【日薬臨時総会】岩月氏を会長候補に選出‐決選投票で安部氏破る
日本薬剤師会は3月10日の臨時総会で会長候補者選挙を行い、東海ブロックから推薦を受けた岩月進氏(愛知)を選出した。決選投票で有効投票144票中79票を得て、東京・関東ブロック推薦の安部好弘氏(東京)の65票を上回った。第1回の投票で全候補共に全体の過半数に届かず、首位の岩月氏と2位の安部氏の決選投票となった。6月に行われる通常総会で信任が得られれば正式承認される見通し。
東海ブロックからの会長候補者選出は第23代会長を務めた中西敏夫氏以来、2人目。初の三つ巴による会長選で関心を集め、全ての傍聴人席が埋まったこの日の臨時総会の午後に行われた第1回投票では、有効投票149票のうち岩月氏が67票、安部氏が52票、九州・山口ブロックから推薦された田尻泰典氏(福岡)が30票と会長選の行方は決選投票に持ち込まれた。決選投票では岩月氏が第1回投票から12票を上積みし、安部氏との接戦を制した。
候補者の中で唯一、副会長経験のなかった岩月氏だが、愛知県薬剤師会会長を4期務めた経験をアピール。5期10年続いた山本信夫政権からの変革を訴え、代議員からの支持を得た。
岩月氏は、「投票いただいた代議員に感謝する。私ではダメだという票もあった。そうした声に真摯に耳を傾け、これからの会運営に努めていくことを改めて誓いたい」と喜びの声を語った。
総会後の記者会見で岩月氏は、「思いがあって立候補したので、その思いを理解した人たちの期待に応えてこれから2年間、日薬を変えていくことに取り組んでいきたい」と所信を表明した。
勝因についても「変えたいということに理解をいただけた。現状からの体制をそのまま踏襲することでは、私が出た意味がない」と分析。得票数については「最初の得票数が当初、60票、60票、30票ではないかと予想していたが、思ったより差がついたのではないか。それでも一定程度の批判があるということを踏まえ、会長職を務めなければならないと改めて感じた」と話した。
組織の変革を訴える中で、「変化への対応力」を日薬の課題に挙げた。医薬品の供給不足を例に、「供給不足はほとんどの人が薬価を下げすぎというのが原因の一つだと分かっている。日薬の総会で表立って議論できないのは問題だと思う」との認識を示した。
その上で、「自分たちが調剤に困っているという話が中心であり、それは総会で議論することではないと思う。患者さんたちが困らない医薬品供給はどうあるべきか、薬価改定はどうあるべきかという視点で議論できるようにしないと成熟しているとは感じない」と議論のあり方から見直す方針を示した。
(2024年3月13日掲載)
【姫路獨協大】薬学部の入学者募集停止‐全国初、撤回訴え届かず
姫路獨協大学は、2025年度から薬学部の入学者募集を停止する。薬学部は、今春の入学生を含む全学生の卒業後に廃部となる見通しだ。全国の薬学部で募集停止は初めて。学長が廃部方針を打ち出し、3月28日の理事会で正式に承認された。増田智先薬学部長は「近年は学生の支援を強化し、薬剤師国家試験合格率は高くなりつつあった。地元高校との関係再構築にも力を入れ、入学者数回復の兆しは見えていた。あと数年は様子を見てほしかった」と悔しさをにじませる。
薬学部の入学者数は18年度以降、低迷を続けていた。定員100人に対して20~40人台の入学者が続き、23年度の入学者数が5人になった結果、薬学部全体の定員充足率は50%を割り込む状況になった。文部科学省は、収容定員充足率が50%を下回る学部が一つでもある場合、新たな学部の設置を認めない方針を示している。定員充足率の低下は大学の補助金確保にも影響が及ぶ。こうした背景から薬学部の募集停止が決まった模様だ。
医療系3学部と人間社会学群を持つ同大は、大学全体でも入学者確保に苦しんできた。状況を打開しようと姫路市に公立化を要望したが、市は22年に受諾しない方針を示した。併行して、自治医科大学と関係が深く各地の病院経営等を手がける地域医療振興協会に大学の事業譲渡を持ちかけ前向きに検討が進んだが、23年6月に事業譲渡は不成立となった。以降、薬学部の入学者募集停止の方針が前面に出てきたという。
増田氏は学長に対して、入学者数回復の兆しがあることや、薬学部の募集停止は今後の大学運営にも影響が及ぶことを伝え、最後まで方針撤回を訴え続けたが、受け入れられなかった。
将来、薬学部がなくなることは近隣地域にも大きな影響が及ぶ。姫路薬剤師会の泉憲政副会長は「地域に薬学部があるメリットは大きい。大学があるおかげで地域の薬剤師の意識は活性化されていた。すごく残念でショックだ」と言及している。
(2024年4月05日掲載)
【厚労省】研修期間は「1年間以上」‐薬剤師卒後研修に指針
厚生労働省は3月26日、薬剤師の臨床研修で実施すべき研修内容や方法を示した「薬剤師臨床研修ガイドライン」をまとめ公表した。臨床現場で勤務する全ての薬剤師が対象で、研修期間は原則1年間以上とし、そのうち必修研修項目として調剤業務3カ月間、病棟業務6カ月間、在宅訪問を1カ月間含めるよう促す。医療機関や薬局の臨床研修の標準化に役立て、卒前から卒後までシームレスな教育体制を構築して薬剤師の資質向上を図る。
厚労省の研究班が2021~23年度に実施した事業で、臨床現場で勤務する薬剤師が身に付けるべき知識・技能・態度を習得するために必要となる標準的な研修プログラムを検討し、指針化したもの。
研修期間は、患者が経験する一連の過程である急性期・慢性期医療に関する薬剤師の役割を学ぶため、必要な研修項目の習得には1年間の研修が必要と判断。調剤業務は3カ月間程度とし、病棟業務は6カ月間程度の期間を必修とした。
研修施設は、薬局を含む複数施設が連携して研修を行うことが可能で、必ず在宅訪問研修を含める。
臨床研修は調剤業務から開始し、病棟業務は4カ月目以降に開始する。地域連携については病棟業務の期間を中心に年間を通じて実施。在宅訪問は、研修期間を1カ月間程度とし、研修後期(10~12カ月目)に実施することが望ましいとした。各研修病院の特徴を生かし、病院の体制に応じて研修者の習得度に合わせたプログラムを構築して良いが、病棟業務研修は6カ月間程度行うこととした。
病棟業務では、一般的な内科・外科領域をローテーションして病棟当たり1~2カ月間を目安として、6カ月間程度の研修を行う。研修期間中50人程度の患者を担当し、そのうち積極的に薬学的介入した症例のうち10症例程度を研修成果として症例報告会等で報告させることとした。
(2024年3月29日掲載)