【日本薬学生連盟】昨日までなかった情報、今日は自分の手元に‐FAO model conferenceに参加して

2016年3月1日 (火)

薬学生新聞

東邦大学2年、日本薬学生連盟
斎藤 伶奈

 私は昨年9月下旬の1週間、イタリアのローマにあるFAO(国際連合食糧農業機関)でのmodel conferenceに出席してきました。英会話力に自信はあったものの、英語で履歴書とモチベーションレターを書くのは初めてで不安もありましたが、高い倍率の中、無事選考に通りチャンスを手にすることができました。

 このconferenceのテーマは、飢餓をなくすことを目標に世界中の支持を集めようという取り組み「The Zero Hunger challenge(飢餓ゼロへの挑戦)」で、以下5つの目標を達成するために200人近くの各国代表者と話し合いを進めていくものでした。

  • Zero stunted children less than 2 years
  • 100% access to adequate food all year around
  • All food systems are sustainable
  • 100% increase in smallholder productivity and income
  • Zero loss or waste of food

 目標の通り、飢餓問題や食糧問題といった人命に関わる問題から、難民問題や支援協力問題などの社会的問題など、多岐にわたって討論が繰り広げられました。私は薬学生として、栄養失調問題や保健衛生といった面で討論に参画してまいりました。今回、私が皆さんにお伝えしたいことは、このconferenceを通して私が学び得てきたものです。5日間行われた会議で、切実に学んだことは「自ら情報を取りにいかないと、誰も教えてはくれない」ということです。私にとって、この気づきは尊いものでした。

 会議初日、「1人ずつ1分スピーチをして下さい」と急に告げられました。自分の調べてきたデータの概略は、1分といえど急に話せる内容ではありません。きっと他の人も急なことで驚いているだろうと思いましたが、聞いてみれば大多数が昨日のうちにスピーチの噂を入手していたというのです。

 きっちり原稿を用意している人、スピーチを暗唱している人もいました。周りを見渡し、「なんで私には情報が回ってこないんだ」と思いました。主催者側の情報は全て目を通しているのに、一体どうしたことかと考えつつ即席のスピーチで乗り切りました。

 会議2日目、朝から急に伝書が飛び交っていました。国際会議など比較的大勢で行われる会議では、会議中でもメモ書きを届けてもらうことで他の代表者と話すことができます。それが急に盛んになったのです。何も指示はない、議論の真っ最中なのに、そんなに何を伝えたいのかと不思議に思っていました。謎が解けたのは午後でした。

 出された課題について、同じ問題を抱える国同士、協力し合えそうな国同士でチームを作って議論するというものでした。あの伝書は、チームビルディングのためだったのです。「あなたの国と協力したい」や「あなたの国の抱えている問題は似ているから話し合いたい」という内容を伝え合うチームビルディングは、既に午前から始まっていたのです。

 他の人はなぜこの情報を事前に知っていたのだろう。事前の下調べを十二分に行い参加しただけに、出遅れている自分に心の底から悔しさが込み上げてきました。すぐに各国代表者に伝書を飛ばし、希望のチームに加わることはできました。

 2日続けて情報不足に翻弄され、私は主催者に情報の伝え漏れがあるのではないかと問い合わせましたが、そんなことはありませんでした。もうこれ以上出遅れたくはないと思い、「次の会議では何をするのですか?」と聞いてみました。

 今日の続きをするものと思っていましたが、「チームで一つの提案書にまとめてもらい、各チームから提出されたものを全体で話し合っていきます」

 課題が2つもあるではないか。私はこの時初めて分かりました。自分から情報を取りに行かないと、誰も教えてはくれないということを。与えられた情報が全てと思い込み、情報が与えられていないことに不満を感じていた自分の間違いに気づきました。

 よく「指示待ち族」という言葉を耳にしますが、私がまさにそうでした。そんな自分を省みて、残りの数日は積極的に情報を収集し、率先して行動することができました。なぜ私にはできなかったのだろう。休憩時間に他の代表者と話して分かったのは、海外の人は情報を集めることへのハングリー精神が旺盛だということ。私は「知らないことを知ろう」というハングリーさがありませんでした。

 大切なのは、自分の知らないことがあるのかもしれないという意識を持つこと。お国柄や国民性もありますが、少なからずあの場に集まった代表者たちはそんなふうに見受けられました。

 親から、先生から、そして社会からと、与えられたものの中で生きることができ、慣れてしまい、知らないものを知ろうというハングリー精神が欠如してしまったように思います。

 この気づきによって、帰国後の私の生活姿勢も一変しました。大学で学べないことは、学会や講演会に足を運ぶ。募集がなくても企業見学を交渉したりと、欲しい情報は自分から求める姿勢を意識するようになりました。

 すると、見えてくる世界も変わってきました。昨日までなかった情報が、今日は自分の手元にある。人は誰でも、あの時知っていたらよかったのにと思うことが一度はあります。もし、それが必要な時に知ることができていたなら、きっと人生も変わると思いませんか。私は歳をとってから後悔はしたくありません。今回の体験を機に、大切なことを学べてよかったと心から思っています。この記事を読んでくださった方の世界が少しでも変わることを願っています。



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