【これから『薬』の話をしよう】EBMへの誤解

2018年7月1日 (日)

薬学生新聞


医療法人徳仁会中野病院薬局
青島 周一

青島周一氏

 臨床の現場で仕事をしていると様々な疑問に遭遇しますが、大学で学んできた知識だけでは、どうにも解決が難しい疑問も少なくありません。

 臨床で遭遇する疑問は、背景疑問と前景疑問という二つのタイプに分けることができます。

 背景疑問とは例えば、降圧薬のアムロジピンがどのようなメカニズムで血圧を下げるのか、という薬理作用に関する疑問や、どのようにして血糖値が上がるのかという病態生理学に関する疑問のことです。背景疑問は、自分が知らないだけで、既に分かっていることに対する疑問であり、教科書などを参照に解決できます。

 しかし、目の前の高血圧患者さんがアムロジピンを服用することでどれだけ長生きできるのかという疑問は、薬理学や病態生理学の教科書だけではなかなか解決できません。このように将来起こり得ることに関する患者個別の疑問を前景疑問と呼びます。背景疑問と異なり、明確な答えが存在しているわけではないので、そう簡単には解決できない、というわけです。

 こうした前景疑問に向き合うための方法論の一つがEBM(Evidence-based Medicine:根拠に基づく医療)と呼ばれる行動スタイルです。EBMは[1]疑問点の明確化[2]疑問についてのエビデンス収集[3]エビデンスの批判的吟味[4]エビデンスの患者への適用を検討[5]一連の流れの再評価――という五つのステップで成り立っています。

 EBMに対する誤解として、よく耳にするのがステップ[4]への誤解です。“根拠に基づく医療”というと、患者の価値観や想いなどをまるで考慮せず、医学的な妥当性だけで臨床判断する行為(つまりエビデンスの押しつけ)と捉えられてしまうことも多いのです。

 しかし、EBMのステップ[4]は、エビデンスのみならず、患者さんの価値観、患者さんを取り巻く状況、さらに医療者の経験を統合して臨床判断を行うものです(PMID:12052789)。「EBM=エビデンス」という誤解もよく耳にしますが、EBMとはエビデンスそのものではありません。エビデンスの使い方に関する方法論なのです。



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