【これから『薬』の話をしよう】禁煙補助療法の効果を高めるためには?

2020年7月1日 (水)

薬学生新聞


医療法人徳仁会中野病院薬局
青島 周一

青島周一氏

 前回はバレニクリンの効果についてお話しましたが、今回は禁煙介入に関する興味深い研究(PMID:26928205)をご紹介します。

 この研究では喫煙者160人が対象となりました。被験者はニコチンパッチによる禁煙補助介入群と、ニコチンパッチに加えてツイッターによるグループメッセージや励まし合いを行うソーシャルネットワーク介入群のどちらかにランダムに振り分けられ、禁煙維持割合が比較されました。その結果、60日間における禁煙維持割合は、ニコチンパッチのみと比べて、ソーシャルネットワーク介入で2.67倍になる(95%信頼区間1.19~5.99)ことが示されました。ソーシャルネットワークによる介入を上乗せするだけで、禁煙維持割合が大幅に増えるという結果は、とても示唆に富むものです。

 禁煙が困難な状況はニコチン依存症と呼ばれますが、喫煙に限らず依存は意志の弱さが原因だと考えられることも多いでしょう。しかし、タバコがやめられないのは意志の問題だけなのでしょうか。

 例えば、喫煙を始めたきっかけをたどってみれば、興味本位はあれど、心の底から喫煙したいと思ってタバコを吸い始めた人は、むしろ少ないのではないでしょうか。「タバコを吸うことで自分に自信を持つことができた」とか、精神的につらい日々の中で「タバコを吸う時間だけが癒しをもたらしてくれた」などの経験や環境もニコチン依存を形成していくように思います。

 改めて考えてみると、依存は日常にありふれています。むろん、社会的に許容できるか否かという線引きはありますが、例えばスマホ依存やネット依存も依存には違いありません。人は多かれ少なかれ何かに依存しているのだと思います。依存することで孤独や不安、寂しさを和らげ、安心や希望を手にすることができるのです。

 禁煙できない人は、意志が弱いわけではなく、希望のある生活を維持するために必要な依存の矛先が、喫煙しかなかったということなのかもしれません。このような人にとって、喫煙は健康にも勝る価値があります。人は健康のために生きているわけではないからです。ソーシャルネットワークによる介入は、依存する先をタバコから、他者とのつながりに広げることで、禁煙維持割合を高めたのかもしれませんね。



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