製薬企業は、莫大な研究開発費を投じて新薬開発を行い、承認取得後に販売することで収益を最大化するビジネスモデルが特徴。しかし、新薬開発の成功確率の低下や医療費の高騰を背景に、国が決めた医薬品価格である「薬価」を引き下げる政策もあり、過去に比べ事業環境が厳しくなっているのも事実だ。今後の成長の鍵は、新薬開発とグローバル化にかかっているといっても過言ではない。
医療用医薬品の2015年度国内医薬品市場は、調査会社IMSヘルスの調べで、初めて10兆円を突破した。昨年は、C型肝炎を根治する治療薬が販売されるなど売上1000億円以上の大型製品が4つに上った。
製薬企業の成長を支えるのは新薬だ。新薬には特許期間が付与されており、その間は独占的に販売することができる。薬価も特許期間中は引き下げない新薬創出加算制度が試行的に導入されており、一定の収益が見込める。治療満足度が低く、患者数が多い疾患で新薬を開発すれば、一気に成長することができる。
特許期間満了後は、長期収載品と呼ばれるカテゴリーに入る。同じ有効成分を持つジェネリック医薬品(GE薬)の参入が認められており、製品売上の減少期に突入することになる。ただ、日本では海外に比べ、永らく長期収載品が使われ続けたため、新薬開発にかかるコストが高騰。開発成功率も低下したことを背景に、主力品については特許が切れても売上を最大化する経営努力を続けてきた。
ここにきて事業構造の転換に迫られるようになってきた。医療費高騰を受け、先発品に比べ安価なGE薬の使用を促進する政策が取られるようになった。昨年発表された「骨太の方針」では、17年央にGE薬の数量シェア70%、18年から20年の早い段階で80%に引き上げる目標が掲げられ、長期収載品に依存したビジネスがいよいよ難しくなってきた。
厚生労働省は、「医薬品産業強化総合戦略」を策定し、新薬メーカーに期待される役割を、世界展開できる革新的医薬品の創出と位置づけ、今後新薬が創出できなかった新薬メーカーは事業転換が迫られ、日本の新薬メーカーもM&Aなどによる事業規模の拡大を視野に入れるべきと提起した。製薬企業で構成された日本製薬工業協会も10年後の製薬産業の姿を示した「産業ビジョン2025」を発表し、日本発医薬品の海外展開を促した。
国内の製薬各社は、新薬を生み出すべく経営資源を重点疾患領域へ投下させるために事業の選択と集中を進めており、それ以外の事業は他社への売却などで本体から切り離しを進めている。そして海外進出も加速させ、既に大手企業では海外売上比率が60%台に到達するなど、成長の活路を新興国市場に求める動きが強まっている。