【日本薬学生連盟インタビュー】先輩に聞く 進路選びのポイント

2022年1月1日 (土)

薬学生新聞

 日本薬学生連盟広報部は、薬学部を卒業後、社会で活躍されている2人の先輩に、学生時代やその後のキャリア設計に関するお話をうかがいました。仕事や結婚、出産など人生の選択について、就職活動時だけではなく、皆さまの今後のキャリアパス設計に役立つ記事となりましたら幸いです(2021年度広報統括理事 日本薬科大学5年生 山沢智

アイコン・ジャパン 医薬品開発プロジェクトマネージャー 宮島 泉恵さん

英語と薬学の知識を生かす

 ――学生時代の就職活動時にはどのようなキャリア設計を考えていましたか。

宮島泉恵さん

 私が自分のキャリアを考える原点は、高校時代に1年間カナダに留学した時の経験です。現地の学生や他の留学生と知り合う中で、彼らは英語でのコミュニケーションが当たり前にできていて、英語が喋れるだけで、国際的な仕事で活躍できるわけではないと感じました。その経験から、何を伝えるために英語を使っていこうかと考えて薬学部に進学し、英語と薬学の知識を生かせる仕事がしたいという思いを軸に、就職活動を開始しました。

 就職活動を始めた頃は、医療業界に限らず、化学系メーカーや商社なども見ていました。製薬企業の開発職やMR、CRO、外国人との対話がありそうな薬局などにアプローチする中で、英語と薬学という私の強みを評価していただき、最終的に内定をいただいたのが、製薬企業のMRとCROでした。当時は、グローバルスタディに興味があり、入社後すぐに英語を活用して働けそうなCROを選びました。

 ――就職活動で最初に取り組んだことは何ですか。

 たまたま日本薬学生連盟を友人から紹介されて、そこで先輩や社会人の方のお話を聞いたのが、就職活動の第一歩だったと思います。その後、ブルークロス調剤薬局のインターンシップに参加して薬剤師の仕事に触れ、その翌年に内資系と外資系の製薬企業2社でMRのインターンシップを経験したほか、ダウ・ケミカルという化学メーカーのインターンシップにも参加して、どんな仕事をどんな人がしているのかを見てみました。

 ――将来を考えた時、男女問わず、結婚や子育てなど、お仕事以外のライフプランも考える時があるかと思いますが、キャリアとの両立はどのようにしたのでしょうか。

 プライベートを充実させたいと考え始めたのはPPDで働いていた頃です。仕事だけじゃなく、自分の人生で何が欲しいかなと考えたときに、やっぱり子供が欲しいなと思って、婚活を1年ほどしました。ヤンセンファーマに転職してから、仕事も少し落ち着いてきて、結婚や子育てを経験しました。

 学生時代は福利厚生って何という感じで、薬学部を卒業して最初の数年は、ひたすら仕事を頑張っていた気がします。今思うと、一番仕事に時間をかけることができた卒業後すぐの独身の時期に経験したことが、仕事をする上での自分の基礎になっていると思います。

 その後、他の業種や業界に行きましたが、子育てで自分が一日の中で仕事に使える時間が短くなり、その短い時間の中で成果を出していかなければならないとなった時に、働き方の基礎を養っておくのは新卒のキャリアで大事なことだったと感じています。

 ファーストキャリアで、結婚や出産、子育てなどをした後も仕事を続けられる方はいますが、新卒で就いた会社でライフプランに対する全ての制度が自分に合っていることはおそらく少ないと思います。新卒の時の自分もどんな人生を歩みたいかなんて全然明確ではなかったですし。仕事だけではなくプライベートや社会貢献とか色々なものを全部ひっくるめて、自分の人生を運んでくれるものがキャリアだとヤンセンファーマにいた頃に教わりました。その時々に合わせて何を頑張りたいのかを柔軟に考え、自分にとってベストな仕事を見つけられると良いと思っています。残念ながらワークライフバランスなんて、私もいまだに全然とれていませんが、日々向き合い続けて学んでいます(笑)

 ――就職に向けて、学生のうちにしておいた方が良いことは何でしょうか。

 失敗を恐れず、自分で何かをやってみることです。それが、リーダーのポジションであればさらに学びが多いと思います。起業家の聖地と呼ばれるアメリカのシリコンバレーで現地のシリアルアントレプラナー(複数の事業を立ち上げている起業家)の間でよく交わされる話らしいのですが、「ビジネスを何回立ち上げたの」との質問に「2回だよ」と回答すると、「1回しか失敗していないんだね。まだまだだね。5回失敗したらEven betterって言われるんだよ、ここでは」と言われるそうです。

 失敗すると、そこから学びがあったはずだから、次はもっとより良いものが作れるはずだよね、という文化があります。そのチャレンジングなところがとても良いなと思いました。私も、うまくいった時より失敗した時の方が分析したり考えたりすることは多かったと感じます。自分の伸びしろや得意、不得意を知るために、勉強だけではなく、色々なことに挑戦してください。


 〈略歴〉2010年に星薬科大学薬学部を卒業後、パレクセル・インターナショナルにてCRAとして働き始める。その後、PPD(現在の新日本科学PPD)に転職。14年からはヤンセンファーマにてMSLとして学術担当に従事。夫の米国転勤に伴い、現地のJETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)にて企業のビジネス開発に携わり、帰国後は製薬企業専門のコンサルティング会社に勤務。現在は、アイコン・ジャパンで医薬品開発のプロジェクトマネージャーとして国際共同治験を推進している。

カケハシ カスタマーサクセス 近藤 優美子さん

多くの職場見て志望先決める

 ――学生時代の就職活動時にはどのようなキャリア設計を考えていましたか。

近藤優美子さん

 将来の姿を描き始めたのは3年生くらいの時で、周りの文系の子たちが就職活動をしている姿を見て、こんなに世の中のことを知らないまま自分のキャリアを決めていいのだろうかと思うようになり、視野を広げるため、大学外の活動に参加するようになりました。

 5年生になり、実習先の病院で、指導薬剤師の先生がしっかりと知識を持ち、自信と責任を持って医師や看護師に引けを取らずチーム医療に携わっている姿を見て、薬剤師がもっと社会的に評価される世界を作りたいと思いました。そのためには何をしたらいいかということを考え、まずは臨床現場を知ろうと、新卒は病院薬剤師として就職を考えました。

 ――就職活動で最初に取り組んだことは何ですか。

 志望する病院は早期に決めていたのですが様々な病院の現場を知りたくて、5、6年生の時には病院見学や病院薬剤師に関連するイベントに参加していました。また、臨床に行くとは決めましたが、それが本当に正解なのかというのはずっと考え続けたくて、せっかく学生のうちなので時間も立場もしっかり活用しようと、医療系以外のインターンにも参加しました。

 それらの経験も踏まえて改めて病院薬剤師を志望し、就職活動を本格的に始めたのが6年生の7月です。周りに比べてかなり遅かったので、同級生の就職先が決まっている中、正直ハラハラしました。

 ――将来を考えた時、男女問わず、結婚や子育てなど、お仕事以外のライフプランも考える時があるかと思いますが、キャリアとの両立はどのようにしたのでしょうか。

 私はコンサル時代に結婚して、今の会社(カケハシ)に転職してから2人の子供を授かりました。カケハシで働くメンバーはお子さんのいる方も多く、子育てに理解のある環境なので、仕事との両立はしやすいと感じています。キャリアとライフプランの両立に対する考え方は人それぞれです。働きやすさや子どもと一緒にいる時間を優先したいと考えて、働く環境を変える人もいるし、一方で、やりたいことがこの会社にあるんだと思って頑張る人や、私が子育てしても働ける事例を作るという人もいます。自分のやりたいことをやるためにはどうすればいいか、考えて動いていけば、どんな環境でもやりようはあるのかなと思っています。

 新卒時の就職活動では、産休や育休制度の有無だけではなく「どれくらいの人が制度を利用しているか」「小さなお子さんがいる方がどれくらい働き続けているか」というところまで踏み込んで確認するようにしていました。新卒時では、単純に将来的キャリアとして聞いていると捉えられるので、聞きやすいと思います。将来的にその会社で産休や育休を取得する際に、どれくらい許容されて、どれくらいキャリアに影響するのかは気になりますよね。聞ける時に聞くのがいいと思います。

 ――就職に向けて、学生のうちにしておいた方が良いことは何でしょうか。

 本当に小さなことから始めるのでいいと思います。私も最初からいきなりビジネスコンテストや企業イベントに参加したのではなくて、大学内で他学部の人の話を聞けるような集まりや薬学生によく告知されているような製薬企業の方の講演会に参加しました。学生のみが集うイベントでも、価値観の違う人たちに出会うことも多く、そういう見方をしている人がいるんだという発見があったりします。知らない世界にいきなり飛び込むのはとても勇気が要りますから、まずは身近なところから参加してみるのがいいと思います。

 学生のうちは、社会人のように立場や職種などに囚われずに社会を知ることができますので、怖がらずにやってみると意外と受け入れてもらえて、色々なことを教えてくれると思います。


 〈略歴〉2014年に東京大学薬学部を卒業し、都内の急性期病院に就職。臨床現場を経験し薬剤師のリアルを学ぶ。その後、17年に医療系コンサルファームのメディヴァに転職し、行政や企業目線で医療業界を見つめ、社会全体から薬剤師の姿を捉える。現在は、カケハシにて薬局業界の課題解決に取り組む。



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