【日本CRO協会】CRO業界の成長をアピール‐就職担当者向けに説明会

2018年1月1日 (月)

薬学生新聞

業界説明会

 日本CRO協会(JCROA)は昨年11月16日、大学のキャリアセンターや就職課担当者向けに業界説明会を開催した。CRO協会会員会社の総売上高が近年右肩上がりの中、2018年度の新卒入社予定者は全体で1022人。ついに4桁に到達する形となり、今年もさらに業界総出で新卒採用に注力する。田中尚副会長(イーピーエス社長)は、説明会冒頭のあいさつで、「われわれは今、製薬企業にとってタッグを組まないといけない必須のパートナーとなっている。CROが提案しないと医薬品の開発が進まない中で、われわれはさらに新しい人材を求めている」と述べ、優秀な学生の紹介を呼びかけた。

多種多様な業務を紹介

 CROとは、「コントラクト・リサーチ・オーガナゼーション」の頭文字で、製薬企業の医薬品開発や市販後の安全性調査を支援する機関を総称する。

 CRO協会の会員26社の16年総売上高は、前年比12.7%増の1723億円。近年最大の成長率を達成した。製薬企業が医薬品開発の効率化を目的に、開発業務をCROにアウトソースする流れが加速していることが背景にあり、17年も13%増の1957億円と2桁成長を見込む。同協会情報戦略CTリクルートチームリーダーの鳥居正太氏は、同説明会で講演し、「昨今で2桁成長を遂げている業界は非常に珍しいのではないか」と語った。

図:CROの成長

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 説明会では、CROの役割や製薬企業との関係、CROで活躍する多種多様な業務を紹介。鳥居氏は、「CROにたくさんのノウハウが蓄積されるようになり、われわれの存在感が増してきた。スペシャリストとして仕事ができるようになった結果、中立的な立場を保ちながら臨床試験に関わることができるようになった」とCROの存在意義を強調する。

 さらに個別の職種についても説明。臨床試験が適切に行われているかをモニタリングする「臨床開発モニター(CRA)」は、実際に医療機関を訪問し、医療従事者へのヒアリングを行う。症例報告書(CRF)と呼ばれる臨床試験に必要なデータを記載された重要な書類を、カルテと見比べながらチェックし、不備がなければ回収する。顧客である製薬企業のニーズに応える一方、医療従事者にはきめ細やかな説明で医療従事者を納得してもらう。まさに製薬企業と医療機関の“調整役”を担う職種だ。「薬剤の知識に加え、医師と会話していくだけのコミュニケーション能力が求められる」と鳥居氏。

 CRAが回収したCRFをデータとして整理していくのが、「データマネジメント(DM)」という職種だ。データといっても、アナログからデジタルまで様々な種類があり、データを解析するために様式を統一させなければならない。データの精度を上げるために、ヒトの目を通して、システムチェックを何度も繰り返す。非常に緻密な作業が求められる。

 DMによってチェックされたデータは、「統計解析」される。統計解析の担当者は、その薬剤の有効性や安全性が統計学的に認められるかを判定する。このポジションには、論理的な考え方、数学的な素養、生物学的な知識が求められる。

 発売された薬剤にもCROは携わる。限られた患者群を対象としていた臨床試験では発現しなかった副作用が生じる可能性もある。新たな有害事象が発生した場合は、「ファーマコビジランス(PV)」という職種が規制当局に報告しなければならない。癌領域など革新的な医薬品が承認されれば、副作用情報はさらに重要性を増すことになる。「PVは、業界全体で人材が必要となっている分野。新卒の皆様にも興味を持ってほしい」と訴えた。

 CROの新卒採用数は着実に拡大している。新卒採用を行った会員企業20社を対象としたアンケートで、18年の新卒入社予定者は、男性361人、女性661人の計1022人。男性35%、女性65%という男女比率は、エントリー数と内定数と共に、例年ほぼ変わらない。6年制薬学部卒は265人で、全体の22.7%を占める。また、修士・博士取得者が全体の37.8%に相当する386人となっている。薬学部か他学部か、または学部卒か修士・博士取得者かによって業務内容が変わることはない。

育児中の社員を支援

 一方、CRO協会は、会員企業の労働環境について、人事担当者と従業員を対象にアンケートを実施し、説明会で発表した。

 人事担当者へのアンケートは、従業員1000以上の大企業から100人以下の中小規模の企業まで含めた13社が回答。13社合計の従業員数は、9549人で、うち女性が4654人。その中の8社において、育児休業から復職した女性社員は100%であり、厚生労働省の調査結果と同様の結果が認められた。男性社員の育児休暇取得実績が8社で認められた。男性の育児参加は社会問題にもなっているが、業界全体で実績が出ているようだ。

 また、会員企業のCROを主な業務としている子どもを有する女性(ワーキングマザー)の従業員476人が回答したアンケートでは、「これからもCRO業界で働きたいですか?」との質問に対し、「今のまま定年まで働きたい」「今のまま働きたいが定年まではわからない」と答えた人の合計が85%となった。育児休暇に加え、時短勤務制度、フレックス制度を活用して復職を果たしているワーキングマザーが多く、名ばかりの制度ではなく、適切に運用されていることが明らかになった。



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