【これから『薬』の話をしよう】論文を継続して読む意義

2021年7月1日 (木)

薬学生新聞


医療法人徳仁会中野病院薬局
青島 周一

青島周一氏

 情報を記録し、媒介するツールをメディアと呼びますが、その種類によって情報の流動性が異なります。流動性とは情報が有している価値の経時的な変化と考えれば分かりやすいと思います。以下では流動性が低いメディアをストック型(蓄積型)、高いメディアをフロー型(流動型)と呼ぶことにしましょう。

 代表的なストック型メディアに辞書や百科事典などを挙げることができます。いわゆる「保存版」などと付されるメディアと考えれば分かりやすいと思います。他方でYouTubeやTwitter、Instagram、Facebookなどのプラットフォームによって情報が可視化されるソーシャルメディアは、フロー型メディアの代表と言えましょう。

 医学論文を掲載している医学誌や学会誌もメディアの一つですが、これらのメディアは学術的知見のアーカイブという意味ではストック型、最新知見の効率的なアップデートという観点からはフロー型という二面性を有しています。しかし、近年ではよりフロー型の性質が強くなっているように感じます。もちろん掲載されている論文のテーマにもよりますが、社会の関心が高い臨床課題ほど、フロー型の様相は強まっていきます。

 例えば、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い、同ウイルスの特性や感染症に関する知見、あるいは治療薬やワクチンなどの有効性や安全性に関する膨大な数の論文が、今もなお報告され続けています。そのような中、治療薬候補として話題となったイベルメクチンに関するシステマティックレビュー・メタ分析の結果(PMID:33227231)が、後続のランダム化比較試験(PMID:33662102)によって覆されるまでの期間はたった4カ月ほどでした。

 僕の好きな英国の哲学者、カール・ポパー(1902~94年)は、「客観的知識」という著作のなかで、「われわれは真理の追及者であるが、真理の所有者ではない」と述べています。

 質の高い論文情報と言えど、物事の絶対的な真理そのものではありえず、少なからず更新される可能性を有しています。つまるところ、人が手にすることができる科学的知識とは常に暫定的な真理なのです。一つの論文をじっくり批判的に吟味することも大切ですが、より重要なことは数多くの論文を継続して読み続けることなのだと思います。



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