日本CRO協会(JCROA)は昨年11月19日、就職活動中の大学生向けに業界説明会を開催した。例年、大学のキャリアセンターや就職課担当者向けに説明会を行ってきたが、今回は新たな試みとして学生に直接業界の魅力をアピールすることで、さらに本腰を入れて優秀な新卒人材の獲得を狙う。植松尚会長はあいさつで、「昨今は治験そのものが非常に難しく、専門性が必要とされるようになった。臨床試験のオペレーションの面でも、製薬会社からCROに専門性が移行しており、今やCROは医薬品開発になくてはならない存在になってきた」と業界の魅力を説明。再生医療製品などの医薬品の多様化に加え、IT化、グローバル化と業界をめぐる環境が今後さらに変化する中で、「臨床試験のプロセスの専門家として、われわれのニーズはますます高くなるのではないか。これからますます若い人たちの力が必要になってくる」と学生にエールを送った。
業務を通じ社会に貢献
CRO協会の会員32社の17年総売上は、新規に加盟した6社も含めて、11.7%増の1925億円。既存26社の合計でも8.1%増となった。13年以降、右肩上がりが続いており、CRO業界の成長と共に、新卒採用のニーズも年々高まっている。18年は2000億円を超えると見込んでおり、今後も成長が続くと見られている。
新卒内定者を学科別で見ると、3割以上が薬学系出身者で占める。その他の学科でも理工学系、農学系、生命化学系など幅広く採用している。
説明会では、医薬品開発のプロセスや業界の現状と動向、臨床試験を取り巻く環境について説明があり、さらに個別の職種についての紹介があった。医薬品開発の各プロセスで、治験が適正に行われているかを確認し、データを回収するモニタリング、モニターが回収したデータをもとにデータを集めるデータマネジメント、安全性に関する情報を収集するファーマコビジランス、治験データの信頼性を確保する品質管理、生物統計手法を用いて、治験薬の効果を証明する統計解析の各業務、治験に関わるデータの電子化を担当するシステム開発、被験者の登録、治験薬の割付を実施する登録センター業務、薬事業務についての紹介もあった。
CROで働くことで得られることについて、社会・医療へ貢献できることを強調。どのような仕事であっても社会貢献につながっている。医療は人が生活する上で欠かすことができないものであり、高齢化社会で医療へのニーズがますます高まる中で、CROの業務は社会貢献度が高い業務になる。幅広い疾患領域における知識経験の蓄積や、医薬品開発プロセス全体にキャリアを広げるチャンス、国際共同治験に携わることでグローバル人材として成長できることがCROの魅力という。
先輩社員が魅力伝える
説明会に続き、各社のブースに分かれ、実際にCROで働いている先輩社員が学生とテーブルを囲んで、日々の業務について現場目線で説明した。学生からは「モニターのやりがいは何ですか」といった質問が飛び交い、担当者からは「新薬を世に送り出すために、自分の知識や経験をチームにどのように還元していくかを考えることが、やりがいにつながっています」と説明があった。中には、「今の会社でここは直した方がいいと思うところはありますか」と難しい質問もあったが、「われわれはグローバル企業なので、日本だけで意思決定できないもどかしさ、物事を動かすことの難しさはあります」と率直に回答していた。
説明会後、薬学生からは、「とてもためになった」「私たち一人ひとりの質問に丁寧に答えていただいて満足しました」といった声を聞くことができた。「具体的な採用人数を知りたかった」「もっと座席数を増やしてほしかった」といった素直な意見もあったが、高評価な意見が目立ち、今後の就職活動に向けて有意義な時間を過ごせたようだ。