【各業界の動向と展望をチェック!】薬局認定制度で機能明確に~保険薬局~

2021年3月1日 (月)

薬学生新聞

 医薬分業の進展とともに大きく店舗数を拡大させてきた保険薬局は、現在、全国で約5万8000軒あるとされている。一方、2019年度の調剤医療費は7兆7025億円(前年比3.7%増)、そのうち技術料が1兆9771億円(2.4%増)、薬剤料が5兆7114億円(4.2%増)を占める。つまり2兆円近い調剤報酬が保険薬局に支払われていることになる。

 そうした中、超高齢化を背景に40兆円を超える規模に達した医療費の削減に向け、医療サービスの質の向上と効率化を図る動きも加速している。全国平均で7割を超える水準に到達している医薬分業についても例外なく、見合ったサービスの提供や薬局のあり方についての議論が行われ、それらの結果を踏まえた改正医薬品医療機器等法が19年末に成立、公布された。

 改正法の検討議論の過程では、国が推進する「かかりつけ薬剤師・薬局」について「役割が患者に見えない」という厳しい指摘もあった。このため、「かかりつけ薬剤師・薬局」の業務をより明確に見える形で示す内容が盛り込まれた。それが「薬局認定制度」だ。

 医療機関の機能分化が進み、在宅医療や施設・居住系サービスの需要が増加する中で、薬局には地域包括ケアシステムを担う一員として、新たな役割が求められている。この制度は、患者が自身に適した薬局を選択できるよう、機能別に薬局を認定するもの。認定は「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」の二つがある。

 「地域連携薬局」は外来受診時だけではなく、在宅医療への対応や入退院時を含め、他の医療提供施設との服薬情報の一元的・継続的な情報連携に対応できることが求められる。このため、地域で他の医療提供施設に勤務する医師などの医療関係者との連携体制を構築し、様々な療養の場を移行する利用者の服薬情報等の情報共有を行い利用者に対し質の高い薬学的管理を行う必要がある。また、地域の他薬局に対する医薬品提供や医薬品情報の発信、研修等の実施を通じて、他の薬局の業務を支える取り組みも期待されている。

 「専門医療機関連携薬局」は癌などの専門的な薬学管理が必要な利用者に対し、他の医療提供施設と連携しながら、より高度な薬学管理や高い専門性が求められる特殊な調剤に対応できる薬局。地域連携薬局と同様に、他の薬局に対して、医薬品提供、医薬品に係る専門性の高い情報発信や高度薬学管理を行うために必要な研修等の実施を通じて、専門的薬学管理が対応可能となるよう支えることも期待されている。

 いずれの認定薬局も基準をクリアした薬局が申請し、管轄する都道府県知事が認定を行うものだ。8月1日からスタートするこの制度は、今後、診療報酬上の措置にも関係してくる可能性もあるため、規模の大小を問わず、多くの薬局が認定取得に向けた取り組みを進めていくことになるだろう。

 保険薬局業界は、大手企業の市場占有率が低く、小規模の薬局が多数存在するのが特徴。コロナ禍による経営環境の悪化に伴い、資本力のある大手調剤チェーンが小規模薬局をM&Aにより傘下に加える動きも活発化している。いずれにしても、調剤報酬に見合ったサービスをどう提供していけるかが生き残りの大きな鍵になる。



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