【各業界の動向と展望をチェック!】薬物療法の連携に責任を~病院薬剤師の動向~

2020年3月1日 (日)

薬学生新聞


 病院薬剤師の業務は年々広がっている。近年は、病棟での業務の充実に加えて、入院中の医療を地域の病院や診療所、薬局、施設にうまくバトンタッチする役割が重視されるようになってきた。国にとっては、医療費の伸びを抑えながら、いかに質を落とさずに医療全体の効率化を図るかが課題で、こうした観点から医療機関の機能分化と連携推進に力を入れている。各病院の経営を考える上でも、患者の紹介や逆紹介などで地域の各機関との連携強化を図ることが欠かせない。地域全体の薬物療法の連携については薬剤師が責任をもって取り組む必要があるだろう。

 これまでの病院薬剤師の業務の変遷を振り返ってみると、劇的な変化を遂げるきっかけになったのが、1990年代に本格化した医薬分業の進展だ。外来患者の調剤業務が手から離れ、薬剤管理指導料の新設という診療報酬上の後押しもあって、浮いた薬剤師のマンパワーを病棟での業務に費やせるようになった。当初はベッドサイドでの患者への服薬指導が業務の中心だったが、病棟での役割は次第に広がった。病棟に出入りする中で、医師や看護師から薬の質問を受けて答えたりするうちに、顔の見える関係に発展。12年に病棟薬剤業務実施加算が新設され、病棟で業務を行う時間が長くなると、各病棟単位でチーム医療の一員として活躍する機会が増えた。

 それまでは感染対策チームなど院内横断型のチーム医療に加わることは多かったが、病棟単位のチーム医療でも存在感を発揮し始めた。さらに現在は、一般病棟だけでなく、手術室や集中治療室、救急救命室などにも薬剤師が幅広く関わるようになっている。

 活躍の場が広がるだけでなく、業務の質も変化した。患者への服薬指導や副作用のチェックにとどまらず、医師への処方提案などを通じて、目の前の患者に応じた最適な薬物療法の設計に関わる機会が増えている。

 病棟業務の充実を経て近年、特に重視されるようになった役割が、地域の病院や診療所、薬局、施設などとの連携強化だ。急性期病院に入院した患者は通常10日ほどで退院し、慢性期病院や高齢者施設に移ったり、紹介先の診療所に戻ったり、外来通院に切り替わったりして医療が続けられる。慢性期病院や高齢者施設、診療所に入院中の医療がうまく引き継がれるように病院薬剤師は、入院中の薬物療法の意図や注意点をお薬手帳に記載したり、文書で提供したりすることが求められる。

 自院での外来通院に切り替わったりした場合にも、院外処方箋を応需する薬局との連携強化が重要になる。今春の診療報酬改定でも、入院前の処方薬内容に変更、中止などの見直しがあった場合、退院時にその理由や患者状態を記載した文書を薬局に提供した場合の評価として「退院時薬剤情報連携加算」が新たに設けられることになった。また、医療機関が患者に外来化学療法のレジメンを提供し、地域の薬剤師を対象にした研修会を実施するなど薬局との連携体制を評価した「連携充実加算」も新設される。

 今後も診療報酬などで連携を後押しする国の施策は続くとみられる。病院薬剤師は、入院期間中だけでなく、退院後も見据えた薬物療法の円滑な連携を意識する必要があるだろう。

 近年の医療関連施策の中には、病院薬剤師の業務拡大の追い風となるような動きがある。医師の働き方改革を進めるために、医師でなくても行える業務は他の職種に移管する“タスクシフティング”の検討が始まっている。議論をさらに深め、段階的に制度に組み込まれる見通しだ。日本薬剤師会と日本病院薬剤師会は現行法上で薬剤師に移管可能な業務として「医師と連携の下、事前に作成・合意されたプロトコール及び薬剤師による専門的知見解に基づき、薬剤の種類、投与量等の変更を実施」などを提案している。こうした業務展開が今後どれだけ広がるかに注目してもらいたい。

 一方、業務範囲が広がったとしても、そもそも中小病院や地域の病院など薬剤師を十分に確保できない病院では幅広い業務を行えず、調剤業務のみに専念せざるを得ないという問題もある。とはいえ、マンパワーさえ十分にあれば、中小病院は現場の医師や病院経営者との距離が近い、魅力的な職場になり得る。病院経営者の片腕として働く薬剤師は各地に存在する。大学卒業後、一定の経験を積んだ上で、中小病院や地域の病院で働いてみるのも選択肢の一つになるのではないか。



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