【これから『薬』の話をしよう】薬剤効果の曖昧性? [2]

2017年7月1日 (土)

薬学生新聞


医療法人徳仁会中野病院薬局
青島 周一

青島周一氏

 みなさん、こんにちは。前回は真のアウトカムに対する薬剤効果の曖昧性について触れました。今回はこの“曖昧さ”についてもう少し詳しく話します。

 明確な効果が疫学的に示されている薬剤は確かに存在します。ペニシリンやインスリンが多くの命を救ったことは皆さんもご存じでしょう。つい先日も、抗レトロウイルス療法を早期に開始したHIV患者の平均余命は一般人と変わらない、という論文が報告されました(PMID:28501495)。したがって、今回の考察がすべての薬剤に当てはまるとは言いません。

 しかしながら、糖尿病や脂質異常症など、いわゆる生活習慣病と呼ばれるような慢性疾患に対する薬の効果、それも真のアウトカムに及ぼす影響が非常に曖昧であるという事実は、あまり注目されることがないように思います。

 例えば、脂質異常症の治療に用いるプラバスタチンという薬のエビデンスを見てみましょう。日本人を対象にした臨床試験で、プラバスタチンの投与は、投与しない場合に比べて心臓病の発症を33%減らすことが示されています(PMID:17011942)。

 この数字だけ見れば、プラバスタチンには確かな効果があるように思えます。しかし、この33%という数字は、相対比であることに注意が必要です。この研究において心臓病の発症率(年率)は何も投与しない群では0.5%、プラバスタチン投与群では0.33%でした。この差を取るとマイナス0.17%。つまりプラバスタチンの効果は、集団全体の心臓病の発症率を0.17%減らす程度にすぎないともいえるのです。

 相対比で見れば「33%も減らす」、差で見れば「0.17%しか減らない」。どちらも同じ薬剤効果の記述ですが、“比”を取るか“差”を取るかで、そのイメージは大きく異なります。どの指標で示すかによって、薬剤効果を大きく見せたり小さく見せたりすることができるというのは、裏を返せば薬剤効果は曖昧であるということに他なりません。控えめに言っても明確なものではないでしょう。

 でも、こうした曖昧性は決してネガティブな意味を持ちません。薬剤効果の曖昧性を患者個別の薬物療法にどのように活用していくか、それはまた次回以降にお話しします。



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