薬剤師CRCとして奮闘中‐トライアドジャパン 浦嶋優里さん

2016年3月1日 (火)

薬学生新聞

目指せ、精神科のスペシャリスト

浦嶋優里さん

 トライアドジャパンは、精神科領域に特化した医薬品開発を支援する治験施設支援機関(SMO)として事業展開を行っている。今回、紹介するのが入社2年目の治験コーディネーター(CRC)である浦嶋優里さん。大学で学んだ薬学的知識をフルに活用し、治験を実施する医師と、治験に参加する患者の橋渡し役として活躍している。「医師や患者さんと日々接しながら、医薬品開発にも携わることができるのは、大きなやりがいです」と、笑顔一杯で話す姿を見るだけで元気が沸いてくるのが彼女の武器かもしれない。向精神薬などの精神科領域の医薬品開発が加速し、高度な専門性が求められるが、患者や医師から頼りにされる薬剤師のCRCとして、今日も階段を登っている。

医薬品開発と患者に接する喜び

 浦嶋さんの大学時代は、抗うつ薬の研究に明け暮れる毎日で、抗うつ作用を示す開発候補物質を動物に投与し、動物の行動がどう変化していくか、日々観察していたという。「精神科領域での社会的な問題に強い関心を持っていました」と振り返る彼女が、職業として選んだのは、研究者の道ではなく、CRCという仕事だった。

 在学中、CRCを扱った講座を受講した。医薬品開発に携わりながら、患者とも接することができるこの職に興味が沸き、5年次の病院実習では生き生きと働くCRCに目を奪われ、働きたいと真剣に志すようになった。

 医薬品開発に携わることができる、患者さんと接することができる、そして大学時代に学んできた精神科領域での専門知識を生かせる。やりたかった仕事の条件の3つが見事に合致したのが、精神科領域に特化したSMOを運営するトライアドジャパンだ。

 CRCの仕事は、治験を実施する医療機関で医師の指示のもと、医学的な判断を伴わない業務や治験に関わる事務的業務など治験支援業務全般を担当し、新薬開発の一端を担う。

 治験開始前には、治験業務フローや症例管理のための資料を作成するなどの準備を行い、治験に参加する被験者に内容を説明したり、治験担当医師が実施する業務のサポートや、依頼者である製薬企業、病院の薬剤部・検査部など治験関連部門とやりとりを行う。

 浦嶋さんは、「医師からの指示で動くだけでなく、能動的に取り組めるのがCRCのやりがい」と力強い声で語ってくれた。その1つが、治験実施計画書に適格性の高い患者に、より多く治験へ参加してもらうという業務。医師からの紹介もあるが、CRCが医療機関を受診する患者の中から、治験ごとに決められたプロトコールに合致する患者を探す。その後医師が最終判断した上で、被験者登録を行う流れになっている。治験実施期間の短縮、最終的な治験データの精度に大きく影響するため、新薬開発の成否を分ける重要な業務だ。

 「自分が推薦した被験者が治験に登録され、治験実施期間に病態が改善されているのを見ると、新しい薬剤が持つ効能・効果を実感できます」と教えてくれた。自分が推薦した患者が開発中の薬剤で状態が快方に向かうことと、新たな医薬品として多くの患者に届けられることになるという2つの喜びを感じることができる。

薬局で処方や調剤学べる教育体制の充実が強み

 治験では、対象薬剤の有効性・安全性を正しく評価するため、治験期間中は被験者が使えない併用禁止薬が指定される場合がある。治験で投与される以外の薬剤を服用する場合には、CRCに連絡する必要があるが、浦嶋さんには被験者が治験実施中に併用禁止薬を服用してしまったという苦い経験がある。

 「併用禁止薬の説明をしたつもりでも、患者さんにしっかりと伝わっていなかったことがあり、患者さんに応じたコミュニケーションの取り方をすべきだと考えるきっかけになりました」。患者の声に耳を傾け、説明するときにはじっくりと時間をかける。精神科領域の疾患では、うつ病からアルコール依存症など多岐にわたるが、「話すスピードを変えたりして、安心して治験に参加いただけるように心がけています」と話す。

 浦嶋さんが勤めるトライアドジャパンは、治験支援事業だけでなく調剤薬局を運営している。精神科領域の薬剤を多く応需する薬局で、精神科の処方や調剤を学ぶことができるのは、他の治験支援事業者にはない特徴だ。同社では、薬局で調剤を経験し、薬剤師としてのジェネラルな能力を身に付けた上で、CRCとしてスペシャリストを目指せるような研修制度を用意する。

 浦嶋さんは「CRC業務では、薬学的な知識を生かすことができる。今後は作用機序を熟知した薬剤師としての強みをより生かしたCRC業務を追求していきたい」と前を見据える。その思いを支えるのは、同社の充実した教育体制や先輩CRCたちの指導だ。「CRCの先輩社員や先生に聞いたりして、疑問はすぐに解決しています。もっと勉強して、1人の患者さんに関して先生とディスカッションできるようになりたい」。精神科領域のスペシャリストCRCという目標は少しずつ近づいてきている。



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