【各業界の動向と展望をチェック!】患者貢献や給与水準が魅力~製薬産業~

2023年11月15日 (水)

薬学生新聞

 国内医療用医薬品市場の2022~27年までの年平均成長率は1%前後と低調予測だが、バイオ医薬品の伸長や景気に左右されない安定性は業界外からも一目置かれる。製薬企業の就職先としての魅力は、自社開発・製造した医薬品を通じて多くの患者に貢献できること、そして給与水準の高さにある。就職で臨床を選ばなかった薬学出身製薬企業関係者の認識は、この2点でほぼ一致する。

 MR認定センターの調査によると、医師が最も頼りにする情報源のトップは今なおMR。世間が言うほど期待は低くはない。医師、薬剤師からも、治療に日々悩む臨床において共に課題を解決するパートナーとして期待が寄せられている。

 京都第二赤十字病院薬剤部治験管理課の野口裕介課長は、同センターが8月に開催した講演会で、常に患者と接し、様々な不安や悩みに直面する自身の立場を説明した上で、MRに向け「同じ医療従事者として、患者さんのために本音のやりとりができればいいと思う」とメッセージを送った。

 薬剤師は、効果や副作用など個々の患者の悩みに触れ、MRに相談する。MRは解決につながるような情報を提供することで応える。そうして医療従事者から感謝された経験は、何よりの喜びと言うMRは多い。

 そのような活動ができて、給与水準も高いというのは魅力だろう。有価証券報告書によると、製薬企業(持ち株会社除く)の平均年収トップは、22年に6年連続で過去最高業績を記録した中外製薬で1214万円(平均42.4歳)。ほか1000万円超では第一三共、武田薬品、アステラス製薬、エーザイと続く。給与水準はヒット新薬を持続的に開発・上市できるか否かに左右される。その将来性は、各企業のIRページの新薬開発パイプライン情報が重要なヒントになる。

 ヒット新薬を持つ製薬企業に就職できるとは限らないが、製薬企業の平均年収は高い。転職サイトdodaの調査(22年8月までの1年、dodaサービス登録者約56万人データ)によると全業種平均403万円に対し、617万円。医療機器や診断薬、臨床検査機器、試薬の各メーカー、CRO、SMO、CSOも全平均を上回る。MRの平均年収は700万円と職種別では第4位。諸手当も含めると1000万円超も珍しくない。

 とは言え、今年に入り大手・準大手企業の早期退職募集が相次ぎ、不安を持つかもしれない。しかし若年層は心配ない。これは業績不振によるものというより、DX化など新たな働き方、事業構築に意欲的に取り組める人材の入れ替えという側面が強いからだ。

 実際、製薬企業は、デジタル治療など新規ソリューション開発にも触手を伸ばしている。IT企業などとの異業種協業は盛んだ。日進月歩のITを臨床課題の解決につなげていく発想と挑戦する姿勢が求められる。

 薬学部から医薬品関連企業への就職率は約5%とかつての半分程度になっている。しかし、医薬品関連企業では、薬学知識や、実習で垣間見た臨床経験が生きる場面は想像以上に多い。



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