【日本薬学生連盟広報部】新型コロナ、強い危機感続く‐医療系学生にアンケート調査

2020年9月1日 (火)

薬学生新聞

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が現在も世界中で猛威を振るっています。5月25日をもって緊急事態宣言が全都道府県で解除されましたが、県外移動の自粛要請や「withコロナ」というキャッチフレーズの誕生など、現在も依然として生活に大きな影響が出ています。日本薬学生連盟は4月に薬学生を対象にアンケート調査を実施して現状を聞きましたが、今回は医療系学生まで対象を広げて再調査を行いました。あれから4カ月が経過した現在、医療系学生は現状をどう捉えているのでしょうか。

 今回は薬学部の学生だけでなく医学部や看護学部などの学生にもご協力いただき、128人から回答を得ました。また、各大学で行われている感染予防への取り組みや、それぞれが感じる現状や将来に対する様々な不安を聞きました。アンケート調査は、アジア医学生連絡協議会(AMSA Japan)、国際医学生連盟日本支部(IFMSA-Japan)、日本国際保健医療学会学生部会(jaih-s)の会員の皆さんの協力を得て、7月21日から8月5日まで実施しました。

8割が「危機感あり」

 はじめに、▽現状に対する危機感を持っているか▽今後状況はどう変化すると考えるか▽三密(密閉・密集・密接)を避けた行動をとっているか――について聞きました。

図1 三密と現状に対する危機感について

 危機感を感じている学生は128人中103人で、全体の80.4%(前回比8.8ポイント減)でした。緊急事態宣言が全国で発令された前回調査より低くなってはいますが、依然として多くの学生が現状に対して危機感を感じているようです。このアンケート調査を行った期間が、ちょうど東京都内で感染者が急増した時期と重なったことも関係があるかもしれません。

図2 学部による危機感の違い

 図2は特に回答数が多かった医学部、薬学部、看護学部別の危機感の感じ方を示したグラフです。危機感について学部間での差は見られませんでした。三密の回避に対する意識も学部間での差異は見られませんでした。

危機感は感じるも増える外出

 続いて、緊急事態宣言発令時と比べて不要不急の外出の頻度がどう変化したかを聞きました。

図3 現状への危機感と不要不急の外出頻度について

 危機感を感じている学生と、感じていない学生の間で不要不急の外出の頻度に関して違いはあまりなく、むしろ危機感を感じている学生のほうが不要不急の外出の頻度が増えている傾向があるという結果が得られました。

 大学によっては対面での試験や実習が行われているところもあり、それに伴い久しぶりに再会した友人との外出など、不要不急の外出をするようになった学生が増えているのではないでしょうか。

各大学で異なる試験対応

 続いて、それぞれの大学で授業、実習、前期の試験がどのように行われているかを調査しました。

 (任意回答、正式な大学への調査ではないため実情とは異なる場合があります)

表 前期期末試験に対する各大学の対応(大学名は50音順)

 多くの大学は、授業はオンライン、実習は対面という形を取っていました。また、試験についても首都圏や地方に関わらず大学によって対応が異なり、各大学の苦慮がうかがえます。他の医療系学部についても同様の傾向が見られました。

 大学ごとの対策としては、「大学独自の検温システムにフォームを記入し毎朝送る」「無期の部活動・サークル活動の自粛」「学年ごとの分散授業」「通学する路線の指定」などがありました。

オンライン化で不安続出

 最後に、今後の大学生活に関する不安や思いを自由記述で回答してもらいました。

 「オンラインでしっかり学べているとは思えず、テストが不安でしかない」(薬学部1年生)

 「オンライン授業が続くことが不安。対面の授業、対面の試験がないため勉強が身につかない」(薬学部2年生)

 「研究室の活動が全くできていないので、大学の入構禁止を早急に解除してほしい」(薬学部5年生)

 「実務実習を無事に終えられるか、就職活動への影響も心配」(薬学部5年生)

 「まだ地方の実家で暮らしている人もいる。秋学期に実習だけ対面になると、感染者が多い東京都に暮らしている私と接触することで間接的に地方の高齢者に移してしまうのではないかと思い心配」(看護学部1年)

 「実習や授業もままならないまま臨床に出ること」(看護学部4年)

 「実習期間が短くなり、外病院での実習がなくなり、また対面での実習機会も少ないため、将来どんなところでどんな風に働きたいかというビジョンを作りにくい」(医学部5年)

 以上は現状のオンライン授業に対する不安の声です。

 このほか、低学年の学生からは、大学での友人を作りづらいことや関係が薄くなること、対面に比べて知識を定着できるか不安といった声、高学年の学生からは、就職活動など将来に関する不安が多く寄せられました。

 一方、オンライン授業を肯定する意見も多くありました。

 「COVID-19が蔓延しているのに、人の多い交通機関で大学に行かなければならなかったり、交通機関を利用している友達に会ったりすることが不安」(薬学部2年)

 「前期試験や後期授業が対面で行われるのであれば非常に不安。たとえ三密が防げたとしても飲食店で勤務している人や都心で遊び歩いている人、満員電車で通学している人は必ずいると思う。そのような人と接する機会をできるだけ避けたいが対面で大学が始まってしまうとそれが困難になる」(薬学部4年)

 「オンライン化をもっと継続・推進してほしい。友人関係がつらく通学がしんどかったので、オンラインになって非常に救われている」(医学部4年)といった声が聞かれました。

常に正しい選択を

 今回の調査を通して、危機感を感じている学生が大多数存在することが何より印象的でした。以前のような強い自粛ムードはすでになく、三密の状態を完全に回避することも難しいでしょう。しかし、避けようと意識をすることと、何も意識をしないことには大きな違いがあると思います。

 まだ解明されていない点も多いCOVID-19、先が見えない長いトンネルのような生活ですが、一時の感情に流されることなく常に正しい選択を心がけたいものです。



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