあることを実感した上で、「現状の薬剤師業務変化にも注視しながら、大学での勉強を頑張ってほしいです」とエールを送る。