“患者さん第一”のCRAに 新日本科学PPD 川名真代さん

2018年1月1日 (月)

薬学生新聞

川名真代さん

 「新日本科学として内定を貰っていたのですが、その年の12月に人事担当者から『グローバル企業との合弁会社になります』と電話で連絡がきて驚きました」と笑顔で就職活動を振り返るのは、製薬企業の医薬品開発を支援する臨床開発受託機関(CRO)の新日本科学PPDに在籍する川名真代さん。国内CROの新日本科学と米PPDの合弁会社として2015年4月に誕生したのと同時に入社した、新日本科学PPDの第1期生だ。臨床試験の運営に携わるクリニカルリサーチアソシエイト(CRA)として活躍している。今年4月から4年目を迎える川名さんがCRAとして心がけていることは、医師と試験について話し合う際、ただ依頼者である製薬企業の代弁者になるのではなく、自らが“患者さん第一”の姿勢で試験に携わることだと強調する。「より高度なコミュニケーション能力が求められますが、医師との意見交換という貴重な体験ができて楽しいです」と仕事の醍醐味を語ってくれた。

依頼者と施設の調整役を担う

 CRAは、治験を担当している医師や薬剤師といった医療従事者とディスカッションを重ねながら、臨床試験が治験実施計画(プロトコール)に沿って違反なく行われているかを確認する「モニタリング」の役割を担う。川名さんはCRAとして、抗癌剤の国際共同治験を実施している東京、千葉、大阪、新潟にある4施設を担当し、そのうちの3施設は大学病院だ。

 訪問先の治験責任医師がキーオピニオンリーダー(KOL)と呼ばれる著名な教授であった場合でも、「CRAでないと普段の生活で滅多に会うことができない先生ともお話できるので楽しいです」と川名さんは動じない。「製薬企業のMRさんの場合は、KOLに自社の薬剤を使っていただくためにお願いする立場だと思いますが、まだ入社3年目の私が、長年医師を務めているスペシャリストに説明するという構図はCRA独特のものです」と語る。

 とはいえ、そう簡単に治験担当医師との円滑なコミュニケーションができるわけではない。依頼者である製薬企業のことばかり考え、患者を二の次に一方的に自分達の意見を押しつけていては、取り合ってもらえなくなる。患者を第一に考えて長年医療と向き合っている医師へ、まずは敬意を示すことが不可欠だ。さらにその一方で、依頼者が満足するモニタリング業務を全うしなければならず、CRAは依頼者と施設の「調整役」という難しい大役を任されることになる。

 川名さんも訪問先の医師と良好な関係を築けず、相手にもされなかったことで、「CRAなんか辞めてやる」と思ったこともあった。だが、その担当医師が患者を第一に考えているからこそ、川名さんの説明に納得していなかったのだと気づいた時、むしろその医師を尊敬するようになったという。

 「私も先生と同じように患者さんを第一に考えて薬を開発しよう。この先生と一緒にCRAを続けていこう」
そう決心してからは、川名さんが施設を訪問して医師に説明する際、「私は依頼者、先生とともに薬を待っている患者さんのために仕事をしています」という姿勢をもって、相手が納得するまで説明することを意識しているという。

 川名さんが臨床試験に携わる仕事に興味を持ったのは、薬学生の時の病院実習。実際に治験現場で働いているCRAと話す機会があり、自分に向いていると感じた。「説明会でいろいろな開発品に携わることができると聞きましたし、依頼者に加えて複数の医療機関とも関わることになるので、仕事の範囲が広いことも魅力でした」とCROの志望動機を語る。

 就職活動を始めた川名さんが、最初に参加した採用説明会が新日本科学(後の新日本科学PPD)だ。「説明している先輩たちの楽しそうな雰囲気を見て、何となく自分も来年ここにいるかもしれないと思いました」と最初の採用説明会で早くも運命的な出会い。「他の会社の説明会に行っても、同じようには思わなかったので、最初の説明会での直感を信じることにしました」と入社を決意した。

内資と外資の“いいとこ取り”

 同社の最大の特徴は、合弁会社としての内資と外資の“いいとこ取り”にある。受託した臨床試験で、グローバルのやり方をそのまま日本に適用させてしまうと、現場のCRAが依頼者側と治験実施施設側との板挟みとなり、疲弊してしまうケースが多いが、同社では新日本科学時代から長年蓄積してきた国内臨床試験のノウハウを活用し、国内の施設側のニーズにも対応した臨床試験を運営している。

 内資と外資のいいとこ取りは、サービス面だけでなく、社風にも反映されている。「入社後も、説明会のときのイメージと変わりませんでした。先輩はみんなフレンドリーで、上司にも言いたいことがあればディスカッションができる環境です」と話す。学生時代は比較的インドア派だった川名さんだが、CRAという職業柄、新幹線で各地域の医療機関を飛び回っているうちに旅行が趣味になったとのこと。「昨年のゴールデンウィークには同期とスペインに行きましたし、夏休みはシンガポール、先日は有給使って韓国に遊びに行きました。同期はみんな仲良しです」と仕事もプライベートも充実している様子だ。



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