メディセレスクール社長
児島 惠美子
こんにちは。メディセレのしゃっちょう、児島惠美子です。
私は2008年にワシントン州立大学薬学部で少し勉強したことがあります。そこでアメリカの薬剤師が注射するきっかけをつくったドン教授のお話をうかがってから、「日本の薬剤師も注射ができるようになろう」と機会があれば発言してきました。そのたびに教育、法律、権利、職域の壁に直面しました。
コロナワクチンの国内接種開始が見え始めた今年の春にはチャンスだと思い、「自治体単位で、地域の特例で薬剤師が接種できるようにならないか」と発言し、色々な方から賛否両論をいただきました。実際にワクチン接種が始まると、薬剤師が薬液の希釈や充填の手伝いとして脚光を浴び始めました。「もう一声、『接種もしてください』との依頼が来ないかしら」と非常にワクワク感を持って、薬剤師の職域が広がるかもしれない歴史的状況を見守っています。
歯科医師がコロナワクチンの接種に協力していますが、普段、注射をしていない歯科医の友人は「習うより慣れろだわ」と感想を述べました。現実はそうだと思います。獣医師の友人は「暴れる動物に日々注射をしているのだから慣れているし、手伝うのに。厚生労働省ではなく農林水産省の管轄だから声はかからないのかな…」と言っていました。
アメリカやカナダの薬剤師の職域は日本より広いです。処方箋だけ、OTCだけに特化することはなく両方の知識を持ち、ワクチンの接種も実施しています。処方箋上の薬物の用法や用量は、医師へ疑義照会することなく、薬剤師が独断で変更できます。薬剤師国家試験は処方提案などのケーススタディが中心で、物理などはなく、臨床の問題に終始しています。大学のカリキュラムではコミュニケーション学に重きが置かれていました。
国家試験は薬学教育の集大成です。国家試験から変わらないと教育は変わらないのではと思っています。今回のコロナ禍対応から今後、感染症や感染対策、ワクチン、医薬品の開発や承認、注射剤の取り扱いなどが国家試験に出題されると予想されます。でも、もうひと変化、欲しいです。これらの変化が薬剤師不要論を吹き飛ばすきっかけになればと思います。