調剤から在宅まで幅広く担当
クスリの龍生堂薬局大久保店で在宅訪問から調剤業務、OTC医薬品の相談など、幅広く業務をこなす佐藤潤さんは入社して2年目の薬剤師。同じ職場で長く働きたいと考えていた佐藤さんは、就職先を病院か薬局で迷っていた時期に実習で訪れた同薬局で、インターンや見学では見られなかった薬局の内部を知り、自分に合った環境で長く働けると判断して就職を決めた。
クスリの龍生堂薬局は、新宿区を中心に31店舗を展開している。店舗ごとにベテランの薬剤師を配置することで、新しい情報以外にも業務に関する背景や過去の知識などを深掘りして学ぶことができる。
健康サポート薬局でもある同薬局は、コリアタウンと呼ばれる地域にあるため、患者や顧客の半数以上を外国人が占めている。翻訳機器を用いながら対応し、薬の相談も受けるという。患者の中には、自分の後ろに並んでいる人がいないことを確認してから、「相談してもいい?」と気を遣ってくれることもあり、「全然関係なく相談してほしいです」と笑顔で話す。
そんな佐藤さんは子供の頃から喘息にかかっていたため、薬局に来る機会が多く、薬への親しみもあったことから薬学部への進学を決意。大学を卒業後に入社し、本人の希望もあって実習先でもあった同薬局に配属された。
入社1年目は調剤業務を担当する傍ら、大学ではあまり触れてこなかったOTC医薬品について、製品や成分の違いなどを学んだ。また、インターンで訪れた学生に対して講師を務めるなど幅広い業務をこなし、即戦力として頭角を現した。
2年目を迎えた現在は、在宅訪問も担当するほか、店舗の新人研修で指導するなど、管理薬剤師に次いでナンバー2として活躍。あだ名で「リーダー」と呼ばれるほど同期からの信頼も厚い。
一方、入社した当初は、不安や戸惑いがあったという。それは調剤業務における責任の重さだ。実習では、ピッキングした後に必ず薬剤師が確認をしてから服薬指導をしていた。だが、就職してからはそれらがなくなり鑑査やピッキングを間違えるとそのまま患者の手に渡ってしまうため「業務一つひとつの重みが変わった」と振り返る。当時の支えになったのは「何かあればすぐに来いよ、何でも聞いてくれ」と声をかけてくれたベテラン薬剤師達の存在だった。その支えもあり現在は安心して業務に取り組んでいる。
佐藤さんの1日は、10時から始まる。12時までは医師からの処方箋調剤、OTC医薬品の販売や患者からの相談を受けつつ、その日に訪問する患者の処方箋をもとに、在宅訪問の準備にとりかかる。1時間の昼休憩を挟み、13時から16時は再び処方箋調剤を行う。16時から17時半までは在宅訪問。佐藤さんは個人宅を担当しており自転車で移動している。店舗に戻ったら18時までは、報告書の作成。訪問内容や患者の状態、残っている薬の量などを同じ在宅医療チームの医師やケアマネージャーに報告する。18時からは、調剤業務のほかに予製の用意や他の薬剤師が在宅訪問している施設の準備を行い、19時に1日の業務を終える。
「自分がやらないと業務が回らない立ち位置になってきている」という佐藤さんは、患者からの「ありがとう」という言葉が仕事のやりがいになっている。入社当初は「新人の男の子」という認識をされていたが、患者の相談に乗るうちに「佐藤さんいる?」と名前で呼ばれるようになり「薬剤師としてできる限りのことはやりたいと思っていて、次来た時に少しでも良くなっていてもらえれば良い」と語る。
さらに佐藤さんは、在宅医療についての知識を深めたり、新規の外来患者への対応を学びたいと意欲を示す一方で、地域の健康意識にも目を向けている。同薬局では月に1度、健康イベントに取り組んでいる。その中で、一人暮らしの人を対象にイベントを実施したところ、参加者の9割以上が女性だった。現在、一人暮らしの男性が参加できるような方法を話し合っているという。
佐藤さんは「来た人にしか健康情報を伝えられないし、相談ができない」と訴えた上で、「健康状態を知ってもらい意識を高めることは、薬局がやらなければいけないこと」と、薬局のあり方についての認識を示す。
薬学生に向けては「就職する時に、自分の最低限の条件があると思うので、全て条件をクリアした職場に就職してもらいたい。妥協すると、嫌なことや物足りなさがあったときに退職してしまうと思う。転職して前の職場の知識が生かせる訳ではなく、100の知識があっても20、30しか使えないと思う。それならゼロからスタートして最後まで走り抜いてほしい」とアドバイスする。