ニュースダイジェスト

2020年7月1日 (水)

薬学生新聞

【薬学会など】コロナに対応した実習へ指針‐最低限の質を担保

 日本薬学会と薬学教育協議会は、新型コロナウイルス感染症に対応した2020年度薬学実務実習の指針をまとめた。大学の休校や受入施設での感染リスクなど、実務実習の実施が難しい状況となった緊急時の対応として、実務実習の最低限の質を担保するために示したもの。感染症の流行状況に応じて「通常期実習」「制限期実習」「中断期遠隔実習」の3段階に分け、それぞれの状況における実習内容や評価方法を参考として例示した。指針は、今年度の感染症対策が必要な期間に限って適用されるとしている。

 今回の指針は、日本薬剤師会が示した「薬局実務実習における新型コロナウイルス感染症への対応」を受け、実務実習の最低限の質を確保するため、薬学会、薬学教育協議会、日薬が協議してまとめたもの。

 大学や実務実習施設の指導薬剤師に対しては、感染症予防のための手洗いやうがいを励行し、施設内では原則マスク着用で実習を行うことや、実習開始2週間前から毎日体温を測定して体調を記録し、実習開始時に指導薬剤師に提出することなど、実習生に十分な感染症対応を指導するよう求めた。

 また、大学の担当教員に対しては、感染症の状況に応じた対応について、実習開始前に予め指導薬剤師と協議して情報共有しておくよう要請。実習生に対しても開始前に実習中の感染対応について詳細を伝えておくよう求めた。

 その上で、新型コロナウイルス感染症の流行状況に応じた実習内容として、施設での通常の実務実習ができる「通常期」は、代表的な疾患を基本に参加体験型実習を行うとしつつ、今年度はガイダンスや発表会、関連施設見学などの集合研修は極力控え、“3密”状態を生み出さない工夫を求めた。

 実習の評価については、実習生の日誌や振り返りレポートの確認、概略評価などを通して、指導薬剤師は実習生の到達度評価を定期的に行いながら指導することを要請。大学は、概略評価や実習記録などを参照して総合的な評価を行うとしている。

 感染症に十分な注意が必要となり、患者応対に制限があるものの施設内で実習ができる「制限期」には、指導薬剤師が感染の可能性を危惧する実習は原則行わないと明記。実際、在宅訪問など施設で実習ができない内容は、過去事例や患者情報を利用し、施設内でのロールプレイや事例検討などの研修を実施することで代替するとした。

 感染症対応で実習内容が制限される場合は、代表的な疾患や到達目標(SBO)の項目にこだわらず、できる範囲で体験実習を行えば良いとした。

 実習の評価については、指導薬剤師による症例等の課題を実習生に与えることで補習した「経験を伴わない学習」の評価と合わせ、実習生が到達できたと指導薬剤師が考える評価を実習生と大学に示すよう求めている。

 さらに、施設実習が中断されているものの、自宅で遠隔学習ができる「中断期」には、指導薬剤師は自宅学習のための課題を大学と連携して実習生に示し、課題の進捗状況を随時ウェブで確認。学習成果は電子メールなどで提出させ、添削指導を行うよう要請した。スマートフォンやパソコンによる遠隔双方向の指導も定期的に行うことが望ましいとしている。

 実習生に提示する課題は、到達度の低い項目について適切な課題を選んで示すこととし、薬学モデル・コアカリキュラム「F薬学臨床」の領域と同領域に記載されたSBOを参照しながら、実習の進捗に合わせて学習不足と思われる領域を補填する課題を順次示すよう求めている。

 実習の評価については、自宅学習も含め総合的に判断して行うとし、指導薬剤師から見て実習生が到達できたと考える評価を実習生と大学に提示すれば良いとの考えを示している。

【政府】手指消毒液など転売規制‐ネット高額販売を禁止

 政府は手指などの消毒に使用するアルコール製品の転売を規制するため、国民生活安定緊急措置法の一部を改正する政令を施行した。消毒用エタノールやハンドソープ等の医薬品・医薬部外品、エタノール濃度60%以上の酒類、除菌ジェルや除菌シート等を対象とし、衛生用マスクと同様に、インターネットの販売サイトなどで購入価格以上で転売することを禁じる。違反した場合は懲役1年以下もしくは100万円以下の罰金を課す。

 政令改正により、衛生用マスクと同様に、販売サイトなどで「消毒に使用することを目的としたアルコール製品」を購入価格を超える価格で販売した場合に罰則が適用される。

 対象製品は、医薬品・医薬部外品として、消毒用エタノール、手指消毒液、殺菌消毒薬、ハンドソープなど。ただ、エタノールを含有しない消毒製品、口中清涼剤や薬用シェーブローションなどは対象外とした。

 また、厚生労働省の事務連絡を踏まえ、エタノール濃度が60%以上の高濃度エタノール含有製品も対象とし、酒類、除菌ジェルや除菌シート等の除菌製品、主に業務用で使用される食品添加物などを挙げた。空間用消臭剤や掃除用シート等の濃度60%未満の製品、香水や工業用洗剤等の除菌以外を用途とする製品は除外している。

 消毒目的のアルコール製品をめぐっては、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、販売サイトで転売する事例が相次いでいることから、政府は3月中旬以降にサイト運営業者に出品や販売の自粛を要請してきた。ただ、依然として多くの転売事例が見られ、緊急事態宣言解除後の国民のアルコール消毒製品へのアクセスを確保するため、今回の改正に踏み切った。

【経産省見解】後発品促進へポイント付与可‐窓口負担の20%以内

 経済産業省は、患者や医療機関が医療用医薬品を後発品に切り替えることを促すため、患者が病院の窓口で支払う医療費の20%以内であれば、保険者向けのサービスとして金銭や商品券、ポイントなどのインセンティブを患者に提供することは認められるとの見解を示した。

 経産省が運用するグレーゾーン解消制度では、企業が実施する事業が規制対象になるかどうかを事業者が照会できる。今回、自治体や企業が抱えるヘルスケア分野の課題に対して、コンサルティング業務を行う事業者が医療保険者向けに検討している新規サービスについて、規制対象に当たるかどうか照会した。事業者は医療用医薬品や医療機器の製造販売業者ではない。

 サービスの詳細を見ると、事業者が保険者からの委託を受けて、金銭、商品券、ポイントなどを医療機関や患者に提供することにより、後発品への切り替えを働きかける。患者に提供するインセンティブは、患者が病院の窓口で支払う医療費の0~10%程度に設定する考え。

 今回の照会は、このインセンティブ提供が景品表示法や、懸賞ではない方法で提供する景品類の価格を取引価格の20%以内に制限する公正取引委員会の告示内容に当たるかどうかを確認したもの。

 また、公取委の告示にある「医療用医薬品等の販売業者は取引を不当に誘引する手段として、医療機関等に対して適当と認められる範囲を超えて景品類を提供してはならない」の規定にも当たるか判断を求めた。

 経産省が景品表示法等を所管する消費者庁に確認したところ、インセンティブは取引価格の20%以内であり、照会した事業者は医療用医薬品等の製造販売業者にも当たらないことを踏まえ、「原則として規制対象に当たらない」との見解を示した。

【慶大教授調査】薬局での口腔環境チェック、歯科医の8割が肯定的

 薬局で実施する口腔内環境チェックを歯科医師の約8割が肯定的に捉えていることが、慶應義塾大学薬学部の山浦克典教授らが実施した調査で明らかになった。来局者から唾液を採取し、市販の検査機器で虫歯や歯周病のリスクを評価するもので、歯科医師の多くは評価結果に基づく受診勧奨や情報提供などの役割を薬局薬剤師に期待していた。山浦氏らは、「薬局の口腔内環境チェックは健康サポート機能の向上に役立つほか、歯科医師との連携強化にもつながる」として、多くの薬局で取り組むよう呼びかけている。

 調査は、東京都内でランダムに抽出した1000軒の歯科医院を対象とし、昨年7~8月に実施。郵送で質問紙を送付し、259件の回答を得た。

 その結果、薬局で行う口腔内環境チェックを「知っている」と回答した歯科医師の割合は、5.0%と低かったものの、口腔内環境チェックの実施について45.2%は「積極的に実施してほしい」、39.4%は「どちらかといえば実施してほしい」と回答するなど、8割以上の歯科医師が肯定的に捉えていることが明らかになった。

 賛成理由としては「患者の歯・歯茎の健康意識が高まる」「口腔疾患の早期発見につながる」などの意見が多く、口腔内環境チェック実施後に薬局薬剤師に何を期待するかを聞いたところ、「歯科医院への受診勧奨」「歯科医院向けの情報提供書の発行」という声が多かった。歯科医師の多くは、薬局から歯科医院へと患者をつなげてほしいと考えていることが分かった。

 薬局との連携の意思を聞いたところ、79.2%の歯科医師が「薬局と連携したい」と回答。連携推進に必要なものとしては「連携に関する地域の仕組み」「情報共有のための統一書式やツール」「連携に対する診療報酬上の加算」を望む声が多かった。



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