ニュースダイジェスト

2018年1月1日 (月)

薬学生新聞

化血研の事業譲渡決定‐明治グループなどが共同買収

 血液製剤の不正問題で揺れた化学及血清療法研究所(化血研)は昨年12月、ようやく明治グループや熊本県企業グループ、熊本県にワクチンや血漿分画製剤などの主要事業を売却することで合意にこぎ着けた。事業譲渡額は500億円。2月に最終契約書を交わした上で、化血研の事業を承継する新会社を設立後、明治グループ49%、熊本県企業グループ49%、熊本県2%の議決権比率で設立する買収会社が新会社の全株式を取得する枠組み。厚生労働省が主導したアステラス製薬への事業譲渡が破談に終わり、化血研の行方は不透明感が漂っていたが、ここへ来てようやく地元企業も参加する共同買収で決着した。

 化血研をめぐっては、2015年1月に組織ぐるみの不正隠ぺいで110日間の業務停止命令を受けたにもかかわらず、翌年10月には日本脳炎ワクチン「エンセバック」についてウイルス不活化処理を一部実施していない原料を使って製造していたとして、医薬品医療機器等法に基づき報告命令が出された。これが抜き打ち検査で発覚したことから、厚労省は製造販売業許可の取り消し処分を下す可能性もあると警告していたが、化血研は不正を真っ向から否定。さらに、水面下で進めていたアステラス製薬への事業譲渡も協議が決裂した。それでもなお、化血研は正当性を主張。これに怒り心頭の塩崎恭久前厚労相は「化血研単独での生き残りはない」と断言してもなお、抵抗し続ける化血研の対応は混迷度を深めるばかりであった。

 そんな中、ついに明治ホールディングスとMeiji Seika ファルマの明治グループと、熊本放送や再春館製薬所、テレビ熊本、富田薬品、肥後銀行などの7社で構成される熊本県企業グループ、熊本県が出資する方向で共同買収による事業譲渡が決まった。

 その結果、化血研は、主要3事業を売却し、奨学金給付等の非営利事業の活動に縮小する。今度こそ再出発を誓う化血研だが、どのように生まれ変わるのか引き続き注視されそうだ。

薬価抜本改革の骨子固まる‐長期収載品引き下げ新ルールを導入

 日本で販売する医療用医薬品の価格を決める薬価制度の抜本改革の骨子が固まった。これまで特許が切れても販売していた長期収載品の薬価については新たな引き下げルールを導入し、後発品に置き換わっている割合が80%以上の長期収載品を後発品の2.5倍まで引き下げ、その後6年かけて段階的に後発品価格に揃える。先発品メーカーには市場撤退の判断を迫る。新薬の価格を維持し、開発投資に回す狙いの新薬創出加算制度は、要件を満たす革新性の高い新薬に絞り込み、国内臨床試験の実施数などをポイント化して点数の高い順に上から25%程度の企業は薬価を維持でき、それ以外は薬価が下がる新たな企業指標を設定する。新薬開発への取り組みによって薬価がより維持する仕組みを導入するもので、厳しい変革を求める内容となった。

 抜本改革の大きな柱は、特許が切れても後発品に市場を譲っていない長期収載品の大きな価格引き下げを打ち出したこと。後発品の上市後、10年経過した長期収載品の価格を段階的に後発品と揃える。後発品置き換え率が80%以上の長期品は、まず後発品の薬価の2.5倍まで引き下げた後、6年かけ後発品薬価に揃える。この間、先発品メーカーは市場撤退を判断し、後発品企業は増産体制を準備する。

 後発品に置換えが難しい長期収載品は、先発品メーカーに安全性情報の提供義務があることを踏まえ、10年かけて後発品価格の1.5倍まで引き下げ、後発品と一定の価格差をつける。

 新薬創出加算は、対象を革新性と有用性のある品目に限る仕組みに見直し、平均乖離率以下と安売りしていないことを前提とした要件は廃止する。新規作用機序品は、三つの要件のどれか一つを満たす品目だけに限定。その上で、新薬開発への取り組みを評価する企業指標を設ける。これらをポイント化し、合計が高いほど加算額を手厚くして上位5%未満の企業だけが薬価を維持できる仕組みとしたため、製薬業界は猛反発。結果的に、新薬創出等加算の対象について新規作用機序品の1番手が収載された後、1年以内の3番手まで新薬として評価する当初案を3年以内に緩和するほか、企業要件もポイントの高い上位5%未満を上位25%程度まで広げることで決着した。それでも製薬企業にとっては大きな変革を求められる抜本的な改革であることは確かで、国内市場は激変時代に突入する。

調剤報酬、実質マイナス改定へ‐大型門前薬局の評価引き下げ

 保険薬局の収入を左右する2018年度調剤報酬改定の方向性が固まってきた。次期改定の改定率は、診療報酬本体が0.55%のプラス改定で決着したが、大型門前薬局の評価が引き下げられるため、実質的に調剤はマイナス改定となりそう。今回は、高齢化がピークに達する「2025年問題」に対応する診療報酬・介護報酬の同時改定となるが、大きな改革の波が押し寄せる中で調剤報酬は大きな引き下げを含めた厳しさ増す改定となる。

 具体的には、「かかりつけ薬剤師指導料」の算定を適切に進める一方で、お薬手帳を十分に活用できていない薬局の「薬剤服用歴管理指導料」を引き下げ、大型門前薬局についてもさらなる報酬の引き下げを行うことが適正化を行う方向性が示されている。

 さらに、調剤報酬をめぐっては、今年に入り保険請求の付け替えなど不正が相次ぎ発覚。政府の行政推進会議による行政事業レビューの議題に調剤技術料が取り上げられ、「引き下げの余地がある」と結論づけられたほか、財務省からも、かかりつけ薬局を評価しつつ、大型門前薬局だけでなく、中小の門前薬局やマンツーマン薬局にも問題意識が示された。加藤勝信厚生労働大臣も門前薬局の報酬引き下げを検討することを明言するなど、逆風が吹き荒れて外堀は埋められた格好となった。

 現段階で示されている論点は、かかりつけ薬剤師指導料の算定を適切に推進するため、かかりつけに同意する必要性を患者と薬剤師が双方で確認した上で、その内容を同意書に記載すること、同指導料を薬剤師1人当たり月100件以上算定している場合に調剤基本料の特例から復活できる規定を廃止すること。お薬手帳を十分に活用できていない薬局の薬剤服用歴管理指導料を引き下げるほか、大型門前薬局のさらなる報酬引き下げを行うとした。ただ、地方の医療資源が乏しく、特定の医療機関から処方箋が集中してしまう薬局の評価は、検討が必要と留保している。

 以前から問題視されてきた調剤料について、抜本的な見直しを求める声が相次いでおり、具体的な点数設定が注目される。



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