【ヒト・シゴト・ライフスタイル】仕事はチャレンジにあふれている‐現場の声聞き、変革をサポート グラクソ・スミスクライン コンプライアンスマネージャー 竹川仁視さん

2022年6月15日 (水)

薬学生新聞

「チャレンジの機会があれば、それには『イエス!』と答えたい」と話す竹川さん

「チャレンジの機会があれば、それには『イエス!』と答えたい」と話す竹川さん

 竹川仁視さん(35歳)は、2009年3月に東京薬科大学を卒業(薬剤師)し、同年4月に入社したグラクソ・スミスクライン(GSK)で現在、コンプライアンスマネージャーとして働く。MRとして約7年、社内広報担当に16年に異動し、21年から現職。この間、常に社内外の目と変化の波にさらされ、自身もチャレンジの連続だった。しかし、そのチャレンジと共に経験値を積み上げ、仕事の幅を広げ、今なお途上にある。薬学生には「就職先の選択肢が狭いと感じているかもしれないが、それはもったいないこと。初めから選択肢を絞り込まず、したいことには制限を設けずチャレンジしてほしい」とエールを送る。

 コンプライアンス担当と聞くと、縁遠く感じるかもしれない。しかし、変化が大きい今の事業環境の中で、その仕事には社会に出たときに必要なノウハウとスキルが詰まっている。そのノウハウとスキルを伝えたく、竹川さんのコンプライアンス担当の仕事と今日に至る経験を紹介する。

 何事もチャレンジをする際、変革が伴い、それには壁が立ちはだかる。その壁を力づくで壊すような剛腕マネジメントだけでは、変革を進める側と受ける側を分断し、相互の信頼を壊しかねない。むしろ、共に乗り越えるための相互理解を醸成しながら新たな道を切り開いていく姿勢が必要ではないか。そう考え、取り組んできた一人が竹川さんだ。

 まずは、コンプライアンスとはどんな仕事なのか。コンプライアンスには、新しい取り組みに対し、あれはダメ、これもダメと止めに入ったりする「警察官」のようなイメージを持つかもしれないが、冒頭に触れたように、それは違う。

 竹川さんはこう語る。「今はビジネス環境の大きな変わり目にあります。過去の仕事の仕方が合わなくなり、何か新しい取り組みに変えつづけていかなければならない時期です。新たなアクションをする場合、リスクを明確にしながら、目的に向かってどう取り組むのがよいのか、ビジネスの意思決定をサポートする、そして取り組みが加速するようサポートするのが役割です」

 例えば、最近では、MRと医薬品卸との働き方の見直しという案件があった。見直し策は昨年実施したが、実施までの間、営業現場を巻き込んだ議論は、卸とMRとの連携関係に大きな変化を迫る可能性があり、現場からは不安の声が届いた。

 竹川さんが直接携わった案件ではないが、現場の不安感や困りごとに対し、信頼を醸成しながら、新たな取り組みを進めることについて経験はあった。そこから得た教訓めいたものが、竹川さんの活動を支えている。

MR時代の苦い経験を糧に‐相手の思い、ニーズくみ取る

 それは新人MR時代に遡る。担当医から「お前は何も分かっていない。来ないでほしい」と通告されたことがあった。通告後、竹川さんは、当時の上司から「担当医はどんな患者さんを受け持ち、どんな情報を必要としているのか」と聞かれたが、何も答えられなかった。「当時、コミュニケーション力には自信を持っていました。この仕事を選んだのも、それが理由です。しかし当時、周辺医療機関への影響の大きい病院担当としてプレッシャーを感じ、製品の採用や処方を増やしてもらうためにはキーメッセージを伝えなければと、余裕がなかったのです。先生の受け持つ患者さんのことや困りごとはフォーカスしていませんでした。つまり自分勝手なことをしていたのです。そこから学んだのが、相手が何を思い、どんなニーズを抱えているのかを知り、その上でコミュニケーションをする、ということでした」

 一連の経験が、異動後の活動に生きたという。16年に異動したコミュニケーション担当には社内公募に自ら手を挙げた。「自分の強みを生かせ、さらに伸ばせる」と考えたからだ。

社員の声聞く社長に感銘‐「挑戦」と「謙虚」がモットー

 最も大きな仕事は、18年2月に新社長にポール・リレット氏が就任した時、社内広報で担当していた「チェンジマネジメント」。新社長を迎え、社員には日本のカルチャーを理解してもらえるのか、一方的にグローバル戦略を下してくるのではないかと不安が生じていたという。

世界のGSKから集まった社員40人が参加して、途上国の子供たちを支援するチャリティ活動「Trek for Kids」に参加し、アフリカのエチオピア最高峰ラス・ダシャン山(4550m)に登頂(後列右から2人目)。その国の子供たちに窮状を知ってほしいと寄付を募る活動。患者さんのため、そして世界の困っている人たちのために、私たちは働いているという目的意識がより明確になった経験だという

世界のGSKから集まった社員40人が参加して、途上国の子供たちを支援するチャリティ活動「Trek for Kids」に参加し、アフリカのエチオピア最高峰ラス・ダシャン山(4550m)に登頂(後列右から2人目)。その国の子供たちに窮状を知ってほしいと寄付を募る活動。患者さんのため、そして世界の困っている人たちのために、私たちは働いているという目的意識がより明確になった経験だという

 リレット社長がまず行ったことは、社員の声を聞くこと。困っていることは何か、いまGSKは何をすべきか、自身が社長だったら何をするのかなど、1回約10人、1時間、それを約40回、計約400人の社員から聞き取りをしていったという。目の当たりにした竹川さんは「リーダーは、方針はこうだ!と一方的に下すのではなく、現場の声に耳を傾け、対応していくことが重要だと理解しました」と話す。

 そこから生まれたのが毎月の全社集会。2000人以上の社員が参加する。1時間のうち社長が話すのは15分程度、あとは社員が意見を述べる構成。とはいえ、当初は意見がなかなか出ない。その沈黙に、社長は口を挟まなかった。ようやく半年くらい過ぎたころから意見が出始め、次第に一斉に10人、20人と手が挙がるようになったという。竹川さんは「社員の声が上がるまで待ち、上がった意見は聞くという姿勢を示し続けたことで信頼が生まれていったと思います」と振り返る。

 さらに月2回、社長と社員がコーヒーを片手に1時間程度、気軽に話し合う「コーヒー・ウィズ・ポール」という場も設けた。社員の悩みを聞いては、すぐアクションする姿勢に社員が理解を示し、今や年200~300人が参加するという。それまでの間、出席者が所属チームと会の内容をシェアすることを促すなどし、参加機運を高めていった。

 一連の取り組みを竹川さんがリードしてチームでサポートした。

モットーは「とにかく挑戦してみる」「謙虚な気持ちを持つ」

モットーは「とにかく挑戦してみる」「謙虚な気持ちを持つ」

 竹川さんのモットーは「とにかく挑戦してみる」「謙虚な気持ちを持つ」。挑戦と謙虚という一見、相反する姿勢も一連の話を聞くと頷ける。

 現場が培ってきたカルチャーを尊重しつつ、現場の声に耳を傾け、判断し、新たなチャレンジをスタートさせる。「傾聴し、自身の弱みや誤りも率直に話し、自ら正す姿勢も含めて共有していくことが、これからのリーダーに求められることではないか。経験からそう考えています。それはGSKのカルチャーになっていると思います」と、竹川さんは力を込める。

 そして自身の今後について、こう話した。「シンプルに、色々なことにチャレンジしたい。チャンスが与えられれば、それには『イエス!』と答えたい」


 【休日の過ごし方】毎週土曜日に長男(5歳)の水泳教室に行き、一緒に泳ぐ。長男が0歳の時から一緒に通う。「初めは水に入るのも泣いて嫌がっていたのが、数カ月たつと泣くこともなくなり、1年もたつと自分から水に飛び込むようになりました。人の成長を間近に見られる貴重な体験。一方で、果たして自分は成長しているのかと、内省の機会にもなっています(笑)」(竹川さん)



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