ニュースダイジェスト

2017年7月1日 (土)

薬学生新聞

【厚労省】アレルギー医療に関与期待‐薬局・薬剤師の役割を明記

 厚生労働省は、アレルギー疾患の適切な診療を行う医療提供体制の素案をまとめた。診療所のかかりつけ医や一般病院、都道府県の拠点病院、全国の中止の拠点病院による連携協力を基本方針と位置づける中で、患者の服薬状況や副作用歴を把握する薬学的管理を実施する薬局の積極的な関与も必要とし、薬局・薬剤師の役割も明記した。アレルギー医療への関与に薬局・薬剤師の役割が一つの項目として明記されるのは異例で、新たな貢献への期待に応えられるかどうか。全ては今後の取り組みにかかっている。

 医療体制の案では、アレルギー疾患の重症化を予防するための適切な治療と管理に向け、多くの軽症患者を診療するかかりつけ医、病態が安定しない場合に紹介を受け関わる都道府県の拠点病院、さらに国レベルで科学的知見の情報提供や専門的な医療従事者の育成に関わる「中心拠点病院」に国立成育医療研究センター、国立病院機構相模原病院の2施設を位置づけた。これら各機関が連携することにより、アレルギー疾患の適切な治療と管理が行われる体制が重要としている。

 その上で、アレルギー疾患の予防や治療について、薬剤師が患者の服薬状況を把握して薬学的管理を行うなど、薬局の積極的な関与も必要との記載が盛り込まれた。アレルギー医療の均てん化を進める観点から、薬局・薬剤師の役割を盛り込んだもので、一つの項目として薬剤師の役割が明記されるのは異例。それだけ期待されていることの裏返しともいえるが、国の医療提供体制にしっかりと位置づけられる以上、これまで以上に結果が求められそうだ。

 具体的な役割としては、アレルギー疾患において、かかりつけ薬局・薬剤師が患者に適切な薬物療法を提供することが重要であり、医療機関やかかりつけ医と連携しつつ、適切な情報提供や服薬指導を行う必要性を強調。薬学的専門性の観点から、服薬情報やアレルギー歴などの副作用情報について、処方医へフィードバックすることも求めている。

 各都道府県に1~2カ所設置する拠点病院には、内科、耳鼻科、皮膚科などの学会専門医が常勤することを求め、日本アレルギー学会のアレルギー専門医の常勤に加え、アレルギー疾患の専門知識を持つ薬剤師などの配置が望ましいとした。

【厚労省】偽造薬対策で中間まとめ‐取引、流通ルールを明確化

 厚生労働省の検討会は、偽造薬の流通防止に向けた施策を中間的にまとめた。医薬品卸や薬局が医薬品を仕入れる場合には、取引先の身元や販売許可などの確認を厳格に行うことや、医薬品を開封して販売したり、授け渡す場合、開封した業者や薬局名、その住所などを表示することも求めることになる。厚労省は、今夏をメドに省令改正など必要な措置を行う。

 従来あいまいだった医薬品の取引に関するルールを明確にすることにより、ルールから逸脱した卸や薬局に対し、適切な指導を行えるようにする。C型肝炎治療薬「ハーボニー」の偽造品流通問題では、法令上定められている氏名や品名、数量は記録されていたものの、偽造品を持ち込んだ人の氏名は偽名だったため、取引相手の適格性の確認や譲受記録の徹底を求める。

 取引相手の氏名、品名、数量、年月日といった従来の項目に加え、相手の住所やロット番号、使用期限を新たに書面に記載し、保存することとし、医薬品の譲渡人、授受人の身元確認をどのような手段で行ったかについても記録に残すよう求める。

 ハーボニー偽造品問題では、医薬品が開封済みのボトル単位で流通したことを踏まえ、卸や薬局で医薬品の封を開けた者の氏名や住所等を新たに表示することとした。また、品質に疑念のある医薬品を発見した場合の対応を業務手順書に明記することも求める。医薬品を保管する区域への立ち入りも制限する。医薬品は明確に識別された状態で隔離された区域に保管し、医薬品の保管区域への立ち入りは、権限を与えられた職員のみに限定することとした。

 医薬品の転売ルートを断ち切るため、患者に販売包装単位で調剤を行う場合の規定も設けた。販売、授与された薬が再度流通することがないよう外見から調剤済みと分かるような措置を検討し、徹底することも求める。

 さらに、破棄する医薬品の記録を徹底すること、管理薬剤師の責務として偽造品対策の仕入先、販売先の確認、返品された医薬品の最終処分の判断などを位置づけることも明確化した。

国の財政政策「骨太方針」が決定‐調剤報酬は対人重視、リフィル推進

 政府は9日、膨らむ社会保障費の歳出改革などを盛り込んだ2017年の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)を閣議決定した。方針には薬剤師に関連する政策も多数盛り込まれ、保険薬局の収入に直結する調剤報酬について、薬の調製など対物業務の評価を引き下げる一方、在宅訪問や残薬解消など対人業務を重視した評価の検討を明記。かかりつけ薬剤師・薬局や健康サポート薬局の機能を果たす取り組み、リフィル処方の推進方針も明記した。薬価制度の抜本改革に向けては、新薬創出加算の対象を革新性のある薬に絞るほか、類似薬と比べて画期性の低い「改良新薬」の薬価をより下がる仕組みにする方針を明記した。

 骨太方針では、薬剤師関連の政策として、患者本位の医薬分業の実現に向け、かかりつけ薬剤師・薬局が服薬情報の一元的・継続的な把握などの機能を果たす取り組みを進め、薬局で活用できる電子版お薬手帳などICTによる情報共有を推進する方針を示した。

 薬局の収入に直結する調剤報酬についても言及。薬の調製などの対物業務に関する評価を引き下げると共に、在宅訪問や残薬解消などの対人業務を重視した評価について、薬局の機能分化のあり方を含め検討するとした。

 また、敷地内薬局や門前薬局など、様々な形態の保険薬局が実際に果たしている機能を精査し、それに応じた評価をさらに進める方針を提示。薬剤の適正使用に向け、医師の指示に基づくリフィル処方の推進も明記。セルフメディケーションを進め、地域住民に身近な存在の健康サポート薬局の取り組み促進も打ち出した。

 一方、薬価制度の抜本改革に向けた取り組みも記載。新薬創出等加算について、革新性の高い薬に対象を絞ると共に、費用対効果評価に反映した価格体系を構築する方針を提示。さらに、画期性、有用性に応じてメリハリのある薬価を設定し、類似薬と比べて画期性や有用性が乏しい「改良新薬」の薬価はより引き下がる仕組みとし、特許が切れた長期収載品の薬価も一層の引き下げを行う方針を明記した。

 後発品については、価格帯の集約化を検討するとした。素案段階で盛り込まれていた後発品薬価を超える部分の先発品薬価について原則自己負担とする参照価格制度を検討し、年末までに結論を得るとの記載は削除された。

【新潟薬科大学】長野薬学部の計画断念‐上田市が財政支援困難

 新潟薬科大学は、2019年4月に長野県上田市で計画していた「長野薬学部(仮称)」の開設を断念した。6月に入り、上田市から「現状では設置計画に対する財政支援が困難」といった説明があったことを受け、同大学は教育研究評議会を開催。長野薬学部設置計画について、「地元からの財政支援の見通しが立たないことから、計画をこれ以上進めない」方針を決めた。薬学部“空白区”の長野県で大きな騒動となった新設薬学部問題は、白紙撤回で決着した。

 薬学部設置をめぐっては、同大が建設に必要なコストを最大80億円と試算し、長野県と上田市にそれぞれ25億円の援助を要請していたが、長野県薬剤師会など県内医療関係団体の理解が十分に得られず、県からの財政支援を受けることが難しい状況になっていた。それでも同大は、地元のニーズはあるとして状況の打開を模索してきたが、長野県が財政支援の条件としている「県内医療関係3団体の賛同」が得られなかったことが決定打となった。

 県は、薬学部設置計画について財政支援を行うに当たり、県の医師会、歯科医師会、薬剤師会から理解を得ることが欠かせないとの立場。ところが、三師会は、地方の私立薬科大学で定員割れが相次いでいることなど「複数の不安要素があり、慎重にならざるを得ない」(長野県薬)との理由から「現時点では賛成しかねる」との意向を表明した。

 これにより、県は大学側から要請のあった財政支援を見送ることを決断。大学側を後押ししていた上田市も県からの財政支援を得ることが難しくなったことから、関係団体の賛同が得られておらず、環境が整っていないことを理由に支援を断念することになった。



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