第2回 薬局薬剤師と在宅医療~薬剤師業務の再構築~

2015年3月1日 (日)

薬学生新聞


うえまつ調剤薬局・宮城県名取市
轡(くつわ) 基治

在宅患者のQOLとは

轡基治氏

 薬物治療の目的を考えるとき、全ての患者に対する共通の目的としては『QOLの向上・維持』が挙げられる。しかし、個々の患者についてこの目的を掲げたときにはQOLという言葉の意味はあまりにも漠然としすぎていて、具体的な支援計画につなげて考えにくくなることがある。『QOL』という概念の意味するところが個人により全く異なるからだ。

 特に外来の投薬では、把握できる患者の生活背景に限りがあることから、このQOLという概念が合焦しにくく、把握していないことに関しては行動を起こしづらいか、または把握できていないことに気付かない。結局は通り一遍の服薬指導に終始することになってしまう。

 一方で患者は、薬剤師が患者自身のことをよく知らないため、型通りの服薬指導しかできないことを知っている。従って患者も無難に説明への受け答えをする。つつがなく薬を受け取るためには取り繕った話をすることもある。そうして、薬局を出るとふたたび日常生活へと戻っていく。

 患者の居宅を訪れてみるとそこには、薬局の投薬カウンターで話を聴くだけでは得られなかった膨大な量と種類の「情報」がある。情報とは、薬に関するものだけでない生活と療養環境にまつわる要素だ。これらの情報は、薬剤師業務の思考において、全て棄却してよいものというわけではない。その要素の多くは、患者の身体機能と結び付けて考えることができる。

 日本薬剤師会は、生活に必要な患者の身体精神機能を5領域(図1)に分類し、それぞれの機能と薬物治療との関連性に視点を置いた薬学的観察と評価を提唱している(『生活機能と薬からみる体調チェック・フローチャート 解説と活用 第2版』〔じほう〕)。

図1

 患者の居宅で得た生活機能に関する情報は単なる「暮らしの様子」ではない。薬剤の主作用や副作用が、これらの生活機能にどのような影響を与えているかを観察し、評価することが患者のQOL改善に役立つ。

 薬物治療を提供する側にある薬剤師は、ともすれば薬剤の効果そのものをアウトカムとして捉えてしまいがち。純粋な意味での評価はそれでよいかもしれないが、患者視点でのアウトカムもそこにあるとは限らない。薬物治療を実施することで、どのような良い影響があったのか、あるいは良くない影響があったのか、それらの結果を受けてどのように行動すべきか、ということが個々の患者にとって、真のアウトカムになる。

在宅での薬物治療を成立させる3要因

 在宅医療では患者の療養場所は主として自宅や介護施設であり、そこには医療従事者が常駐しているわけではない。医師や看護師、薬剤師などの医療者が訪問し、患者の状態を直接観察し関わることができる時間は、患者の生活時間全体から見れば、ほんのわずかな割合を占めるにすぎない。

 例えば、2週間のうちに医師が1度、看護師が4度、薬剤師が1度、患者宅を訪れるとしても、合計時間はせいぜい5~6時間程度だ。その限られた時間で薬物治療を適正に実施していくためには、[1]簡便性[2]安全性[3]アドヒアランスの三つの要素を確立していく必要がある(図2

図2

 簡便性とは、「患者や家族(介護者)が、いかに確実かつシンプルに薬剤にアクセスし服用できるか」ということ。用法・用量等を的確に把握して服用できるかどうか、手の届きにくい場所にしまい込んでしまってはいないか、いざ使用する段になってもその患者が扱える剤型や包装形態であるかどうか、使用法に戸惑っていないか、などが課題だ。薬剤を服用する以前の段階での課題であり、常に観察しながら必要に応じ支援を行う。

 例えば、在宅での薬剤師業務の一つとして残薬の確認が挙げられることが多いが、これは処方量の調整や医療費削減が最優先の目的ではない。残薬があるということは、何らかの理由で服用できなかった可能性を示している。なぜ服用できなかったかを評価し、支援策を講じる必要がある。

 安全性とは、副作用の予測とこれに基づく対応策の準備などを指す。患者は専ら医療従事者の観察下にない状況で薬剤を服用する。経過の中では、単に指示通りに服用して発現する副作用もさることながら、重複服用など誤用により副作用が発現する可能性がある。作用の強い薬剤や頓用薬などを誤って服用した場合に現れると予測される副作用については、その兆候など予め医師や訪問看護師など関係者間で周知・共有し、有事の際にいち早く発見と対処ができるように備えておく必要がある。

 アドヒアランスとは、患者や家族が薬物治療の持つ意義を理解できるよう支援することを指す。療養場所が自宅である場合などは特に、患者が薬剤を手に取り服用する一連の行為は、全て能動的な判断で行われる。その判断を下支えするのは、処方内容が患者自身の生活の中でどのような目的を持っているかということの理解にほかならない。薬剤を服用するということが薬物治療の大前提であるため、患者や家族とのコミュニケーションの中で認識の度合いを確認し、アドヒアランス確立のための支援を行う必要がある。



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