【各業界の動向と展望をチェック!】医師負担減で業務拡大へ~病院薬剤師~

2022年3月1日 (火)

薬学生新聞

 病院薬剤師の業務範囲は年々広がってきた。各病棟でチーム医療の一員として活躍するほか、手術室や救急救命室など各部門での業務も担当するようになった。化学療法を受けるがん患者の管理など外来診療での業務も拡大している。近年は、医師が手がけてきた業務の一部を担当し、医師の業務負担を軽減する役割にも注目が集まっている。地方の中小病院を中心に薬剤師不足が続く中、病院薬剤師全体の職能発展の道筋をどう描くかが今後の課題だ。

 病院薬剤師の業務は、1990年代に本格化した医薬分業の進展で劇的に変化した。院外処方箋の発行に伴って外来患者の調剤業務が手から離れ、浮いた薬剤師のマンパワーを病棟での業務に費やせるようになった。

 当初は患者への服薬指導が中心だったが、医師や看護師と顔の見える関係を構築できるようになると、各病棟単位でチーム医療の一員として活躍する機会が増えた。病棟にとどまらず、手術室や集中治療室、救急救命室などにも進出し業務を担うようになった。業務の質も変化し、医師への処方提案などを通じて、最適な薬物療法の設計に関わる機会が増えている。

 今春の診療報酬改定では、手術室の薬剤師が病棟の薬剤師と連携して実施する薬学的管理の評価として「周術期薬剤管理加算」が新設される。手術後の管理についても、所定の研修を修了した専任の常勤薬剤師を含む術後疼痛管理チームによる疼痛管理への評価が新たに設けられる。

 これらの領域では以前から薬剤師が力を発揮してきた。診療報酬は無くても実績や成果を出し続ければ、評価につながることが示された。

 入院期間中の薬物療法管理だけが病院薬剤師の仕事ではない。国は、地域の各施設や各職種が連携し円滑な医療や介護を提供する「地域包括ケアシステム」の構築を進めている。病院薬剤師は入院中の薬物療法の意図や変遷、注意点をお薬手帳や文書に記載し、地域の病院や診療所、薬局、高齢者施設にうまくバトンタッチするなど、地域全体の薬物療法の連携に責任を持つ必要がある。

 病院薬剤師の職能拡大に向けて追い風も吹いている。2024年4月から、一般の業種では既に導入されている時間外労働の上限規制が医師にも適用される。勤務医の時間外労働時間が原則年間960時間以内となるよう、各医療機関での取り組みが求められる。

 国は、多忙な医師の業務負担を軽くするため、医師でなくても行える業務は他の職種に移管する“タスクシフティング”や、共同で業務に取り組む“タスクシェア”を進めている。

 看護師を筆頭に各職種がその受け皿になり得るが、追い風にうまく乗れば病院薬剤師は今後、様々な役割を担えるかもしれない。実際に、先進的な病院では、医師と薬剤師らが事前に作成したプロトコールに基づき協働で薬物治療を実施するPBPMという仕組みを使った取り組みが始まっている。

 日本病院薬剤師会は、国の委託事業としてタスクシフティングの実践例を収集しウェブサイトで公開している。病院薬剤師の今後の業務展開を表す具体例として、一度目を通してみてはどうだろう。

 一方、業務範囲や役割は広がっているものの、依然として、地方にある病院や中小病院の多くは薬剤師不足にあえいでいる。これらの病院では業務を広げるだけの十分なマンパワーを確保できないという課題もある。

 中小病院や地方の病院では、医師との距離は近く、関わり方次第で医療に深く入り込める。この魅力を理解し、長いキャリアプランの中でこれらの病院で働くことも検討してもらいたい。



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