日本薬剤師会は、今年で創立120周年を迎えた。6月9日には、都内のホテルで関係者ら約1000人が集い、記念の式典、祝賀会が盛大に行われた。今号では、常陸宮ご夫妻の臨席や、安倍晋三首相、伊吹文明衆議院議長、田村憲久厚生労働相、下村博文文部科学相、横倉義武日本医師会会長らが来賓として出席した記念式典の様子を紹介する。
式典の冒頭、あいさつした児玉孝日薬会長は、1893(明治26)年の同会設立時を振り返り、「当時の薬剤師の先達が、わが国の医療に貢献できる薬剤師職能を確立するため、医薬分業制度の実現に強い意欲を持ち、様々な運動を展開した」と述べた。
同会設立時からの“先達”の活動に思いを馳せ、「120年の節目に次の世代を担う薬剤師に先達の夢をつないでいく」との決意を表明した。
その上で、「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし」という吉田松陰の言葉を引用し、「いま、この節目に改めて次の世代を担う薬剤師に先達の夢をつないでいくことを心から誓う」と述べた。
常陸宮殿下は、「薬剤師が医薬品の適正な使用、安全確保に活躍していることは誠に喜ばしいことと思います。阪神淡路大震災や東日本大震災において、多くの薬剤師の皆さんが被災地で医薬品の供給に尽力されたと聞き、大変心強く思いました。今後も、国民の命と健康を守るため、医療の担い手として、他の医療関係者と連携し、大いにその役割を発揮されるよう祈念します」と述べられた。
安倍首相は、「医薬品に関する相談や情報提供など、薬局や薬剤師の果たす役割は大きく、今後も地域医療等の拠点として、活躍いただくことを期待している」と述べると共に、政府が取りまとめる予定の成長戦略の大きな柱の1つである健康・医療分野への協力を呼びかけた。
また、6年制の薬学教育を修了した薬剤師が誕生していることに言及し、「薬剤師の新しい時代の始まり。臨床での実践的な能力を発揮し、チーム医療や在宅医療において大いに活躍してもらいたい」とエールを送った。
伊吹氏は、日薬の創立から今日までの歴史について、「患者や健康を心配している国民と向き合い、地域や医療機関で努力してこられた皆さんの先輩方の120年であり、薬剤師の皆さんが使命感や誇りを持って仕事ができるよう努力された、歴代役員の積み重ねでもある。今後の発展を心からお祈りしたい」と述べた。
田村厚労相は、「2012年4月に6年制新カリキュラムを受けた第1期生の薬剤師が誕生した。少子高齢化や医療技術の高度化が進む中において、薬の専門家としての薬剤師に対する国民や医療現場からの期待は一層大きくなってきている」と指摘、今後は「病院や地域の在宅医療におけるチーム医療の一員として、職能を発揮していただきたい」と述べた。
また、薬局や薬剤師に対して、「セルフメディケーションの推進、地域に密着した健康情報の拠点に力をいただかなければならないと考えており、厚労省もしっかり支援したい」との考えを示した。
下村文科相は、薬学教育6年制化に伴い、必修となった実務実習の受け入れ施設の確保をはじめ、文科省が検討を進めている薬学教育モデルコアカリキュラムの改訂作業への参画など、「薬学教育の改善・充実のため、多岐にわたり協力いただき、深く感謝している」と述べた。
その上で、「医療薬学教育、研究の充実など、取り組まなければならない課題は山積しており、貴会にはさらなる社会貢献が期待されている」とし、薬学教育のさらなる充実に対して協力を求めた。
横倉日医会長は、高齢化の進展に伴い、「いつでもどこでも良質な医療を等しく受けられる医療体制を求める国民の期待は、さらに大きく膨らんでくる」とし、「地域の医療提供体制を立て直し、国民皆保険制度を堅持するためには、医療関連団体が相互に連携を深め、国民皆保険の堅持を共通の理念として一致団結していくことが求められている」と強調。
薬剤師に対しては、「医薬品の適正使用を確保し、安全性を守るという社会的使命を全うされる中で、引き続き、国民医療の推進に向けて尽力いただきたい」とした。