集中治療専門として活躍‐聖マリアンナ医科大学病院薬剤部 前田幹広さん

2016年1月1日 (金)

薬学生新聞


大切な“大きな視点”の対応

前田幹広さん

 聖マリアンナ医科大学病院薬剤部の前田幹広さんは、2002年に東京理科大学薬学部薬学科を卒業後、まだ一般的ではなかった「臨床薬剤師」を目指して米国に留学し、臨床現場で活躍する上で必要な知識やノウハウを身に付けた。帰国後は、集中治療専門薬剤師として集中治療室(ICU)と高度治療室(HCU)での業務を担当。14年には、日本集中治療教育研究会(JSEPTIC)の薬剤師部会代表に就任し、研修プログラムの作成にも取り組むなど、忙しくも充実した日々を過ごしている。

 医学部への進学を目指していた前田さんは、臨床現場で働きたいという思いが強く、卒業後の進路として、ぼんやりと「臨床に近そうな病院薬剤師」になることを考えていた。ただ、当時は院内での調剤業務が主流で、薬剤師の病棟活動が今ほど活発ではなく、「イメージしていたものと少し違っていた」という。

 何となくモヤモヤしたものを抱えながらも、3年次に、たまたま手に取った薬学生向けの無料雑誌を読んだことが大きな転機となる。チーム医療が進んでいる米国では、病棟に出て医師とディスカッションをしながら処方薬や投与量を決定することが当然のように行われていることを知り、「興味を持った」と話す。

 周囲と相談した結果、卒業と同時に渡米。2年間、コミュニティカレッジに通い、米国の薬学部を受験するために必要な単位を取得。薬学部を卒業後、1年目のレジデント研修は専攻を決めずに、内科、感染症、臓器移植など、さまざまな実習を行った。2年目には集中治療を専攻。実習を通して集中治療に必要とされる幅広い知識やノウハウを1年間かけて学んだ。

 2年目のレジデント研修を終了した10年に帰国。修得した知識やノウハウを生かせる現在の職場を選んだ。決め手となったのは病院の環境。当時の薬剤部長が診療報酬点数の算定ありきではなく、質の高い医療を提供するため、薬剤師が必要とされる場所には積極的に出向いてほしいという考えを持っていたことや、集中治療を担当していた医師も米国でレジデント研修を受けており、「医師と薬剤師が同じ方向を向いていた」ことが大きかったようだ。

 救命救急センターの集中治療室(ICU)と高度治療室(HCU)に配属され、4年半が経過したが、「薬剤師は細かいところに目が行きがち。ICUは全身管理なので、細かな視点だけではなく、大きな視点でも見られるようにする」ことを心掛けているという。

 現在、中央社会保険医療協議会では、ICUなど高度急性期医療を行う特定入院料の病棟で薬剤関連業務を行うため、集中治療室内への薬剤師配置を診療報酬で評価するかどうかを検討している。

 前田さんは「保険点数で評価されるようになればICUに薬剤師が出向く施設は増えるが、それに教育が追いついていく必要がある」と話す。世界標準の集中治療の普及を目的とするJSEPTICの薬剤師部会の代表を務め、集中治療に必要な薬剤師の教育プログラム作成に取り組んでいるからこその発想だ。

 臨床での業務は「答えがない場合の方が多い」という。ただ、最終的に何らかの判断をしなければならないので、一つの答えを追い求めない“リスクベネフィット”の考え方が必要になる場面が多い。前田さんは、「学生時代に柔軟な考え方を培っておくと良いかもしれない」とアドバイスを送る。



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