日本薬学生連盟広報部は、薬学部を卒業して社会で活躍する2人の先輩に、進路選択に関するお話を伺いました。杉林澪(慶應義塾大学薬学部4年生)、塚本有咲(大阪医科薬科大学薬学部2年生)が聞き手となり、自身の体験を語っていただきました。
国立成育医療研究センター薬剤部勤務
加藤 美和さん(慶應義塾大学薬学部2022年3月卒業)
出会いや悩むことを大切に
――就職活動を意識し始めた時期と、その際にどんなことをしたのかを教えてください。
本格的に就職活動を意識したのは5年生の秋で、はじめは病院見学に行きました。病院実習を経て、病院薬剤師になりたいと思ったことがきっかけです。また、低学年の頃から日本薬学生連盟での活動や小児薬物療法研究会のメーリングリスト、学会などに参加し、情報収集は行っていました。
――小児医療に興味を持ったきっかけは何でしょうか。
幼い頃によく病院に行っていたことから、もともと小児医療に興味を持っていました。当時は病院薬剤師としてではなく、研究の面から小児医療に携わりたいと考えていました。
学生時代のボランティア活動などで病気の子どもや小児医療に携わる先生と出会い、小児医療への興味が強くなりました。その中で、子どもは大人に守られた存在である一方で、周りの大人や社会に声を届けることが難しいこともあると気づきました。1人ひとりと向き合い、子どもの声を代弁できる存在になりたいと考えるうちに、小児医療の病院薬剤師を志すようになりました。
――就職活動でやっておいてよかったことはありますか。
いろいろな業界を見たことです。小児医療に携わりたいと考えていたものの、高齢者の病院や急性期病院、国立病院、民間病院など様々なタイプの病院を見学しました。今働いている小児病院は特殊な部分が多いのですが、それを認識できたことが良かったです。
病院だけでなく、製薬企業やCRO、薬局なども見て、視野を広げることができました。
――逆に、やっておけば良かったと思うことは。
病院見学の際に比較の軸となる質問を用意しておけば良かったです。それぞれの見学先の病院で異なる質問をしてしまい、うまく病院の比較ができないことがありました。病院内での薬剤師の役割や病棟業務の内容、キャリアパスなど、自分なりの比較ポイントを持って質問してみると良いと思います。
――学生時代にやっておいた方が良いことは何でしょうか。
多くの人に出会い、情報収集することです。各々がどんな想いで働いているのかを知ることで、業種が違えば考え方も異なることを実感できると思います。
そして、自己分析をきちんとしてほしいです。自分の価値観や考え方、やりたいことを見つけ、自分に足りている部分と不足している部分を知り、やりたいことが自分に向いているのかを知ることが重要です。やりたいことが適性とずれてしまうとつらいこともあるので、向き不向きを見極めてみてください。
――日本薬学生連盟での活動が現在の仕事に役立っていることはありますか。
人脈が広がったことです。薬剤師のみならず、企業など幅広い業種に進んだ同期や歳の近い人とつながっているので、他業種の人と気軽に話すことができます。企業で働く人から薬の開発の話を聞くと面白いなと感じます。
――薬学生へ就職活動のアドバイスやメッセージをお願いします。
出会いを大切にしてほしいです。様々な業種の人との出会いを通じて自分が将来やりたいことを考えてみてください。
また、たくさん悩んでほしいです。就職活動をしていると、考えることが嫌になるときもあると思いますが、自分が一生懸命悩んで決めた道であれば、仕事の困難も乗り越えられます。人との出会いや悩むことを大切にして頑張ってください。
科研製薬勤務
海野 彩夏さん(明治薬科大学2021年3月卒業)
多くの人と積極的に交流
――就職活動を意識し始めた時期にどのようなことを行いましたか。
意識したのは4年生の冬です。日本薬学生連盟での活動を通じて仲良くなった先輩方に就職活動の終わった頃にお会いして、就活の経験談や企業の特色などの話を聞きました。
――学生時代に思い描いていたキャリアプランはどのようなものですか。
製薬企業等から医薬品の開発業務を受託するCROに入社し、治験の適正な実施をモニタリングするCRAとして働くことを目指していました。機会があれば製薬企業に転職し、治験の立案にも携われたらいいなと考えていました。
――現在の勤務先にはどのような経緯で入社されたのでしょうか。
CROの内定を得た後、まだ時間に余裕があったので製薬企業にも目を向けました。選考を受ける中で、若手のうちから様々な開発業務にチャレンジできる環境だと聞き、治験の立案にも早期から携わりたいと思い入社しました。
――この業界の企業は、女性が結婚などのプライベートと両立しながら働くことに対して賛同的なのでしょうか。
すごく賛同的です。就職活動を通じて、女性が活躍しやすい場を作る、残業を減らすといった近年の風潮を積極的に取り入れていく姿勢を業界からすごく感じていました。例えば女性も男性も育休や産休をとても取りやすくなっています。CRAは外勤が多い職種ですが、子育てなどで外勤が難しい場合は内勤職へ異動できるなど、仕事を継続しやすい環境が業界全体で作られていると感じています。
――就職活動でやって良かったことや、もっとやっておけば良かったことはありますか。
文章作成や対話が苦手で就活がとても不安だったため、就職支援を行う外部機関や学校のキャリア支援課、先輩にも頼ってエントリーシートの作成や面接の練習を行いました。その過程で多くの人と会い、就職活動に役立つ様々な情報を収集できたのは良かったと思います。
一方、業界を狭めずに見学や合同説明会にもっと参加しておけばよかったと思います。製薬業界にいざ入ってみると、薬学部出身者だけでなく様々な経歴を持つ人がいて、その多様さに驚きました。最初から製薬業界だけを見ていたことが少しもったいなかったです。
――日本薬学生連盟に入って良かったと思うことを教えてください。
1年生の秋頃から入りましたが、高学年の先輩と話す機会があり、低学年のうちから自身の進路について考え始めたことがよかったと思います。この団体には様々な進路を選んだ先輩がいて、興味のある職種に就いた先輩に相談できる環境がありました。団体での国内外の薬学生との交流を通じて人見知りを克服できましたし、他の就活生と被らないエピソードもたくさん作れました。
――最後にメッセージをお願いします。
広い視野で、自分が本当にやりたいことは何なのかをもう一度考えてほしいと思います。今いる友達も大事にしてほしいです。就職後も業界の情報を交換したり、転職といった人生の岐路で助け合ったりすることもあるかもしれません。自身の大学以外にもコミュニティを広く持つと、少し違った情報が得られて刺激になるので、外部の人とも交流する機会を積極的に持ちましょう。