【これから『薬』の話をしよう】薬剤効果の価値認識

2018年5月1日 (火)

薬学生新聞


医療法人徳仁会中野病院薬局
青島 周一

青島周一氏

 みなさん、こんにちは。これまで薬の効果について、相対危険減少や絶対危険減少、治療必要数という指標をご紹介し、その中で薬剤効果の曖昧性や不平等性について考察してきました。今回は、薬の効果は絶対的なものではなく、患者さんの立場や状況によって変動し得ることをお話します。

 “薬の効果がある”というと、そんな効果が薬の中に実在するような気もしますが、そうではありません。効果が「ある」とは、意味が「ある」とか、価値が「ある」というような「ある」に近いものです。手のひらに乗せて直接眺めることができる実在物ではなく、その都度、それぞれの人の頭の中で認識されていくものと言えます。

 例えば、ここに90%の確率で確実に病気を治す薬があったとします。でも10%の確率で死んでしまう副作用もあります。あなたは風邪をひいたとき、この薬を飲みたいと思いますか?90%は確実に治るけど10%は死んでしまう薬ですから、風邪やインフルエンザくらいでこの薬を飲もうと考える人は少ないと思います。糖尿病だったらどうでしょう?やはり飲まない人の方が多いのではないかと思います。

 では、脳卒中で寝たきりになってしまったらどうでしょうか。寝たきりが治るのなら90%に賭けてみたい気もします。末期がんで余命1カ月だったら飲みますか?余命1カ月なら90%という数値は大きな希望となるでしょう。同じ薬剤効果であっても患者さんの置かれている立場や状況によって、その認識は様々であることがお分かりいただけるかと思います。

 薬剤効果の曖昧性や不平等性なんて言うと「結局のところ薬の効果をどう解釈すればいいの?」と分からなくなってしまうかもしれません。しかし、ここまで考えてきたように立場や状況によって薬剤効果の認識が変化するのであれば、エビデンスに示された薬剤効果をどう解釈するかという視点ではなく、個々の立場や状況を踏まえてエビデンスをどのように活用するか、ということの方に目を向けるべきなのです。

 次回はエビデンスの使い方に関する一つの方法論についてお話ししたいと思います。



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