臨床試験のRBM対応を実践 エイツーヘルスケア 近藤秀宣さん

2018年1月1日 (月)

薬学生新聞


近藤秀宣さん

 医薬品開発で臨床試験のリスクに基づいて効果的かつ効率的に試験の品質を担保していくモニタリング手法「リスク・ベースド・モニタリング」(RBM)への対応が、製薬会社のニーズとして年々高まっている。近藤秀宣さんは、製薬会社の医薬品開発を支援する臨床試験受託機関(CRO)のエイツーヘルスケア(A2)で受託した臨床試験のRBM対応を検討したり、製薬企業向けのコンサルティングや研修を行うなど、RBMの“プロフェッショナル”として顧客のニーズに応えている。A2で臨床試験の運営に携わるクリニカルリサーチアソシエイト(CRA)のモニタリング業務を7年間経験し、近藤さんの会社への熱い要望により2016年度からはセントラルモニタリング部に配属。臨床試験のリスクを検討した上で、いかに効果的かつ効率的に臨床試験を進められるかを考え、顧客に提案することが近藤さんの主な役割だ。「自分で実際に立てたプランによって顧客が喜んだときに、仕事のやりがいを感じます。A2のRBMの検討内容はCROの中で一番だと自負していますし、国内外の学会等でもRBMについて頻繁に発表していますので、これからも引き続きリードしていきたいです」とプロとしての自信をのぞかせた。

CRO最大の魅力は様々な企業の考え学べる

 近藤さんが薬学部を目指したきっかけは、高校生のときに食品添加物についての本を読んだことで食品の安全性について興味を持ったことだ。添加物が大量に含まれた食品を食べ続けることは人体にとってどう影響があるのかという疑問から、化学物質と人体の両方を学ぶことができる薬学部を選んだ。「実は薬学生になるまで薬剤師という仕事を知らなかったのです。周りの薬学部の同期には薬剤師を目指している人が多かったので、入学当初は想像していた薬学部とのギャップを感じていました」と、薬学生としては異色だったようだ。

 その後、病院実習での体験が近藤さんの心を大きく動かすことになった。実習を通じて、治験責任医師と被験者の会話を直に聞いていた近藤さんは、「治験に参加できてよかった」と喜ぶ患者がいる一方で、治験に参加できずに今でも病気に苦しんでいる患者の声も耳に入っていた。当時は、海外で承認されている薬剤が日本では未承認で投与できない「ドラッグ・ラグ」が深刻な問題となっていた時代。本当に薬剤を必要としている患者に薬剤が届いていない現実を、医薬品開発の現場で目の当たりにした。「治験がもっと効率的に進んで、少しでも多くの患者さんが救えないものか」という想いがこみ上げてきたという。「現在RBMに携わる形で、まさに当時やりたかった仕事ができています」と夢を見事に実現している。

 臨床試験の効率化を考える上で、「色々な製薬企業の臨床試験の考え方を学ぶことができるのがCROの最大の魅力だと思います」と強調。「様々な考え方を経験することで、より効率的な手法を新たに考えることもできますし、多様な考え方を比較検討することで、どういう手法が日本の医療環境に適しているのかを考えることもできます」とCROのメリットを語る。

 近藤さんは、09年にA2に入社し、CRAを7年間経験した後に、16年からセントラルモニタリング部に配属。今年の4月で入社10年目を迎える。入社のきっかけは、大学で茶道部に在籍していた時の尊敬していた先輩がA2に入社したから。「実際にA2の面接を受けたときも、人事や社員の方と話す中で、先輩と同じように尊敬できる人が働いていると確信し、ここで働きたいと思いました」と就職活動を振り返る。

多くの職種と議論しリスクを特定

 RBMは、様々なリスクに応じて、臨床試験開始前にどのようにリスクを軽減できるかや、どれだけのリソースを割き、どのようなモニタリング手法が最適かを検討し、試験開始後にリスク内容や問題発生状況に応じてモニタリングを適切に変更していく新たな手法だ。RBMの導入については、欧米で先行して議論されてきたが、日本でも約3~4年前から製薬各社で積極的な検討や導入が図られており、CROがRBMに対応できるかどうかは、今後、製薬企業がどのCROに自社の臨床試験を委託するかの重要な選定基準となっていくと考えられている。

 A2のセントラルモニタリング部は、RBMに関わる全ての業務を担う専門部署で、近藤さんは14年に発足した同部署の前身であるリスク・ベースド勉強会の初期メンバーとして活躍している。米国で開催されたドラッグ・インフォメーション・アソシエーション(DIA)が主催する学会を訪問した際に、RBMについて盛んに議論が交わされており、帰国した近藤さんは真っ先に学会の様子を報告し、RBM検討の必要性を会社に伝えた。CRAの7年間の経験から、モニタリング業務のプロセスをもっと効率的に設計できるのではないかとの思いもあり、勉強会のメンバーに加わった。

 近藤さんの主な業務の一つとして、臨床試験のリスクの特定と評価を行い、モニタリングプランを作成する。どういう疾患でどういう薬剤を扱うのか、医療機関に依頼する実施手順の複雑さなど多種多様な要素に基づき、網羅的にリスクを特定および評価し、リスク対策を検討する。その際、CRAだけでなく、CRAが医療機関から取得したデータを不具合がないか確認するデータマネジメント(DM)担当、DMが確認したデータを解析する統計解析担当のほか、電子データ(EDC)を設計するシステム担当、当局への申請書類を確認する薬事担当など、臨床試験に携わる全ての職種でリスクについて議論をしないといけない。

 いろいろな職種の声に耳を傾け、プロジェクトを調整していくコミュニケ-ション能力や、医療機関でどういうリスクがあるかを捉えることができる鋭い目線を持つことが要求される。

 「もしRBMに興味を持っている学生がいれば、いろいろなところにアンテナを張って、医薬品だけでなく、世界が今後どうなっていくのかにも注目してほしいですね」と薬学生に訴える。

 近藤さんの学生時代はドラッグ・ラグの問題もあったが、現在はほぼ解消されており、CROを取り巻く医療環境はここ数年で目まぐるしく変化している。「今後CROが生き残っていく上でCRAだけ、DMだけできればいいと考える人材は必要とされなくなるのではと強く感じます。そのような中でも、将来自分が何をしたいか、どういう経験を積めばいいのかを考えられる人であれば、CROの仕事が楽しくなると思います」とエールを送った。



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