ニュースダイジェスト 「薬事日報」の紙面から

2024年6月15日 (土)

薬学生新聞

【千葉科学大学公立大学法人化検討会】薬学部に厳しい声相次ぐ‐公立化でも学部再編必要

 志願者・入学者数の減少で運営が厳しくなっている千葉科学大学の公立化可否を判断する「千葉科学大学公立大学法人化検討会」が5月12日に銚子市内で開かれ、委員からは公立化した場合にも収益が見込めない学部の撤廃など学部再編の必要性を指摘する声が相次いだ。特に2016年から入学定員割れが続き、事業活動収支で赤字となっている薬学部の現況には「公立化すれば全国から志願者が集まるため、学生の確保が期待できる」との大学側の説明に対し、「定員充足率が低い状況で公立化して収支が上向くとは考えづらい」などの批判が続出した。

 千葉科学大は薬学部、看護学部、危機管理学部の3学部を保有している。学生確保に苦戦し、赤字経営に陥る中、昨年10月に銚子市に公立大学法人化の要望書を提出した。

 市は学識経験者や経済界代表などをメンバーとした検討会を4月から開催し、8月に公立化の可否など答申書をまとめ、その後に市が最終判断を下す。

 薬学部は16年度以降、入学者数が入学定員に達していない定員割れが続いており、23年度の入学定員充足率は36%、24年度は48%と低い状況にある。また、薬学部の22年度事業活動収支計算書は約2億3636万円の赤字となっており、今後改善する兆しも見えない。

 大学側は、人口減や大学薬学部の新設ラッシュに加え、国際医療福祉大学が成田市、順天堂大学が浦安市に薬学部を新設したことにより、千葉県内で約300人の入学定員増となるなど学生の獲得競争が激化し、「かなり厳しい状況」と説明した。

 その上で、薬学部の学生を確保するためには「公立化が必要」と訴えた。薬学部のある国公立大学19校のうち、東日本地域では国立の4校に限られることから、「公立大学が発足すれば薬学部の志願者増が大いに期待できるのではないか。知名度が上がり、全国から志願者が集まり、難易度も上がる」と重ねて公立化を要望した。

 公立化した場合には、在学6年間の費用が現状の1881万円から1084万円に「学生の経済的な負担が軽減される」との試算を示し、競合する大学薬学部との差別化になるとも説明した。

 これに対して、委員からは厳しい意見が相次いだ。田村秀委員(長野県立大学グローバルマネジメント学部教授)は、「志願者が集まらないのは教育の質ではないか。国家試験の合格率が低いと学生は避けていく。薬学部も14年から全国平均を下回り、今では30%しか合格していない。大学側は努力しているのか」と大学の努力不足を強く批判した。

 さらに、「公立化すれば皆がハッピーというのは信じられない。教育の質が低ければ、公立化しても難しいのではないか」との考えを強調し、教育の質に問題意識を示した。

 小栗一徳委員(公認会計士・税理士小栗事務所所長)は、「看護学部しか収支が合っていない。5年以上利益を出していない学部は閉鎖して、利益が出るところに特化しなければ改善しない」と厳しく指摘。大胆な学部再編が不可避とした。

(2024年5月15日掲載)

【規制改革会議】施行後2年以内に見直しを‐薬遠隔販売の地理的要件

 政府の規制改革推進会議は5月31日、規制改革推進に関する答申を取りまとめ、岸田文雄首相に提出した。薬剤師等によるデジタル技術を用いた医薬品の遠隔販売について、まずは同一都道府県内で実施しつつ、施行から2年以内に撤廃も含めて地理的制限の見直しを行うことなどを盛り込んだ。

 健康・医療・介護分野では、「デジタル技術を活用した新たな医薬品販売業の実現」を明記した。薬剤師と登録販売者(有資格者)が常駐しない店舗(受渡店舗)において、別店舗(管理店舗)の有資格者によるデジタル技術を用いた遠隔販売を行う場合、早期導入を図るため、まずは同一都道府県内で実施する。

 より広範囲での実施に向け、実施状況を踏まえ、撤廃を含めた地理的制限の見直しを行うことについて年内に検討を開始し、遠隔販売の制度施行後2年以内に結論を得ることとした。管理店舗の有資格者1人が管理可能な受渡店舗数の上限数の設定については、2025年度中に結論を出す。

 スイッチOTC化の加速も盛り込んだ。年内に実施する施策として、厚生労働省に対してOTC化の承認申請から承認の可否判断までの総期間を1年以内に設定するよう求めた。

 また、OTC化に向けた課題がある場合、課題解決を行うステークホルダーを明確にしつつ、必要に応じて薬事審議会や厚労省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」で意見聴取を行い、課題解決を検討する。

 OTC関連では、25年上期までに評価検討会議の構成員の構成を検討するほか、欧米のスイッチOTC化の承認審査制度と運用状況等の調査を行った上で、対応策を検討する。

 医薬品等の臨床研究・治験に関しては、倫理審査委員会における審査の質のバラツキなど問題点を指摘。そのため、一括審査の水準を欧米と同程度の水準とする方向で、一括審査の実施状況に関する日本の数値目標を25年までに設定する。

 目標達成のため、競争的研究費の提供を受ける研究・治験について、多機関共同研究を実施する場合は一括審査を必須要件に位置づけることとした。

 動物実験の代替となり得るMPS(生体模倣システム)等について、同技術に関する要件の明確化に役立つガイドラインの作成・公表など具体的方策について検討を行い、25年度に結論を得ることとした。

(2024年6月5日掲載)

【日薬】約8割が薬局で服用希望‐緊急避妊薬販売に満足感

 日本薬剤師会は5月10日、緊急避妊薬のOTC化に向けた環境整備のための調査事業報告書をまとめた。購入者への事後アンケートでは、緊急避妊薬の服用が必要になった場合に約8割が「医師の診察を受けずに薬局で薬剤師の面談を受けてから服用したい」と回答。購入・服用した人の多くが満足している状況が分かった。

 同事業は国からの委託を受け、日薬が昨年11月末から全国145の薬局で試験販売を実施したもの。昨年11月28日から今年1月31日の販売実数は2181となった。

 来局時間は概ね9時から19時に集中しており、夜間・早朝(21時から8時まで)の来局は全体の2%程度にとどまった。

 対象期間購入者の満足度調査では、面談した薬剤師の対応が「とても満足」が91.8%、「概ね満足」が6.9%と計98.7%と高かった。「説明の分かりやすさ」「プライバシーへの配慮」の満足度も「とても満足」がそれぞれ89.5%、84.8%と高い割合を占めた。

 購入者のほぼ全員が薬剤師の説明を「よく理解できた」と答えた。購入後3~5週間後に行った購入者への事後アンケートでは「今後、緊急避妊薬の服用が必要になったらどうしたいか」との設問に対し、82.2%が「医師の診察を受けずに、薬局で薬剤師の面談を受けてから服用したい」と回答した。

 一方、販売可否判断に用いるチェックリストで「販売可否判断を容易にできたか」を聞いたところ、「そう思う」が35.2%、「ややそう思う」が54.5%と約9割が容易に可否判断ができたと回答した。

 ただ、チェックリストで判断に迷う項目、回答しにくい項目、改善すべき項目の有無では「あった」が48.3%と約半数となり、チェックリストに改善が求められていることがうかがえた。

 特に「妊娠の可能性」を判断する項目については、145薬局中63薬局が改善すべきと回答。薬剤師による可否判断が的確に実施できるよう事前質問票とチェックリストを改善すると共に、チェックリストを補足する資材等作成の必要性が指摘された。

(2024年5月13日掲載)



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