【薬剤師になる前に~今だからOTC医薬品を学んでおきましょう!】第8回 OTC医薬品概論(2) “鼻炎用薬”

2016年5月1日 (日)

薬学生新聞

(株)スギ薬局、日本薬剤師会一般用医薬品等委員会委員
藤田 知子

藤田知子氏

 毎日、薬局に勤務していると、気温や天気よりも来局者からの病気に関する問い合わせから季節を感じるようになります。風邪やノロウイルスのように感染性の病気がはやると冬を感じ、花粉症の話を聞くと春を感じます。気温の上昇と共に水虫、日焼けなど皮膚疾患の問い合わせが多くなって夏を感じ、それが終わったら、次の風邪シーズンの準備を始めます。患者さんが薬を求めて来局される前に、季節に先駆けてOTC医薬品を供給しておかなければなりません。もちろん、医薬品情報や養生法など薬学的情報も同様です。すでに、シーズンは終わってしまいましたが、今回、鼻炎用薬を取り上げます。

必要な鼻炎用薬の適正使用

 鼻炎用薬(内服)の成分には、抗ヒスタミン薬(第1世代、第2世代)、交感神経興奮剤、抗コリン薬、消炎酵素剤、生薬などがあります。

 第1世代のクロルフェニラミン塩酸塩、ジフェニルピラリン塩酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩は、前述の交感神経興奮剤であるプソイドエフェドリン塩酸塩、フェニレフリン塩酸塩、抗コリン剤であるベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミドなどと一緒に配合されているのが特徴です。そして後で述べる第2世代と比べ、すでにアレルギー症状が現れ、つらい症状が出ている場合には、この配合剤の方が症状緩和に適しています。

 第2世代は、第1世代のやっかいな副作用である眠気を軽減していて、さらに抗アルギー作用もあります。ですから、アレルギー症状が出てからではなく、出てくる前から服用を始め、1~2週間続けて服用することが重要です。第2世代は、医療用からのスイッチ成分も多く、特に2010年以降いくつかの成分がスイッチされました(ケトチフェンフマル酸塩、アゼラスチン塩酸塩、エピナスチン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩、セチリジン塩酸塩、エバスチン)。また、メキタジンを除き、単味の製品が多く、第1世代では注意が必要である「高血圧」「心臓病」「緑内障」「前立腺肥大症」など治療中の方にもお勧めできるのが利点です。これらスイッチOTC成分は、今もなお、医療用医薬品で汎用されているのですが、効能効果やその他違いがあるので医療用同様に使用できるとは限らないので、医療用医薬品の添付文書とOTC医薬品のそれとを比べ、それぞれの注意事項を確認しなければなりません。そして医療用のインタビューフォームなどから情報を収集し、要指導・第1類医薬品の対面販売では顧客から十分にヒアリングを行い、適正販売につなげるようにします。

 鼻炎用の漢方薬もいくつかあります。まず、水状の鼻水が出る症状の方には、「小青竜湯」が、鼻づまりのある方には、「葛根湯加川キュウ辛夷湯」などが使われます。さらに副鼻腔炎、慢性鼻炎の症状には「荊芥連翹湯」などの漢方処方があり、各社が製品を発売しています。これらは、特に第1世代の抗ヒスタミン薬と比べすぐに効果が実感できるというわけにはいきませんが、副作用である「眠気」がなく、自動車の運転や事務作業ができます。

 生薬の「マオウ」が入っていない漢方薬(荊芥連翹湯など)は、抗コリン薬の副作用である「口渇」「緑内障悪化」「前立腺肥大の症状悪化」を起こす可能性を回避できるので、これらの既往歴がある方にもお勧めしやすいです。体質や生活環境などをうかがい、その方に合ったものを提案できる分野です。

 鼻炎用薬には点鼻薬(外用剤)があります。内服薬同様に抗ヒスタミン薬に加え血管収縮剤であるナファゾリン塩酸塩、テトラヒドロゾリン塩酸塩やステロイド成分、殺菌成分他が配合されています。特に、鼻閉に効果があるのですが、血管収縮剤を頻回に、あるいは長期使用(2週間以上)すると反跳性の鼻閉を来します。不適切な使用がかえって症状を悪化させることをきちんと伝えることが重要です。点鼻薬は、局所に直接噴霧し、特に血管収縮剤配合剤は即効性もあり、頓服使用できるので内服薬で効果不十分なとき、症状がひどい場合にお勧めします。

 最近のスイッチ成分に、「ベクロメタゾンプロピオン酸エステル」があります。医療用では気管支喘息吸入剤としても適応がある成分ですが、OTC医薬品としては、花粉症(季節性アレルギー)のみ使用可で、真菌症、結核などの感染症には禁忌で、喘息、緑内障の患者などにも使用できません。また1年間に1カ月を超えて使用できませんので、適正使用についてアドバイスが必要です。

症状緩和を促すことが大事

 以上のように、鼻炎用薬は医療用医薬品のスイッチが進んでいるカテゴリーであり、漢方薬、和漢薬、点鼻薬など、バリエーションも豊富です。さらに、マスクなど周辺商品も多いので、薬局で症状緩和ができる範囲がどんどん広がっています。一方、鼻炎用(内服)薬の添付文書を確認しますと、「5~6日服用してもよくならない場合は……医師、薬剤師、登録販売者に相談してください」との注意書きがあります。これは、総合感冒薬の「5~6回服用しても……」に対し、服用を始めてからしばらく様子を見ていただく期間、つまりセルフメディケーションでの観察期間が長いので、その間もしっかり薬剤師が対応します。薬剤師が、鼻炎の症状について相談を受けた時には、まずOTC医薬品の範疇で対応できるものかどうか見極め、さらに薬学的知見に基づいて併用薬や、既往歴、合併症などいろいろな状況を確認、判断して、適正に商品を選択してください。そして、服用中もその経過を観察しながら、症状緩和を促す方策を提案することが大事です。問い合わせから症状緩和まで顧客に寄り添えれば、「花粉症の時期になったら、薬局へ行こう!」というかかりつけ薬局のイメージがつくでしょう。そして「花粉症ならお任せください」と自信を持って対応できる薬剤師になっていただきたいと思います。



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