わたしの「1日」~業界の先輩に聞く~ 大日本住友製薬東京支店 文屋隆之さん

2019年1月1日 (火)

薬学生新聞


MR活動の基盤は信頼関係

文屋隆之さん

 大日本住友製薬で精神神経領域の専任MRとして活躍している文屋隆之さんは、同社で働き始めて5年目を迎えた。2013年3月に明治薬科大学を卒業後、同年4月に入社。現在東京支店にて、新宿区の大学病院と、渋谷区の神経内科、精神科を専門とするクリニックを担当している。「MRを取り巻く環境は常に変化している。MRだからこそできる価値ある情報を提供し、医師と信頼関係を構築するためにも、日々の勉強は欠かせない」と語る。

 担当医薬品は、神経内科領域では、パーキンソン病とレビー小体型認知症に伴うパーキンソニズムの2領域。精神科領域は、統合失調症とうつ病の二つの疾患が中心だ。

文屋さんの1日

 とある1日。文屋さんは、午前9時に出社後、会議・打ち合わせ等の各種内勤業務を午前11時30分に終えると、新宿区の大学病院で医師を相手に担当する医薬品に関する情報提供を行う。

 正午に脳神経内科医師30人に対して、自社医薬品である抗パーキンソン病薬の新規適応症に関するプレゼンテーションを実施。内容は、疾患ガイドラインに基づいた治療指針と自社医薬品の安全性と有効性に関するデータの紹介だ。

会社内でもプレゼンのトレーニングを積む

会社内でもプレゼンのトレーニングを積む

 文屋さんが担当する訪問先には、厳格な訪問ルールが定められ、大学病院の場合は、事前に面会日時の承諾を得る完全アポイント制であり、さらに時間帯も厳しく指定されている。また、製薬企業からの情報提供は、医師から求められた時のみに制限されている。「だからこそ、1回の機会を最大限に生かすために、事前の準備が非常に重要だ」と文屋さんは言う。

 午後1時30分、2軒のメンタルクリニックを訪問するため、すぐに渋谷区へ。面談内容は、自社医薬品の情報提供、渋谷区の近隣施設で収集した情報についての共有、精神科領域における最近の話題、直近の学会についてなど様々だ。特に医師の悩みに耳を傾けることもMRの重要な役割だ。

 午後3時、面談を終えた文屋さんは、遅めの昼食をとる。MRのスケジュールは、日によって異なる。この日は、午後4時にもう1軒のクリニックの面談予定を控えている。医師とのコミュニケーションを通じて関係を構築していく必要があるため、できるだけ多くの医師と面会することを心がけている。面談時間は医師の事情により様々であり、立ち話のこともあれば、30分以上話し込むケースもある。限られた時間の中で面談を行うからこそ、MRには情報提供の質が求められている。

 この日は、午後5時にあらかじめアポイントをとっていた精神科医と面談を行うために、再び大学病院へ。自社医薬品に関連した講演会についての打ち合わせや、他大学、近隣病院での最新情報を共有。1日の全てのスケジュールを消化し、午後7時には帰宅した。

 MRとして活動してきた5年間で、どうすれば医師をはじめとする医療従事者からの信頼を獲得できるかを考え、行動し、経験の中で情報提供のスキルとなる基礎を身につけてきた文屋さん。顧客である医療機関の立場に立ち、相手のニーズを理解した上で、製薬企業や病院、医師、患者がウィン・ウィンの関係になるための提案が大切だと気付かされた経験がある。

 13年10月から16年12月までの3年間、文屋さんは秋田県大仙市仙北地区エリアのMRとして活動していた。

 ある病院で自社製品を新規採用してもらうために、粘り強く活動し3度の申請を行ったが、成果は実ることなく、全て却下されてしまった。薬剤部長から「製薬企業の都合に先生方を巻き込むな」と指摘を受けた。

 「先生や病院に対して何も貢献せず、信頼関係を作ることもなく、自分本位で活動してしまった」と自分自身の活動を振り返る。情報提供活動が、十分なコミュニケーションがないまま行われ、製薬企業の目線に偏り過ぎてしまった結果、新規採用に結びつかなかったと反省した。

 それ以降は、院長を含めた病院の医師に対して、自社製品にこだわらず、広い視点から病院にとってのメリット、医師にとってのメリット、ひいては患者にとってのメリットまでを説明した。

 その活動を1年間継続して行った結果、ある日文屋さんのもとに1本の電話が鳴る。これまで3度申請を行い、却下された病院から新薬を採用したいとの申請が届いているとの内容だった。院長に採用してもらったお礼と、その判断に至った詳細を確認すると、「病院を良くするために活動してくれていたことをずっと見ていた」。文屋さんが病院との信頼関係を構築できたと実感できた瞬間であった。

 今後は、「ルールの範囲内で、情報の提供・収集以外でも何かできることを模索したい」と文屋さん。地元である東北への思いも馳せ、将来はマネジメント職として活躍するキャリアプランも披露した。「MRに求められる新しい人材像にマッチしたMRの育成と、マネジメントを行い、より多くの人々に喜んでもらえる仕事をし、出身地である仙台、東北に還元したい」と成長を誓った。



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