地域医療に貢献したい
小野薬品の筑地佑樹さんは入社3年目を迎えるMRだ。病院に通うことが多かった幼少期の経験から薬学に興味を持ち、明治薬科大学へと進学。5年生時の製薬企業へのインターンシップがきっかけでMRを志し、抗癌剤「オプジーボ」をはじめ特徴的な製品が多い同社に応募し採用された。筑地さんは現在のMRの仕事について「担当する病院だけではなく、近隣のクリニックや薬局など包括的に地域に貢献することにやりがいを感じている」と語る。
筑地さんは2018年に同社に入社後、東京支店多摩第一営業所に配属された。現場に出てから2年目となる昨年10月に異動があり、これまで担当していた北多摩北部医療圏(清瀬市、西東京市、東久留米市、東村山市、小平市)から、小平市にある二つの基幹病院と杏林大学医学部付属病院(三鷹市)などを受け持つこととなった。
現在は新型コロナウイルス感染症の影響により在宅勤務が推奨されているため、週に2日ほど在宅勤務をしている。
昨年11月のとある1日。始業の8時半になると筑地さんは営業所でメールの確認や講演会案内の手配、面談の約束を取り付けている訪問施設での面会準備を実施。9時からはミーティングが始まった。筑地さんは車中からウェブ参加だ。上長から情報提供活動に関する方針などが示された後、現場MRの目線から活動方針について改善すべき点があれば意見を言う会議。領域ごとに開かれるプロモーター会議での内容や、企画中の講演会について情報共有が行われた。
11時、車で小平市の基幹病院に移動し医師と面会した。製品の情報提供活動や安全情報の収集に加え、講演会などの事業計画に関する打ち合わせを行う。ウェブでの面会の機会も増えていることについては「これまで2、3分しか面会できなかった先生と30分以上面会できるようになったこともある」と手応えを語る。
12時からは近隣のクリニックを訪問し、製品説明会を開催。14時に遅めの昼食をとりながら、メールの確認やアポイント調整を行った。
15時に大学病院を訪問。医局前で複数の診療科の医師と面会し、新規患者向け資材の紹介や情報収集に努めた。薬剤部への面会はウェブ上で行うことになっているため、いったん車に戻り、車内から薬剤部長とウェブ面会。その後、18時まで近隣のクリニックと大学病院の医師の外勤先を訪問した。
18時、筑地さんの1日はまだ終わらない。この日は事前に企画していた講演会があるため、講演会場で準備に取りかかる。ウェブを介したライブ配信となるため、聞く側の視点に立ち、内容を分かりやすく伝えるために通常よりも30分短縮してプログラムを組んだ。19時から20時半まで講演会を行い、会場の撤去作業後、21時に1日の業務を終え、帰路についた。
入社3年目を迎え生活にも慣れてきたという筑地さんだが、当初は訪問施設に新しく赴任してきた医師から「新人が何しに来たんだ」と素っ気なく対応されるなど順風満帆ではなかった。訪問の約束を取り面会に漕ぎ着けても、面会時間がわずか2分程度しか確保できないなど苦労の日々が続いた。
こうした状況下で、「月に1度は必ずアポイントを取り、新たに作成した患者向け資材や、製品に関わる資料を多く持参するようにした」と筑地さん。創意工夫が実り、持ち込んだ資材のうちの一つが医師の興味を引いた。栄養士や看護師といったメディカルスタッフの方を紹介してもらえるようになり、「信頼関係を築き、次の活動につながった」と振り返る。
薬学生時代はMRという進路ではなく、仲間と音楽バンドを組みライブなど精力的に活動する傍ら、「薬剤師として働くんだろうな」と漠然と考えながら学生生活を送った。
MRという職業に適性があるとは考えていなかった筑地さんだが、チャレンジし成長してきた経験から「自分で向いていないと可能性を狭めるのではなく、興味があればチャレンジしてみてほしい」と学生に向けてエールを送る。
地域医療に貢献したいという大きな目標もある。「地域の中で連携先を増やしたいと考える先生がいれば、橋渡しをしていきたい。地域医療に貢献した結果として、自社製品の使用につなげることができたら」とさらなる成長を誓う。医療の質向上に向け、「担当している病院は全国的にも知名度があるので、担当施設から全国に発信できるような事例や講演会を企画していきたい」と語る。