【厚労省】16年度医療費、14年ぶり減少‐C型肝炎薬の大幅減影響
厚生労働省が公表した2016年度の概算医療費は41.3兆円になった。前年度に比べて約2000億円減、伸び率では0.4%減となり、14年ぶりに減少した。とはいえ、前年度に高い伸びを示したC型肝炎治療薬の薬剤料が大幅に減少したことが大きな理由。「特殊要因を除けば、高齢化などにより医療費が伸びる構造は基本的に変わっていない」(厚労省)のが実態だ。25年に高齢化がピークを迎えると言われる中、医療費の増加は社会問題となっている。若者や現役世代にとっては社会保障費の負担増が待ったなしの状況。将来的に医療費はどうなるのか。立ち止まって考えるきっかけにしたい。
医療費の伸び率は0.4%減と14年ぶりのマイナスとなった。厚労省は、C型肝炎治療薬など抗ウイルス剤の薬剤料が大幅に減少したことについて、医療費の伸び率への影響はマイナス0.5%程度と見られ、これら特殊要因によって、16年度医療費は一時的にマイナスになったとされている。
実際、こうした特殊要因を除けば15年度と16年度の2年間の平均伸び率は1.7%となり、2%前後で推移してきた医療費の伸びの傾向に変化は見られないということになる。
調剤医療費を電算処理分で見ると、処方箋1枚当たりの調剤医療費が前年度比5.6%減の9015円、処方箋枚数は0.8%増の8億2527万枚とわずかに増えた。調剤費の内訳は、薬剤料が6.7%減の5兆5778億円となったが、技術料は1.1%増え、1兆8490億円に達した。特に技術料のうち、薬学管理料は15.7%増の3656億円と大幅に増加しており、16年度改定で新設された「かかりつけ薬剤師指導料」の影響が考えられた。また、調剤基本料が5.3%減の5055億円、調剤料は0.1%減の8415億円、加算料は0.2%増の1364億円となった。
【経産省見解】患者宅への薬郵送は可能‐薬局での服薬指導後に
経済産業省は、薬局が患者の待ち時間を短縮する目的で、薬を調剤する前に薬剤師が患者に服薬指導を行い、その後、調剤した薬剤を郵送するなどのサービスを行っても医薬品医療機器等法には抵触しないとの見解を示した。病院や診療所で処方箋を受け取った患者が薬局を訪れ、服薬指導を受けたら帰ることができるため、利便性が飛躍的に高まることが期待される。薬の郵送も認められたことから、調剤前の服薬指導、薬の郵送が広がる可能性がある。
通常、患者が病院や診療所から出された処方箋を持って薬局を訪れ、調剤や監査で10~30分ほど待ち、服薬指導や会計を終えて帰宅する。今回、薬局から問い合わせのあったケースは、薬剤師が患者に薬の調剤前に対面で服薬指導を行い、その後、調剤した薬の郵送などを行うというもの。薬の調剤や監査と服薬指導の順番を変えることで、薬局での待ち時間を短縮することが目的としている。
今回、厚生労働省が検討した結果、対面で服薬指導を行うことを根拠に、薬機法に抵触しないとの見解を明らかにした。経産省は、病院や診療所を受診した患者が処方箋を持って最寄り駅の薬局を訪問し、処方箋を提出。服薬指導を受け、患者が帰宅後、薬局が薬を調剤、監査してウェブ決済、当日受取・翌日配送といったモデルを想定している。
経産省は、薬局での調剤と服薬指導の順番に関する薬機法の規制範囲が明確となったことで、待ち時間短縮に向けた新たなビジネスモデルの確立が期待されるとしているが、将来的にテレビ電話での遠隔服薬指導が可能となった場合、対面原則が議論となる可能性もある。
【健保連調査】かかりつけ薬剤師、低い認知度‐「仕組み知らない」6割
企業が設立する健康保険組合の連合組織である健康保険組合連合会が公表した「医療と医療保険制度に関する国民意識調査」の結果によると、薬局の利用状況について、いつも決まった薬局・薬剤師に処方箋を持ち込んで薬を受け取っているとの回答は13.4%にとどまり、かかりつけ薬局・薬剤師を持っている人は1割程度と少ないことが分かった。かかりつけ薬剤師の仕組みを知らないとの回答は62.3%に上るなど、国民へのかかりつけ薬剤師の認知度は未だ低かった。
調査は、全国の20~70代の2000人を対象にインターネット上で行ったもの。薬局の利用状況として、病院や診療所を受診したときの薬の受け取りについて尋ねると、「いつも決まった薬局かつ薬剤師に処方箋を持ち込んで薬を受け取っている」「薬剤師は決まっていないが、いつも決まった薬局に処方箋を持ち込んで薬を受け取っている」との回答を合わせ13.4%にとどまった。かかりつけ薬局・薬剤師を持っている人は1割程度と少ないことが分かった。
さらに、2016年度診療報酬改定で導入された「かかりつけ薬剤師」の仕組みについて、62.3%が知らないと回答。薬局業界内では、かかりつけ薬剤師のあるべき論が盛んに議論となっているが、実際に国民の受け止めは冷ややかなもので、ほとんど知られていないことが判明。薬局側と国民の意識ギャップが浮き彫りになった。