わたしの「1日」~業界の先輩に聞く~ 府中病院薬剤部 竹内祐介さん

2020年1月1日 (水)

薬学生新聞

毎日の研鑽、自身に課す

竹内祐介さん

 府中病院(大阪府和泉市、380床)の薬剤部で働く竹内祐介さん。働き始めてから8年目を迎えた現在、病棟担当や抗菌薬適正使用支援チーム(AST)のメンバーの1人として活躍している。入職当初に実感した知識不足を解消しようと、通勤時間や様々な隙間時間には文献や関連雑誌に目を通し、研鑽を積むことを自身に課してきた。その成果で近年は、多職種や同僚の様々な相談に応じる機会が増えたという。

竹内さんの1日

 11月のある日。竹内さんはいつも通り8時20分に出勤。始業までの約20分間の隙間時間を使って文献を読み、関連雑誌に目を通した。薬剤部での朝礼後、担当する西館6階の病棟で業務を開始。まずは看護師と連携して一般輸液の混合調製を実施した。その後、病棟配置薬の管理や服薬指導、持参薬鑑別などにも時間を割いた。

 こうした中、電子カルテで確認した医師の処方オーダに目が留まった。薬剤師は患者の入院時に持参薬を鑑別し、詳しい内容を報告書にまとめている。ある患者の持参薬報告書をもとに医師は、バルプロ酸ナトリウム徐放錠の1日3回投与を指示していた。しかし、持参薬として報告していたのは「バルプロ酸ナトリウム通常錠1日3回投与」だった。薬物動態の違いが見過ごされていることに竹内さんは気づき、医師に処方変更を提案した。

 午後には医師から質問を受けた。病棟のスタッフステーションに設置された薬剤師専用端末の前で仕事をしていると、医師や看護師からよく声がかかる。今回の相談内容は「急性腎障害の原因として何が考えられるか」というものだった。

 対象は、化膿性脊椎炎の治療で入院している患者。内科的治療では改善が認められないとして手術の実施が決まったが、急性腎障害を発現した。原因不明のままでは手術に踏み切りづらい。竹内さんは併用薬の中から、腎障害を招く可能性が最も高い薬剤としてアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)に着目。血圧は低値で推移していたためARBの中止を提案し、医師に受け入れられた。

 午後4時からはASTのメンバーの一員としてラウンドに参加した。ASTラウンドの実施は週1回。医師、薬剤師、看護師、臨床検査技師が集まり、計5人前後の患者を対象に最適な抗菌薬の薬物療法を検討して、主治医に提案している。

 この日のラウンドで竹内さんは抗菌薬メロペネムの用量に注目した。腎機能障害に伴って少ない用量から投与を開始したが、腎機能は改善しつつあったため増量を提案。ASTのメンバーはその提案を受諾した。

 竹内さんは薬学教育6年制の1期生だ。2012年に京都薬科大学を卒業し、実家に近い同院で働き始めた。実務実習で病院薬剤師の仕事に強く興味を持ち、病院見学会で感じた温かい雰囲気が気に入って同院への就職を決めたという。

 薬剤師数は約30人。各病棟を2~3人の薬剤師が受け持ち、調剤などの中央業務と病棟業務を分担している。竹内さんは1年目後半から整形外科病棟を約5年間担当。現在は脳外科や消化器外科の患者が多い西館6階の病棟を受け持っている。

 入職当初は「多職種とうまくコミュニケーションをとれないこともあった」と振り返る。患者からは、ベッドに寝ているのに立ったまま話をして「その態度はなんだ」と怒鳴られたこともある。「じっくり考えてしまうタイプなので、仕事の内容や優先順位を覚えるのも遅かった」。知識不足に原因があると考え、通勤時間と朝礼までの隙間時間、昼休憩の時間は文献や関連雑誌を読んで自己研鑽するというルールを自分に課した。

病棟では医師や看護師から様々な相談を受ける機会が多い

病棟では医師や看護師から様々な相談を受ける機会が多い

 病院薬剤師として働き始めて8年近くが経過した。その間、様々な経験を積み、知識は厚みを増した。「自分が持つ知識や経験を駆使し、必要に応じて文献等を調べて最適な薬物療法の提案を行い、患者さんの経過が良くなった時にやりがいを実感する」と竹内さん。18年には抗菌化学療法認定薬剤師の資格を取得。起炎菌に応じた抗菌薬の選択等について医師や看護師、同僚の薬剤師から相談を受ける機会が増えたという。

 今後は「感染症を軸にしつつ、幅広い領域の知識を持ちジェネラルに対応できるように自己研鑽したい」と前を向く。「薬だけでなく、病態や検査のこともしっかり把握した上でディスカッションできる薬剤師になりたい」と語る。



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