地域密着の薬剤師を目指す
「地域密着の薬剤師になりたい」と語る藤本智之さん。神戸市内の「マリーンハート薬局」に勤務し、管理薬剤師として多忙な業務をこなしている。患者から「兄ちゃん」と親しみを込めて呼ばれるキャラクターを武器に最近は、様々な相談を受ける機会が多くなってきた。今以上に頼られる存在になりたいと奮闘する日々だ。
2008年に神戸学院大学薬学部を卒業。奨学金を得ていた薬局に就職し、大病院前の大型薬局で働き始めた。働きやすい職場だったが、「患者さんと話すのが楽しい」と感じていた藤本さんは次第に、環境を変えたいと思うようになった。多数の薬剤師が多数の患者に接するため、継続的に同じ患者と接することができなかったからだ。
また、今日は取り揃えだけ、明日は鑑査だけと、業務を分担して作業のようにこなす環境にもなじめなかった。将来は、薬剤師の業務だけでなく、企業組織の一員としてマネージャーや教育担当者の経験を積みたいとも考えるようになった。
自分がなりたい姿を改めて自覚した藤本さんは転職を決意。12年に調剤薬局マリーングループに入社した。同グループは関西を中心に130薬局以上を展開し、200薬局を目指して持続的に成長している勢いのある企業だ。傘下には地域密着を目指す小規模薬局が多いため、「地域に受け入れられ、かかりつけの薬剤師を目指せると思った。自由な社風で、様々な経験を積めそうだと感じた」と振り返る。
神戸市長田区の薬局勤務を経て約2年前から、神戸市中央区の「マリーンハート薬局」で管理薬剤師として勤務している。近隣の内科診療所を中心に、地域の小児科患者らの処方箋も応需し、外来患者数は1日約40~50人。顔なじみの患者が増え、頼られていると実感する機会が多くなってきた。
藤本さんが薬局にいると「兄ちゃんの先生おるか」と電話がかかってくる。声を聞けば自然に、患者の顔が浮かぶ。「前にもらった薬やけどこれ飲んでいいか」。状況を聞き、適切な対応を助言する。
ふらっと薬局に立ち寄り、「眠れないけれど、どんな睡眠剤があるのか」など、医師には遠慮して話しづらいことを気軽に尋ねる患者も少なくない。ある時、糖尿病患者から「最近あくびが多い。だるい気がする」と聞いた。詳しく聴き取るとどうやら低血糖症状らしい。症状発現時の対応を改めて説明し、事なきを得た。
「家族の病気のことや診療所選びなど、お薬以外の相談を受けたり、処方箋を持たなくても薬局に来てくれたり、電話をかけてきてくれたりすると、やりがいを感じる。この地域にはあの人がいる、と思って頼ってもらえるのが理想」と話す。
薬学生に向けて藤本さんは「薬局薬剤師の基本的な業務はそれほど変わらない。そこから1歩先、自分が何をしたいのかを考え、やりたいことがかなう会社を選んだらいい」とアドバイスを送る。
藤本さん自身は「もっと街のことを知って地域密着を目指したい。健康食品や美容など幅広い知識も備えたい」。社内の勉強会を主導したり、薬事日報社発行の書籍「現場目線の処方解析」の原稿作成に加わったりするなど、企業組織の一員としての活動にも力を入れてきた。現在の経験を生かして将来は、各店舗のサービス向上をアドバイスする「マネージャーの仕事も経験したい」と語る。