【各業界の動向と展望をチェック!】調剤事業に注力、シェア拡大図る~ドラッグストアの動向~

2020年3月1日 (日)

薬学生新聞

 近年のドラッグストアは、生活者にとって欠かせない「健康に関する社会インフラ」としての存在感を発揮している。健康寿命が注目され、その延伸のために、治療や介護だけでなく、健康の維持・増進、予防に加え、より豊かな生活をサポートできる新たな業態としてドラッグストアが求められている。こうした時代背景を追い風に成長発展し、2018年度のドラッグストア店舗数は2万店を突破し、売上高も7兆円を超えた。

 日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の18年度実態調査によると、店舗数は2万0228店で、売上高は7兆2744億円となった。カテゴリー別売上高シェアは、調剤・ヘルスケアが31.3%でトップとなり、フーズ・その他が26.8%で続く。なお、店舗数および売上高とも実態調査を開始して以来、18年連続でプラス成長を遂げており、特に売上高はここ3年連続で5%以上伸長している。

 現在、ドラッグストア業界では、『2025年 10兆円3万店舗』を目標に掲げている。JACDSは、「地域で消費者の信頼を勝ち取り、時代の変化に対応していけば夢物語ではない」と強調。10兆円化の実現には、「近年の売上高増を牽引する[1]調剤[2]食品[3]インバウンド需要のOTC・化粧品――という三つのカテゴリーをいかに拡大できるかがポイント」とする。

 このうち、ドラッグストアの調剤事業は拡大が続いている。調剤店舗数は約6500店で全体の3分の1に達し、ドラッグストアの調剤医療費の合計額は約9000億円という状況。ただ、わが国の調剤医療費は約8兆円で、この数値はまだ10%強程度。“伸びしろ”は大きいと言えよう。

 ドラッグストア業界では、調剤におけるシェアを25年には30~40%にまで引き上げたいという目標を持つ。JACDSも「決して不可能な数値ではない」としており、その理由に調剤マーケットの特殊性を指摘。「調剤マーケットは寡占化が進んでいない現状にある。中小薬局が調剤医療費ベースで約7割を占め、薬剤師2人以下の薬局が約4割あると言われており、今後の状況次第ではM&Aなどによりドラッグストアのシェアが大きく伸びることが期待できる」としている。

 一方で現在、ドラッグストアに勤務する薬剤師は約3万人。このうち調剤に従事している薬剤師は半数の約1.5万人となる。これまで、ドラッグストアの調剤拡大には薬剤師の確保が課題との見方もあったが、近年この状況は劇的に変わってきている。

 ▽薬剤師国家試験の合格者数は合格基準を絶対評価から相対評価に切り替えて以来安定し、毎年1万人前後を維持するようになった▽メーカーの研究職、MR職の採用を抑制している――ことなどから、ドラッグストアへの新卒薬剤師の流れが加速しつつある。こうした背景についてJACDSでは、「調剤だけでなくOTCを介した健康相談までのサービスを提供し、街の健康ハブステーション」を標榜するドラッグストアの存在が見直されてきていることも大きい」とする。

 また、今後に関しても「当面、薬学部や薬科大学の新設が続くこともあり、大手ドラッグストアを中心に、新卒薬剤師の大量採用が続く」との考えを示しており、薬科大学・薬学部との連携強化にも努めている。



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