【SRDグループ】新卒からリーダーに

2018年3月1日 (木)

薬学生新聞


縁あってモニターの道へ‐リーダーとして奮闘

エスアールディ 佐々木 陽介さん

佐々木陽介さん

 最初は研究者志望だったけど、入社試験は全敗でした――。笑顔でそう語るのは、CRO「エスアールディ」の臨床開発部係長の佐々木陽介さん。研究者をあきらめ、医薬品開発にかかわる臨床開発モニターでプロフェッショナルになることを決意。医師や治験コーディネーター、チームの先輩モニターたちの助けもあり、地道に努力を続けた結果、モニターとして成長を遂げ、現在はリーダーとして後輩モニターを管理する。「モニターは自分が望んだ道ではなかったけど、やってきた道に間違いはなかった。後輩たちにもモニターを続けて良かったと実感させてあげたい」。信頼されるリーダーに向けて、今日も全力疾走だ。

 新しい薬を世に生み出す、そんな夢を叶えるため、大学薬学部に入り、薬剤師国家試験で薬剤師免許を取得、大学院修士課程へと進んだ佐々木さん。しかし、現実はそんなに甘くなかった。大学院1年秋から就職活動を始めたが、製薬・食品・化粧品といった業種の研究職を100社程度応募したが、狭き門を越えることができず全敗となった。研究者になるのは「難しい」と判断し、新たな道を検討したときに、浮上したのがCROのモニター職だった。

 ただ、CROという業界が今ほど大きくなかった当時、大学院生の就職先としてさほど人気ではなかった。正直なところ、佐々木さんも「あまりいいイメージを持っていなかった」と打ち明ける。いくつかのCROで採用面接を受けると、研究者職の就職活動とは一転して、「あなたのことが欲しい」「高く評価している」。全ての応募企業から誘われた。

 本来であれば嬉しいはずの評価だが、それほどポジティブにはなれなかった。「ずっと断られ続けていたので、なんとなく自分が大学院生だから欲しいのではないかと」。自分への評価に悩んでいた頃、エスアールディの最終面接で、社長から人生や仕事に対する考え方で修正していく必要性を指摘された。「自分という人間の駄目な部分を含めて評価されているのが、逆に嬉しかった」と入社を決めた。

「毎日やり切る」‐仕事への姿勢学ぶ

 入社後配属されたのは、社内でも最も厳しいチーム。「成長した実感もなく、チームの同僚にもついていけなかった」と振り返る。そんな中で学んだ大事なことは、「毎日を一生懸命やり切る」という仕事への姿勢だ。

 入社3年目で転機が訪れる。仕事のパフォーマンスが上がらず、先輩に同行してモニターとして何が必要なのかを学ぶOJTの機会を与えられ、スキルを積むことになった。通常であればモニターの交通費などは依頼者である製薬企業が負担するが、OJTはあくまで研修であるため、佐々木さんにかかった費用は全て会社が負担する。

 「自分が仕事をできないと会社に迷惑をかけてしまう、それを痛感したのと、自分に対してそれだけの投資をしてくれているという感謝の気持ちが芽生えた」。自分が頑張らなくてはという意識の変革が佐々木さんを成長させた。OJTでの4カ月間は、先輩モニターの仕事の進め方や治験実施医師とのやり取りを間近に見ることができ、自分が何をやらなくてはならないのかを再認識できた期間となった。それ以後の自分について、「劇的に変わった。平均以上の仕事ができる自信がついた」と大きな収穫を得た。

 モニターは、「医学的根拠に基づいて、医師とも対等に話をしないといけない」と佐々木さん。医師や製薬企業の下請けではなく、プロセスに忠実に仕事をするだけでもなく、その工程が正しく行われているかを立ち止まってやる仕事だと認識した。そして最も嬉しかった経験は、7~8年目のころ、自分が患者として受診した病院で、最初の仕事で携わった薬を処方されたこと。「この仕事で間違っていなかったと実感した」と振り返る。

応援、賞賛し、後輩と一緒に成長

 現在はチームのリーダーとして、後輩モニターが担当する医療機関に同行し、医師とコミュニケーションが取れているか、問題点がないかを確認する。また、依頼者である製薬企業に状況を報告し、次にどういった対応を取るべきかを話し合い、決定している。

 佐々木さんは、「管轄している施設が増えて、細かな部分まで把握するのが難しいのが大変」と語る一方で、「主役は自分ではなくモニター。リーダーはサポート役に徹し、状況を切り開いてもらうようにしている」と役割を意識する。そこで後輩モニターが問題を解決し、難局を乗り越えた時には、「応援し賞賛をし、“やれたな”という言葉をかけるようにしている」と一緒に成長していくことが、働く喜びだ。

 「研究職を目指し、多くの会社を応募したけどうまくいかなったことで折り合いがついた。うまくいかなくなった時でもそこで投げ出さなかったのは、就職活動をきちんとやったから。もっと就職活動をやっていれば良かったなという思いがあれば、この仕事を辞めてしまったかもしれない」。“やり切る”大切さを後輩たちに伝える。

 薬学生の職探しについては、「薬に対する専門知識を持つスペシャリストという見方もできるが、専門性だけではなく汎用性もある」とアドバイスを送る。その中で臨床開発業務は「医療と研究の両面を見られるやりがいのある仕事であり、毎日状況が変わり、新しい仕事ができる」と太鼓判を押す。

 エスアールディはCROの規模として大きくないが、社員間の関係性は深く、入社後から仕事を任せてもらえるのが強みだ。佐々木さんも「モニターとして達成感ややりがいを経験させてもらった。これからはこの人といっしょに仕事をやって良かったと思ってもらえるようになり、世の中に患者さんの病気を治す、苦しみを取り除くような薬を出せるようになりたい」と成長を誓う。

“患者視点”を持つCRCに‐被験者候補者へ丁寧に説明

医療システム研究所 山本 宏枝さん

左は担当している医療機関の治験責任医師、右は山本さん

左は担当している医療機関の治験責任医師、右は山本さん

 エスアールディグループのSMO「医療システム研究所」で治験支援部主任を務める山本宏枝さんは、薬剤師免許を武器に治験実施医療機関を支援する治験コーディネーター(CRC)のキャリアを歩んできた。治験に参加する被験者を集めるリクルート業務では、医薬品開発で重要度が高まる“患者視点”を学んできた。治験を実施する医師の考え方を理解し、実薬ではなく偽薬(プラセボ)に組み入れられた場合でも、納得して治験に参加してもらうためにどう説明すれば良いかを自問自答してきた。今後は、これまで培ってきた経験を組織づくりに生かしていくのが目標だ。医薬品開発におけるCRCの存在意義を痛感する日々において、子どもを持つ母になり、仕事の場面でも「後輩CRCがもっと働きやすい会社にしたい」という親心が芽生えてきた。

患者からの手紙、心の支えに

 山本さんがCRCを選んだのは、患者のために仕事がしたいという強い思いが出発点だ。大学薬学部に在籍していた頃、薬剤師の病院や調剤薬局で長期実習を経験し、病院薬剤師や薬局薬剤師、医薬品卸の管理薬剤師業務に関しても見学し、自分が将来、働く場所を幅広い視点から探してきた。

 なかなか山本さんがイメージする患者志向の医療職種が見つからない中、患者や医療従事者とコミュニケーションを取りながら、医薬品開発業務を行うCRCを知り、挑戦してみたくなった。CRCを病院に派遣するSMOを中心に、規模感や条件面などから選んだ会社が医療システム研究所だった。

 医薬品開発の現場に入り最初に感じたことは、医薬品が承認されるために多くの患者が治験に参加しているという事実。中でも苦労したのが、被験者候補者一人ひとりに治験を説明し、参加同意を取っていく被験者リクルート業務だ。決められた手順があるにせよ、プロトコルに合致した被験者を見つけるという仕事は難易度が高く、CRCとしての経験値が試された。治験依頼者の製薬企業も同業他社と同じメカニズムを持つ薬剤で開発を競い合っており、決められたスケジュール内に、目標被験者数を達成するのは並大抵ではなかった。

 さらに、医薬品候補となる開発薬の有効性や安全性を検討するためには、新薬候補群とプラセボ群の比較が必要になるのが治験のルールだ。新たな治療を求めて治験に参加する患者のうち、一定数はプラセボに組み入れられるが、治験に対する知識の浅い患者にプラセボを説明するのが難しい。マニュアルに沿った説明だと、「自分は参加したくない」と言われてしまう。

 山本さんは、患者一人ひとりの状況から、説明の仕方を変えながら、納得して治験に参加してもらえるよう自分なりに工夫してきた。プラセボの説明を行う際には、なぜ治験にプラセボが必要なのか、そしてプラセボに割り付けられた後、治験がどう進んでいくのかを伝え、被験者候補者の反応を観察するようにしている。こうした説明を行うと、「参加を拒否する」もしくは「納得して参加する」という意思決定に分かれるそうだが、判断に迷うようなら、「治験を辞めたくなったらいつでも辞めていいですよ」という言葉だけは忘れないようにしている。

 忘れられない被験者がいる。入社1年目に担当した前立腺肥大症を対象とした治験。疾患の特性上、多くの高齢者が参加する中、運悪くプラセボに割り付けられた1人の被験者から、治験終了後、山本さん宛に一通の葉書が届いた。裏面には、「治験に参加して楽しかったです」という山本さんの対応に感謝する気持ちと、「明るいキャラクターでこれからもがんばって下さい」という励ましのメッセージが一緒に添えられていた。

 患者とのコミュニケーションで何が正解か分からぬまま、試行錯誤の毎日だったが、「患者さんからの温かいメッセージを見て、自分の説明や日々の対応がうまくいっていたことを確かめることができた」。CRCを続ける大きなモチベーションになっている。

仕事と家庭両立‐働きやすい環境を

 被験者を含む治験にかかわるステークホルダーが規制や手順に逸脱なく正しく行動した結果、治験がスムーズに進み、きちんとしたデータを収集するのが達成感だ。「ごく当たり前の話だけど、これが難しい」と話す山本さん。被験者から「治験薬が承認されて医薬品になった時には、製品名を教えて」と頼まれることもある。そんなときは、担当医療機関に通院する患者であれば、カルテに付箋を付けて、「医薬品が承認されました。患者さんに○○という薬とお伝え下さい」と、医師を通じて新薬が生まれた事実をいち早く伝えるようにしている。一刻も早く新薬を社会に届けたい思いは、医師もCRCも患者も同じ。「治験に参加して良かったと思える患者さんを増やしていきたい」。患者のために、CRCとしてできることがあると分かった。

 現在は、2児の母として若きCRCを指導する立場になった。家庭との両立の中で、限られた時間で効率的に働くことを重要視している。個人の目標から組織づくりに意識が変わった。やりがいは?と聞くと、「後輩が可愛くて仕方がない」と顔をほころばせ、後輩CRCが働きやすい環境づくりに全力を注いでいる。特に医療システム研究所は他のSMOに比べても抜群のチームワークを持ち、若い人材が生き生きと仕事に打ち込める。

 薬剤師免許保有者がCRCになる例はまだ少ないだけに、薬学生の就職先としての可能性は広がっている。「新規作用機序の開発薬剤が登場し、驚きや感動を味わうことができる。薬に興味がある医師も多く、薬学知識を武器にコミュニケーションを深められるのはアドバンテージになる」。薬学の仲間の挑戦を心待ちにしている。



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