スムーズな治験の進行支える‐薬剤師CRCとして知識生かす 日本SMO協会 CRC 森本裕美さん

2018年3月1日 (木)

薬学生新聞


医療スタッフと打ち合わせする森本さん(中央)

医療スタッフと打ち合わせする森本さん(中央)

 新しい医薬品の承認に必要不可欠な臨床試験。複雑な手続きを踏みながら進行していくが、スムーズな治験の進行には、被験者や様々な職種の医療従事者と円滑にコミュニケーションを取りながら、臨床試験を支援する治験コーディネーター(CRC)の存在が大きなカギを握る。「薬剤の作用機序や副作用について、治験担当医師と深いディスカッションができるのが、薬学の知識を持つ薬剤師CRCの強みだと思います。患者さんに臨床試験を紹介するときも、治験薬と既存薬の違い、治験を行う目的などを掘り下げて説明することができるので、説得力が増します」と話すのは、薬剤師資格を有し、治験実施支援機関(SMO)でCRCとして働く森本裕美さん。今回は日本SMO協会(JASMO)を代表して、仕事のやりがいを語ってもらった。

 森本さんの志望は、もともとは研究職だった。高校生の時に生物部に所属していた森本さんは、部の活動で植物の細胞や薬剤が含まれた培地を用いた実験を行っているうちに、薬学に興味を覚えるようになった。その後は北里大学薬学部に進学し、培養した微生物から化合物を探索する研究に携わり、修士課程まで進んだ。

 就職活動時には専門分野である微生物を扱う製薬会社の研究職を志望したが、あまりにも狭き門で叶わなかった。「それでも、医薬品の研究開発に携わりたいと思い、医薬品の安定性試験を受託する会社に就職し、5年間、分析業務に携わりました」と振り返る。

 研究職志望だった森本さんがCRCに興味を持ち始めたのは、転職活動のとき。「職種の幅を広げてみようと思い、SMOにエントリーしました。安定性試験の分析業務を行っていたときには、患者さんの姿は見えていませんでしたが、CRCから話しを聞くうちに、実際に医療現場でどのように薬の開発が進められるのかを見てみたいと思うようになりました」とSMOへの中途入社を決めた。今年4月でCRCとして8年目を迎える。

医療者との連携に奔走

 森本さんが担当する医療機関では、抗精神病薬の第I相試験が現在進行している。被験者に加え、医師、看護師など様々な医療者に治験の説明を行い、依頼者である製薬会社から用意された治験実施計画書(プロトコル)に沿って臨床試験を進行させるのがCRCの仕事だ。「治験の全スケジュールが滞りなく進むようにセッティングします」と説明する。

 CRCは、担当の医療機関に直接出勤し、SMOのオフィスには寄らずに直接帰宅することが多い。被験者が朝9時に治験薬を服用する予定であれば、森本さんは9時前には担当施設に出勤し、看護師から被験者の状況を聞き、治験薬の服用が可能かどうかを確認する。血圧測定、心電図検査、採血など、プロトコルで細かく規定されたスケジュールを各医療者に伝え、医師に治験薬を処方してもらう。薬剤部で調剤された治験薬については、自らの目でダブルチェックを行う。「われわれCRCが直接行うことだけでなく、各々の医療者に依頼して実施してもらうことが多くあります。治験を受ける患者さんに関わる全ての人の調整を行わなければなりません」と森本さん。医局、薬剤部、検査部、病棟と、施設中を奔走する。

 一連の対応が終わった後は、治験で得られたデータをワークシートに記入し、PCに入力する。また、治験が適切に実施されているかをモニタリングするCRAが訪問した時にはワークシートをCRAに確認してもらう。さらに、翌日の治験対応のために必要なものを準備し、予定をリストアップする。メールのチェックも怠らない。

 「自分がコーディネートした試験が予定通りに進行して1日を終えた時には、日々のやりがいを感じています。治験担当医師をはじめ、関わる医療者は全て、通常の業務を行いながら治験を行っています。忙しい中でもCRCの要望を受け入れてくれて、治験を進行させるための一つのチームのような雰囲気が作れたときには、CRCとしての充実感と達成感があります」と仕事の魅力を強調する。

患者との接し方が腕の見せどころ

 医療従事者との連携も大事だが、患者との接し方も「CRCの腕の見せどころ」と森本さん。CRCが患者と関わる前に、まず医師に今回の治験はどのような状態の患者に向いているかを事細かに説明し理解を得る。その上で該当する患者を探してもらい、医師が該当患者に治験参加を提案する。

 そこでCRCの出番となる。だが、「治験は、怖いイメージに加え、外来患者の場合、スケジュール通りに受診し治験に参加することが面倒と感じるなどネガティブな要素が多くあります。それらを払拭しつつ、メリットとデメリットを的確に伝えることは容易ではありません」と一筋縄ではいかない様子を語る。治験薬はどういうものなのか、既存薬と治験薬の副作用の違い、治験のスケジュール、途中で辞退したくなったらいつでも辞められること、治験への参加が社会貢献になるということなどを丁寧に説明する。「特に私が担当する精神疾患の場合、集中力が維持できなかったり、恐怖心が強い患者さんが多くいらっしゃいます。患者さんの状況に合わせた説明が求められ、いろいろと工夫が必要です」と試行錯誤を重ねている様子を語る。

 就職活動中の薬学生に対しては、自身の就活体験を踏まえ、「志望職種を考える時には、視野を広く持ってほしい」と訴える。「私は新卒の時は、自分の研究分野に固執して、狭き門ばかり狙っていましたが、後々になってそうでない道もあると気がつきました。私がCRCに対してそうであったように、自分の範疇にない分野でも、現場で働く人の話を聞くことで興味を持つことがあります」と森本さん。納得できる就職活動ができるよう、エールを送る。



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