【これから『薬』の話をしよう】ポリファーマシーに対する減薬介入と課題

2021年9月1日 (水)

薬学生新聞

医療法人徳仁会中野病院薬局
青島 周一

青島周一氏

 先進諸国において、ポリファーマシーと呼ばれるような状態の人は増加傾向にあることが知られています(PMID:30540223)。そのような中で、薬の潜在的な有害事象に関心が向けられるようになったことは、皆さんもご存じだと思います。

 薬がたくさん処方されていることは、健康状態にとって好ましくない出来事のいくつかに関連していることは確かです。しかし、数多くの薬が処方されている人は、そもそも薬に対応するだけの健康問題を有しており、ポリファーマシーではない人と比べて、もともと健康状態が良くないと考えられるでしょう。つまり、ポリファーマシーは健康状態の悪化がもたらした帰結に他ならず、その直接的な健康への影響(因果関係)を見積もることは困難と言わざるを得ません。

 先日、ポリファーマシーに対する減薬介入について、総説論文を共著で執筆しました(PMID:34221792)。140件の論文を引用して明らかになったのは、どのようなアプローチが適切な減薬介入なのか、明確には分かっていないことでした。ポリファーマシーの害だけでなく、減薬介入がもたらし得る健康への影響についても、僕らが想像するよりはるかに小さい可能性が浮き彫りになったのです。

 減薬介入の効果が明確ではない理由を考えてみましょう。まずは、薬を1剤や2剤ほど減らしたところで、健康状態に与える影響はほとんどないのかもしれません。加えて、慢性疾患用薬の多くはその服薬アドヒアランスが50%程度と、決して良好ではありません(PMID:22748400)。もともと服薬できていないのであれば、いくら処方薬剤数を減らしたところで、患者さんの健康状態になんら影響を与えませんよね。

 また、薬の適正使用や潜在的なリスクについて、教育的介入の効果を検討した研究も数多くありました。ただ、このような教育を受けることによって人の考え方や行動に変化が起きたとしても、それが健康状態に良い影響を与えるかどうかは別問題なのでしょう。

 こうした解析結果から「減薬介入にはあまり意味がないから無駄である」と結論づけることは容易です。しかし、明らかに不適切と思える処方を見かけることもまた事実です。減薬介入によって恩恵を受けることができるような患者背景や介入手法の特定こそが、今後の大きな課題と言えるかもしれませんね。



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