近年の薬剤師国家試験では、臨床系の科目のみならず、基礎科目(物理、化学、生物)や衛生についても、臨床現場を意識した問題が多く出題されています。今後は、科目の知識だけでなく、臨床現場での応用を意識した学修が必要です。以下に物理、化学、生物、衛生の特徴や出題傾向、出題例を記載します。学修の一助になれば幸いです。
物理
■領域における特徴、出題傾向
近年の物理の出題は、計算・グラフの出題が多く、グラフの縦軸や横軸または文章から情報を読み取り、その場で考えて解答する、「考える力」や「応用力」が必要とされます。また、文章題においてもキーワードだけで解答できる問題は少なく、臨床で用いられる装置の測定原理など深い理解が必要となります。
■第102回薬剤師国家試験出題例
■出題例のPOINT
本設問はMRIの出題であり、測定原理や造影剤の内容が問われています。引っかけの内容が、別の画像診断技術の原理や造影剤であり、それに気づけるかどうかが鍵となっています。
■領域における学習方法のアドバイス
物理は苦手な方が多い科目だと思います。勉強する際は、キーワードだけ認識するのではなく、理由や難しい単語の意味を確認しながら学修を進めてください。
特に臨床とつながりやすく、実践問題での出題傾向の強い範囲は、反応速度論、酸塩基、束一性、分子間力、画像診断、分光分析、放射化学の範囲です。
化学
■領域における特徴、出題傾向
近年の化学のキーワードは「構造をみて判断する」です。特に医薬品の構造が与えられ、基本骨格や混成軌道、立体、塩基性などの基本事項を問う問題に加え、医薬品のファーマコフォアに関する問題や、生体内での反応などを問う問題も出題されています。また、生体成分などの構造的知見に関する問題も毎年出題されています。基礎事項をしっかり理解した上で、様々な医薬品に適用できるようにしましょう。
■第102回薬剤師国家試験出題例
■出題例のPOINT
本設問は、リュープロレリン酢酸塩の構造に関する問題です。ペプチド鎖を有していることから、N末端、C末端を判断し、構造をしっかり把握した上で回答する必要があります。
■領域における学習方法のアドバイス
化学は苦手な方が比較的多いと思います。まずは、既出問題を解き、どのように出題されているかを確認しましょう。その上で、基礎事項をしっかりと理解し、いろいろな構造に対応できるようにしましょう。
生物
■領域における特徴、出題傾向
近年、図表や実験操作などから情報を読み取り答えを導き出す、「考える問題」「応用力を必要とする問題」の出題が定番化しており、科目をまたいだ問題の出題も見られます。
■第102回薬剤師国家試験出題例
■出題例のPOINT
生物だけではなく、衛生や病態・薬物治療といった科目をまたいだ問題です。グルコースとヘモグロビンの構造、HbA1c値の意味など幅広い知識から答えを導き出しましょう。
■領域における学習方法のアドバイス
組織の構造や糖質・脂質など生体成分の構造、代謝など、一つ一つの知識を早い時期に修得することがカギです。そこから、構造とその代謝を関連づけ、問題を解く上での応用力をつけ、他科目との知識をつなぐ等、国試に向けてステップアップしていきましょう。
衛生
■領域における特徴、出題傾向
ひとえに予防接種を実施するといっても現場では様々なことに注意しなければなりません。特に「接種期間」は確認しておきたいことです。自治体が指定した接種期間であれば公的補助の対象ですが、期間外であると自己負担です。赤ちゃんが接種すべき予防接種は非常に多く、薬局の窓口で母親から予防接種に関して質問を受けることも少なくありません。
この現状を踏まえて国試では、現場での質問に対応できるような知識について出題されています。
■第102回薬剤師国家試験出題例
■出題例のPOINT
予防接種法に基づく定期の予防接種の分類、種類、接種時期について確認しましょう。
■領域における学習方法のアドバイス
予防接種の分野は、主に定期の予防接種が出題されます。定期の予防接種に分類されるものは以下2点を満たしていなければなりません。是非、具体例を確認しておきましょう!
・A類、B類疾病であること
・市町村長が政令で定めた年齢の対象者であること